鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル相場予測

‘質への逃避’円買い局面(120~122円)で確実にドルの押し目

 6月5日、5月米雇用統計の予想を上回る数値発表によりドル円は125円の心理的な抵抗ラインを上抜け、125.86円と2002年来の高値を示現。その後、黒田日銀総裁による円安牽制発言により、円相場は短時間で暴落。総裁発言以降のドル円相場は黒田レンジといわれる122.50-124.50で方向感なく終始し、注目の米FOMCをむかえました。

 FOMCでは2015年末のFF金利見通し(ドルの政策金利)は0.625%と今年3月末と変わらず、年内2回の利上げ(9月0.25%、12月0.25%の利上げ)を織り込んでいます。基本的なドル上昇の構図に変化はないものの、一方でFOMC委員による年内1回利上げを見込む人数が3月時点よりも増えたことからドル買いの勢いは薄れ、黒田レンジを抜けることなく、月末のギリシャ問題をむかえました。

当面ギリシャ懸念から想定されるユーロ売りドル買いが加速しても短期的には雇用統計後の高値125.86を抜けるとは考えにくいです。目先、ギリシャ懸念の相場展開が注目されるが、ドルはユーロに対して上昇しても、伝統的な非難通貨である円は対ドルで上昇しやすいでしょう。逆に欧州発のシステムリスクや市場情勢の不安定が露呈されれば、FRBは利上げの可能性に繋がる言及は一旦棚上げにし、必要に応じて流動性供給など基軸通貨、通貨の番人としての支援体制に入ることが予想されます。要は目先ドルの軟調地合も十分想定できる。当面のギリシャ問題が世界的なシステミックリスクに繋がらないことを確認するにつれ、ドル円は再び上昇トレンドを強めるでしょう。

 目先、ギリシャ懸念が起因して‘質への逃避’で円買いとなり、ドル円相場で120~122円の押し目があれば絶好のドルの拾い場(買い場)と考えます。黒田総裁発言によりグローバルなドル買いの持ち高は縮小しています。また、本邦公的長期資金(年金等)のドル買いは押し目では必ずドルを買い続けているようです。120円割れは想定できません。

ユーロ相場予測

ギリシャ懸念からユーロ下落基調再燃、戻り売り(1.12~1.15)スタンス

  ユーロはギリシャに関して合意に至ることができない展開が続き、連日ギリシャと債権者側の当局者によるヘッドラインでユーロの売り買いが交錯するレンジ相場に終始しました。ギリシャ問題軟着陸の思惑が漂う中、グローバルなユーロ売り持ち高も大きく縮小し、方向感がないまま月末になりました。6月27日ユーロ圏は6月末に期限を迎えるギリシャ支援の延長拒否を決定。ギリシャ側はユーロ圏が求める財政緊縮策の賛否を問う国民投票を7月5日に実施することが決定しました。その間1.14台のユーロ・ドルは交渉決裂により、1.10割れまでユーロが売られ急落しました。

目先の焦点は①6月末期限のIMFへの15億ドルの返済がなされるのかそれとも債務不履行となるのか?更に②7月5日の国民投票でギリシャ国民が緊縮策の受け入れに賛成するのか反対なのか?③仮に国民投票が否決された場合、ギリシャはユーロ離脱に繋がるのか?④ギリシャのユーロ離脱の思惑がその他ユーロ圏南欧諸国(イタリア、スペイン、ポルトガル)の債務危機に伝播し、更なるユーロの連鎖的な信用収縮に繋がるのか?が大きな注目点になります。いずれにせよ、ユーロ売り圧力が高まる相場展開に相違はなく、中長期的なパリティ(1ユーロ=1ドル)を目指す方向性に変化はありません。

 中国株式市場については、中国当局のなりふり構わぬ対策を受けて、既に株式市場として“機能しなくなっている市場”へ再投資する意味は既になくなっていると思います。今後も中国当局の株買い支えで、株価が戻ったところにグローバルな投資家から売りが持ち込まれるといった動きが繰り返されることが想定されます。当面、中国株式市場の上値は重たく戻りは限定的で、下値暴落リスクの方が圧倒的に大きいでしょう。その点で思わぬユーロ買いドル売りになって、ユーロの戻り高値をトライする局面があれば絶好のユーロ売りチャンスと想定します。中長期的なパリティ(1ユーロ=1ドル)を目指す方向性に変化はありません。

 グローバルなユーロ売り持高もピーク時(3月)の半分以下とポジションも軽く、ユーロのダウンサイドリスクは高いでしょう。逆に、ギリシャ救済に係る延長措置や合意等ヘッドラインが出てユーロが買われる局面、または米国経済指標の鈍化によるドル売りユーロ買い局面でユーロの戻りがあれば丁寧にユーロを売っておくのが得策と判断します。目際、1.12~1.14ゾーンは売り場、1.08~1.10ゾーンは短期の利食い(ユーロ買い戻し)場。中長期的には1.10アッパーはユーロを丁寧に売って、1.05割れ、1.00を目指す展開に備えるべきと思料します。ギリシャ債権の保有者がIMFやECBなど公的機関中心であり、プライベートセクターの保有額が極めて限定的であることから、ギリシャ懸念が世界的なシステミックリスクに繋がるリスクはかなり低いものの、南欧諸国の金利は上昇しており、債務危機リスクから更なる債権暴落になると、通貨ユーロとしての毀損問題となり、ユーロの突発的な急落リスクには十分注意したいです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャルデリバティブ事業グループ シニアヴァイスプレジデント
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円は122円~125円のレンジ相場を予想

 米ドル円は、年内の米利上げ観測をもとに6月5日には125.85円まで上昇しましたが、10日の黒田日銀総裁の円安牽制発言後は122.43円まで急落、その後は124円台まで値を戻す場面があったものの、29日にはギリシャのデフォルト懸念の高まりから一時122.10円まで下落しました。今後の米ドル円の見通しですが、122円から125円を中心としたレンジ相場になると見ています。日米の金融政策が正反対であることから中長期的な円安の流れは変わらないと考えていますが、目先は円安牽制発言のあった125円レベルが上値として意識されやすく、上値の重い展開になると思います。一方、6月の急落時に2回とも122円台で下げ止まっていることから、下値も底固いと見ています。しばらくはレンジ相場を意識した売買を手掛けていきたいところです。

 ユーロ・ドルに関しては、ギリシャのデフォルト懸念をめぐって、当面ボラティリティの高い相場が予想されます。仮にギリシャがデフォルトした場合、ユーロは一旦大きく売られることになるでしょう。ただし、ギリシャの経済規模は小さく、ギリシャがデフォルトしても世界経済に対する影響は限定的と想定されるため、下落後は材料出尽くしからすぐに反発するのではないでしょうか。ギリシャのデフォルトで下がった場面は、ユーロ買いの良い機会であると考えています。ただし、ギリシャ問題がスペインやイタリアへも波及した場合は相当のユーロ安が予想されるため、スペインやイタリアの国債の動きには注意が必要です。

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