鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

 
 

鶴 泰治 ゴールデンウェイ・ジャパン株式会社代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

110.50~112.50円をコアレンジとした膠着相場継続。ただ歴史的低位の為替変動率まで低下した反動から大きな相場変動が起こる可能性が高い。

 4月のドル円相場は、歴史的に低下した為替変動率のなか、日中通商協議の合意観測や米国の年内利下げ観測の後退を受けてドル円は110円台後半から112円台までドルが買われました。

月初110円台後半(110.66:月間安値)でスタートしたドル円相場は、米中通商協議が最終合意に近づいているとの報道を受けて、リスクオンから111円台半ばまでドルが買われました。その後3月のFOMC議事要旨で年内の利下げ観測が後退したことや予想より強めの米経済指標の発表を受けてドルは112円台まで買われ、24日には一時112.40(月間高値)と昨年12/20以来の高値まで反発しました。一方でイースター休暇や日本のGWを控え、1日のドル円変動幅が20~30銭と歴史的に低い為替変動率(ボラティリティ)のなか、111円台後半から112円台前半での動意の薄い取引展開に月の大半を終始しました。

 今後のドル円相場は、110.50~112.50円をコアレンジとしドルの上値は伸び悩むものの下値も底堅いボラティリティ(価格変動率)の低いレンジ膠着相場を引き続き予想します。2月以降の110.50~112.50円での膠着相場のエネルギーも大きく溜まっており、次に大きく動き出す前兆の月となりそうです。

1、(米国経済):FRBの金融政策予想中央値は年内据え置き、来年1回の利上げとなっているものの、市場(FF先物市場)は年内利下げを約0.5回、来年年末までの利下げ織り込み回数は約1.5回と緩和スタンスを予想しています。それに連動して米長期金利も軟調地合いの展開となっています。また、トランプ大統領が0.5%の利下げを要求していることもあり、現在FRBは「利上げ」できる状況にはなく、当面は、米経済指標、特にインフレ率の動向を見ながら、利下げの織り込み回数が低下すればドル買い(長期金利上昇)、上昇すればドル売り(長期金利低下)の構造だが、インフレ率鈍化継続が予想され、マーケットを動かす主要因とはならないと予想します。(中立要因)

2、(日米通商協議):通商協議で「自動車関税の導入」、「(通貨切り下げを自制する)為替条項」が示唆されるとリスクオフから“ドル売り円買い”となります。また、まもなく発表される予定の米財務省の「為替政策報告」で昨年日本が「監視対象国」に指定された文言が「為替操作国」に仮に指定変更となる場合と、円の実効レートが過去20年の平均値と比べて「25%割安(円安)である」、そして「日銀が2013年4月に導入した“量的・質的金融緩和政策”が円安要因となっている」と現状の「円安」非難への言及がされると更なるリスクオフから“ドル売り円買い”の動きに拍車がかかります。このように目先、米国の対日赤字削減策交渉はドル売り(円買い)要因として重くのしかかります。

3、(日本経済):政府は3月月例経済報告で、景気についての判断を3年ぶりに引き下げました。2012年以降、月例経済報告での下方修正の後、黒田日銀総裁はその都度、黒田バズーカ砲(量的・質的緩和の拡大:第1.2.3.4弾:いずれも大きく円安に動いた)を発射しており、今後の局面も5弾の追加緩和策が発動される可能性が高まっています(円安要因)。ただ、日米通商協議問題の解決の前に、米国を刺激するようなことはできないのが現状です。予想としては日米通商協議を上手く乗り越えたうえで、6/28-29の「大阪G20サミット」の後、7/21参院選の前に7/1発表の「日銀短観(6月調査)」での景況感悪化という大義名分を確認して、黒田バズーカ砲第5弾と消費税延期が同時に発表される可能性が高いでしょう。当面、日銀動向は円安要因として注視が必要です。

4、(その他):主要通貨の為替変動率が歴史的低位で継続しており、レンジ膠着相場が続いています。またドル以外の主要通貨金融緩和策から市場は過剰流動性となり、その大量の資金は動かなければ為替では高金利通貨に向かうでしょう。よってドル円、クロス円には買いが入りやすい環境にあります。また動かない金融商品よりも動く商品に資金は流れるのが常であり、現在は原油価格が上昇(ドル買い要因)、米国株上昇、史上最高値圏(ドル買い要因)とセンチメント好転のリスクオンからドルが買われやすい環境にあります。

 4月に入りドル円の為替変動率は更に急低下し、2014年7月につけたボトムとほぼ同水準となりました。その時のドル円相場は8月に入ってから急騰しました(急速な円安)。為替変動率があまり低水準まで低下すると、その後逆にドル円相場が大きく動き出すことが多い傾向にあります。そういった意味でも5月GW中の本邦市場参加者不在の間、もしくはGW明けの参加者が戻ってきたタイミングで大きく為替変動が起こる可能性があります。

 

 以上より、目先はドル買いドル売り材料が混在してドルの上値・下値ともに限定的と想定されますが、上記2で円高に向かわなければ次の動く展開はドルの上値を試す可能性が高いと思料します。

ただドルが買われて110~115円レンジの上値を追うようであれば、そこは一旦ドル売り先行でポジションメイクを推奨します。基本的には米利上げの打ち止め感が起因した米経済失速が今年のメインシナリオであることに変更はなく、現時点では115円以上の円安は長くは続かないと予想します。一方、ドルが売られる(円が買われる)局面では確実に一部利食いを繰り返す狭いレンジ内での短期売買が引き続き奏功しそうです。目先、上値の目途は113.27円(118.66円→104.56円の61.8%戻し)。下値はテクニカル的には110.42円(2/25高値111.24と2/7安値109.61の中間水準)。

 

ユーロ相場予測

ユーロは引き続き軟調推移、ユーロ・ドルで節目の1.1000ドル模索の可能性あり。英ポンドも引き続き離脱をめぐる不透明感が上値を圧迫して軟調。

 4月のユーロ・ドル相場は引き続き動意の薄いなか、ユーロの頭は重たく軟調に推移し、26日には1ユーロ=1.1112ドルと2017年5/30以来、約1年11ヵ月ぶりの安値を付けました。

 月初ユーロ・ドルは、ドラギ総裁のハト派発言やユーロ圏3月CPIが低下したことで1.1184ドルまで下落しました。その後は米10年債利回りの低下を受けてユーロ買いとなり一旦1.13ドル前半まで上昇したものの、4月の独・仏の経済指標悪化や欧米通商協議の激化懸念からユーロは1.12ドル台に下落しました。24日4月独Ifo企業景況感指数が予想を下回り、独10年債利回りが12日以来のマイナス金利となったことからユーロ売りが加速、26日に対ドルで1.1112ドルと2017年5/30以来約1年11ヵ月ぶりの安値を付けました。

ユーロ・ドルは、引き続きユーロの上値が重い展開を予想します。節目の1.10ドル割れが視野に入ってきました。

ユーロ圏の最大経済国である独の予想以上の景気減速への警戒感が高まっており、ユーロは引き続き軟調に推移しそうです。またEUも米国からの輸入に関税措置を打ち出したことで米欧通商摩擦が激化しつつあることもユーロの上値を抑える要因です。今後のドラギ総裁のTLTRO第3弾(9月から)や来年に先送りされた利上げ開始時期などのハト派発言もユーロの上値を押さえる要因となることから要注意です。投機的マーケット主導で一時的な大量のドル買いユーロ売りとなった場合は節目の1.10ドル模索の可能性があります。一方でユーロ買い要因は、ここ最近の中国の経済指標が改善してきたことです。中国経済と結びつきが強い欧州は、中国経済回復→欧州回復のロジックが働き、直近ユーロの売り持ちが2年4ヵ月ぶりの高水準となっていることから、ユーロのショートカバーが起こる可能性があります。しかし、ユーロの戻りは絶好のユーロ売り場と考えます。

以上からユーロ・ドルは引き続き戻り売りの戦略を推奨します。‘ユーロの戻り売り押し目で一部買い戻し’の狭いレンジでの短期売買が奏功しそうです。戻り上値として1.1350ドル以上は上値が重いと思料します。

 

【英ポンド】:

4月のポンド・ドル相場は、英Brexitの離脱期限が“半年間の再延期”で承認され、ポンドの神経質な動きが一旦落ち着きました。月初より英国のEU離脱をめぐる不透明感が続くなか、方向感は出ずポンド・ドルは1.31ドルを挟んで神経質な展開でしたが、10日のEU首脳会議で10/31までの半年間の再延期が承認され、ひとまず「合意なき離脱」への懸念は後退しました。しかし、離脱をめぐる先行き不透明感は払拭されず、ポンド・ドルで1.30前後、ポンド円は145円前後でポンドの上値は重く、ポンド軟調に推移して月末を迎えました。

今後は、英議会で5/22までに離脱案が可決されなければ、英国は5/23からの欧州議会選挙に参加する義務があります。もし、離脱案の合意に至らず、欧州議会選挙にも参加しないことになると、6/1に「合意なき離脱」となるリスクが残されています。たとえ欧州議会選挙に参加したとしても、離脱をめぐる不透明感や長期化による英経済への懸念、メイ首相の退任リスクが意識され、再延期だけではポンドの買戻しは進みづらいでしょう。野党労働党は関税同盟への残留や2度目の国民投票の実施などを主張しており、協議は引き続き難航が予想されます。

今後も離脱関連報道に一喜一憂しながらの神経質な動きが続くことが予想され、ポンド取引は少額にするか控えたほうが賢明と思料します。

 

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
ゴールデンウェイ・ジャパン株式会社 モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

5月相場を占う上で、ドル円・ユーロドルとも中国4月製造業PMI、財新製造業PMIに要注目

 4月のドル円相場は、引き続き米国経済が好調なことに加え、中国の3月製造業PMIが改善・悪化の判断の分かれ目となる50を超えてきたことからリスクオンの動きとなり、一時112.39円と今年の高値を更新する動きとなりました。

 5月のドル円相場ですが、4月30日に発表される中国4月製造業PMI、5月2日に発表される中国4月財新製造業PMIの結果が大きく影響するだろうと考えています。3月の中国製造業PMIは好結果となりましたが、これは春節休暇による季節要因も影響しており、中国経済が本当に改善方向にあるかを見極める上で4月製造業PMIの結果が非常に注目されます。4月製造業PMIも50超えとなれば、リスクオンの動きから引き続きドル円は堅調に推移する可能性が高いと見ています。一方、製造業PMIが50割れとなればリスクオンの動きは一旦終了、110円程度までの円高の動きを予想しています。

 4月のユーロドルは、前半は中国3月製造業PMIの好結果を受けて、欧州経済の改善期待から1.12ドル台前半から1.1325ドルまで戻したものの、独4月製造業PMIの結果が予想を下回ると下落に転じ、26日には1.1110ドルまで下げる場面がありました。今後の動きですが、こちらはドル円以上に中国製造業PMIの結果が鍵を握りそうです。中国の4月製造業PMIが50割れとなれば、欧州経済の更なる悪化懸念からユーロドルは1.10ドル割れも視野に入ってくると考えています。一方、中国製造業PMIが50を上回っていた場合は一旦下げ止まりの動きとなり、実際に独製造業PMIやユーロ圏製造業PMIに改善が見られるまでは横ばいの動きになると予想しています。

 

バックナンバー

 

鶴のヒトコエの過去の記事を確認できます。

 

 

 
【ご注意】
  • 本ページは、投資判断にあたり参考となる情報の提供を目的としており、金融商品の売買を勧めるものではありません。投資の最終的な判断はお客様ご自身の責任でされるようお願いいたします。
  • 本ページでは、当社が信頼できると判断した情報を紹介しておりますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当サイトに基づいて被ったいかなるトラブルや損失・損害等についても、弊社及び情報提供元は一切責任を負うものではありません。