鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

 
 

鶴 泰治 ゴールデンウェイ・ジャパン株式会社【2019年4月1日(株)FXトレード・フィナンシャルは社名変更いたしました。】代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

109.00~112.00円をコアレンジとした膠着相場継続。
国際情勢の落ち着き次第でもう一段の円安の可能性あり。

 2月のドル円相場は、米中通商協議の進展期待や米政府機関閉鎖解除、月末の米朝首脳会談の進展期待などリスクオンの動きからドル円は108円台後半から111円台までドルが買われました。

 1月末のFOMCでパウエルFRB議長のハト派的な発言を受けドルが軟調に推移した影響から、月初108円台後半(108.73:月間安値)でスタートしたドル円相場は、1日の堅調な米雇用統計(1月)の発表を受けて、一転ドル買いの流れとなり、昨年12月以来の110円台まで回復しました。その後の米中通商協議(3/1期限)の妥結期待や米政府機関閉鎖解除(2/15期限)を受けて、ドル上昇の流れが続き、一時111円台(111.13円)まで上昇しました。しかしその後は3/1の対中制裁関税引き上げの期限と米国債務上限の適用停止期限に向けた警戒感が重石となり動意の薄いなか、110円台の極端に狭いレンジ取引に終始していましたが、25日トランプ大統領が対中関税の引き上げを延期すると表明したことを受けて世界的に株価が上昇しました。ドルがもう一段買われて一時111.24(月間高値)と昨年12/27以来の年初来高値を更新となりました。

 今後のドル円相場は、109.00~112.00円をコアレンジとして、ドルの上値は伸び悩むものの下値も底堅いボラティリティ(価格変動率)の低いレンジ膠着相場を予想できます。国際情勢の落ち着きが確認されればもう一段の円安の可能性があります。

1、(米国経済):FRBは利上げを一時停止し、米経済指標も強弱混在している現状、世界的な景気減速の兆候が見え始め、米長期金利は低下安定傾向にあります。現時点の金利先物市場は年内利下げの可能性を一部織り込み、2020年12月までに約1回(0.8回)の利下げを織り込んでいます。米金融引き締め局面での利下げの可能性が現在のドル円相場の上値を抑えています(ドル売り要因)。一方、金利差縮小(米:利下げの可能性、日本:異次元の金融緩和継続)からドル安というよりも、米株式市場の下支えからドル買い意欲が底堅いのが現在のマーケット環境となっています(ドル買い要因)。→これが狭いレンジ膠着相場の主要因です。リスクは「米経済が想定外に堅調地合い」となることであり、FRBの利上げ再開をマーケットが織り込み始めるとドルは買われると思います。その場合は米長期金利が上昇するので、引き続き米10年債利回り(上昇:ドル買い、下落:ドル売り)を注視しながらの展開が予想されます。これ以上の利下げ織り込みは想定しづらく、米株価堅調地合いが継続すればドル円の下値も限定的と考えられます。

2、(貿易戦争)米中貿易協議は①貿易赤字削減②人民元安誘導の是正につき、合意・進展したとの報道でトランプ大統領は関税引き上げ期限の先送りを決定しました。リスクオンからドルが買われやすい地合いであるものの、その内容の吟味が必要です。米国が中国に対して人民元相場を切り下げないと公約を結ばせた場合は、日本に対しても意図的な通貨安を禁止する「為替条項」の導入が警戒され、ドル売り(円買い)要因となります。5/18までを期限とした日本からの自動車輸入に関税を課すか否かの方針決定のための日米通商協議再開も想定され、米国は対日貿易赤字の削減が優先課題であり、ドル売り(円買い)要因として重くのしかかっています。

3、(英Brexit):EU離脱の期限となる3/29までは不透明感が強く、いまだに混乱が続いている英ポンド相場では、「合意なき離脱」は回避されるだろうとの観測からポンドは買い戻され、安堵感からドル円相場ではドルが買われている状況です。仮に「離脱日の延期」という方向となれば、ドル円相場ではドル買いが楽観的に進む可能性があると思います。更に「再国民投票実施」となれば残留への期待が膨らみ、ポンド円は160円方向、ドル円でも円安が連れて加速して、一時的に想定レンジを上抜けるドル高円安が想定されます。一方で「合意なき離脱」の結果となれば、ポンドは大きく売られて避難通貨として円の選好が強まり、円買い(ドル売り)が一時的に大きく加速して、108円を下割れしていく可能性が高いと思われます。目先、政治的には英Brexitが一番大きな円安・円高要因となると思われます。

 以上よりドル買いドル売り材料が混在してドルの上値・下値ともに限定的と想定されますが、米利上げ打ち止め観測が台頭するなか、米中通商協議の進展やBrexitも含めた国際情勢の混乱が落ち着き、世界経済に対する悲観的な見方が修正となれば、もう一段の円安が続く可能性が高まります。ただドルが買われて110~115円レンジの上値を追うようであれば、そこはドル売り先行でポジションメイクを推奨します。基本的には米利上げの打ち止め感が起因した春以降の米経済失速がメインシナリオであることに変更はありません。グローバルな円の持ち高も小さいことから、年初のようなドル急落も想定しがたく、ドルが売られて(円が買われる)局面では確実に一部利食いを繰り返す狭いレンジ内での短期売買が引き続き奏功しそうです。目先はドル売りポジションをキープしながらの回転売買により、ドルの平均売り持ち値の向上を模索する局面と想定します。目先、上値の目途は昨年11月の大半を112~114円の膠着相場でもみ合ったレンジの月間安値112.31円です。下値はテクニカル的には110.42円です(2/25高値111.24と2/7安値109.61の中間水準)。

 

ユーロ相場予測

ユーロ・ドル1.1300~1.1400ドルコアレンジでユーロの上値が重いなか、米ドル・英ポンド主導の展開。英ポンドはBrexit行方次第でもう一段のポンド高。

 2月のユーロ・ドル相場は引き続き動意の薄いなか、ユーロの頭は重たく月の大半を1.13ドル台のレンジ膠着相場に終始しました。

 月初1.14ドル台後半(1.1488ドル:月間高値)でスタートしたユーロ・ドルは、ユーロ圏の景況感悪化や経済の下方リスクの高まり、インフレ率の鈍化懸念を背景にユーロは伸び悩み、ユーロ・ドルで一時1.1234ドル(月間安値)を示現するも英Brexitの「合意なき離脱」が回避されるとの観測からユーロも連れ高となり、動意の薄いなか月の大半を1.13ドル台の狭いレンジ取引に終始しました。一方、ユーロ・円は月間を通して124~125円台の狭いレンジ取引(月間安値:124.18円、2/8)に終始していましたが、25日世界的な株価上昇が投資家のリスク選好度が高まり円売り・ユーロ買いが優勢となって126円を上抜け、27日には一時126.35円と昨年12/31以来の年初来高値を更新しました。

 ユーロ・ドルは1.1300~1.1400ドルをコアレンジとして引き続きユーロの上値が重い展開を予想します。

そしてユーロ圏の景況感悪化や経済の下方リスク、更に伊、仏、独、西の政治リスクが警戒されユーロの上値を抑える要因となりそうです。米ドル主導でドル買いユーロ売りとなった場合は更なる下値模索の可能性があります。ユーロ・円は英Brexit懸念払拭(ユーロはポンドに連れ高)次第ユーロ・ドル相場よりも堅調(ユーロ高円安)な展開が想定されます。

 以上からユーロ・ドルは引き続き戻り売りの戦略を推奨します。‘ユーロの戻り売り押し目で一部買い戻し’の狭いレンジでの短期売買が奏功しそうです。ユーロ・ドルの目先下値めどは、2018年11月に示現した年間安値の1.1216ドル、2017年以降の高安の61.8%戻しの1.1187ドル、一方、戻り上値として1.1450ドル以上は上値が重いと思料します。

 

 

(英ポンド): 2月のポンド・ドル相場は英Brexitの方向性が“合意なき離脱”は回避されるとの見方が台頭し月末にかけポンドが買い戻される展開となりました。

 月初よりEU離脱の先行き不透明感や弱い経済指標の発表を背景にポンド・ドルで一時1.1267ドル(月間安値)と昨年11/28以来の安値を示現しましたが、月央以降「合意なき離脱」が回避されるとの観測からポンドは買い戻されて、27日には一時1.3350ドル昨年7/9以来約7か月半ぶりの高値を、ポンド・円も一時148.05円と昨年11/14以来の高値を更新しました。

英国のEU離脱の期限となる3/29に向け「合意なき離脱」回避が現実味を帯びてくると、もう一段のポンド買いに市場は動くと思いますメイ首相により2月末に審議・採決される予定であったBrexit修正案は3/12に延期され、議会で承認されなかった場合「離脱延期」の可能性に言及しました。与野党議会内では「合意なき離脱」を阻止する動きが活発となり、メイ首相が仮に離脱修正案でEUと合意できなかった場合は、議会採決によって「離脱期限の延長」が可決される可能性が高まっています。ここにきて「合意なき離脱」の可能性はかなり小さくなっており、リスクオンからポンドの買戻しが今後も先行しそうと考えられます。弊職の予想は「何らかの合意ある離脱」(50%)「離脱期限の延長」(30%)ポンド買い、ただその後の英国将来は長く暗黒の時代を迎えることには変わりがないことから、ポンド上昇局面(一旦ポンド・ドルで1.35~1.40ドルゾーン)ではポンド売りを推奨します。可能性は低いですが、仮に「合意なき離脱」(10%)となった場合はポンド・ドルで1.00ドル方向までポンドは売られると予想します。その場合は追いかけてポンドを売っても遅くないと思料します。逆に「再国民投票実施」(10%)となれば、EU残留が意識されポンド・ドルで1.45~1.50ドル、ポンド・円で160円程度まで買われると考えます。

 3/29に向け、ヘッドラインでポンドが足早に日替わりで売買され、不規則な動きが想定されるなか、ポンド取引は少額にするか控えたほうが賢明と思料します。

 

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
ゴールデンウェイ・ジャパン株式会社【2019年4月1日(株)FXトレード・フィナンシャルは社名変更いたしました。】 モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円の調整局面入りを予想

 2月のドル円相場は、米雇用統計、米ISM製造業景況指数の好結果を受けてドル買いの流れが強まったことで上昇し、110円台を回復すると14日には111円台前半まで上値を伸ばしました。その後、弱い米経済指標が続いたことから下げる場面もあったものの、黒田日銀総裁が「為替で経済・物価に影響が出て目標達成に必要ならば緩和を検討」と発言したことや対中関税引き上げ延期により、現在は再び111円近辺まで戻しての推移となっています。

 今後のドル円相場ですが、1月の急落分をすべて戻したことや一部の米経済指標に悪化が見られることから、円安ドル高の流れに一旦調整が入ると考えています。目先円安材料が続いており、月初の米経済指標次第では112円台まで値を伸ばす場面もあるかもしれませんが、米金融政策のハト派転向も踏まえるとそれ以上の上昇は難しいと思われます。110円~111円台での保ち合いがしばらく続いた後で、108円程度までの円高の展開を予想しています。

 2月のユーロドルは、ユーロ圏の経済指標結果が悪い中、米経済指標が好調だったことやクーレECB理事が条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)検討を示唆したことから15日には一時1.1231ドルと2018年の安値1.1213ドル近くまで値を下げました。その後は米経済指標の悪化もあり、一時1.14ドルまで上昇、現在は1.13ドル台後半での推移となっています。今後の動きですが、ユーロ圏の経済指標の悪化が続く中、米経済指標の好調は続いており、この状況が変わらないうちはユーロドルの頭の重たい状況は続きそうです。3月は1.12ドル~1.15ドルのレンジ相場を予想していますが、ユーロ圏経済に改善が見られなければ、いずれは1.12ドルを割って1.08ドルも視野に入ってくると考えています。

バックナンバー

鶴のヒトコエの過去の記事を確認できます。

 

【ご注意】
  • 本ページは、投資判断にあたり参考となる情報の提供を目的としており、金融商品の売買を勧めるものではありません。投資の最終的な判断はお客様ご自身の責任でされるようお願いいたします。
  • 本ページでは、当社が信頼できると判断した情報を紹介しておりますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当サイトに基づいて被ったいかなるトラブルや損失・損害等についても、弊社及び情報提供元は一切責任を負うものではありません。