鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

 
 

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

 

108.00~111.00円をコアレンジとしたドルの上値が重たい展開。
ボラティリティ(価格変動率)の低いレンジ膠着相場を予想。

1月のドル円相場は、年初3日早朝に108円台後半から104円台まで暴落(フラッシュクラッシュ)、全般的にリスクオフの動きが強くドルの上値が重たい展開となりました。
年初2日109円台でスタートしたドル円相場は、年末から広がった世界的な景気減速懸念や米政府機関の一部閉鎖が長期化するとの思惑からリスク回避的な円買いドル売りを誘い、3日早朝の薄商いの中、仕掛け的な売りも入り、108.88円でNY引けしたドル円は暴落しました。一時104.87円(月間安値)まで急ピッチで下値を広げ(フラッシュクラッシュ)、昨年3月26日に示現した2018年最安値の104.56円に迫りました。その際、米10年債利回りが一時2.5429%(月末2.73%)と昨年1月以来の低水準を付けたこともドル売りを促しました。その後は急ピッチで107円台後半まで持ち直すなど、瞬間的な乱高下の波乱な幕開けとなったドル円相場は、米中貿易摩擦の緩和期待やNY株の持ち直しから緩やかなドル買いの膠着相場となり、23日には110.00円(月間高値)丁度までドルは上昇し、109円台で月末を迎えました。

今後のドル円相場は、108.00~111.00円をコアレンジとしドルの上値が重たい展開が予想出来ます。ただ、下値も底固くボラティリティ(価格変動率)の低いレンジ膠着相場を予想します。

1、(米国経済):29-30日に開催されたFOMC声明では予想よりもややハト派的な内容となりました。パウエル議長は利上げ一時停止を明示し(昨年12月のFOMCでは今年の利上げ見通しは年2回、2020年は年1回)米長期金利は低下しました。金利先物市場はFOMC前に年内0.1回の利上げを織り込んでいましたが、FOMC後、年内利下げの可能性を一部織り込みはじめました。現時点で2020年6月までに0.5回、12月までに0.7回の利下げを織り込んでいます。昨年12月から市場の利上げ織り込み回数とドル円相場の相関は回復しており、利上げ期待の後退及び利下げの可能性が現在のドル円相場の上値を抑えています。一方、量的引き締め(バランスシート議論)が早期終了する可能性が好感され、株価は上昇(ドル買い要因)しました。今後のドル円相場は巡航速度を上回ってきた米経済指標の継続度合いと米株価の動向を踏まえ、米10年債利回り(上昇:ドル買い、下落:ドル売り)を注視しながらの展開となりそうですが、FRB高官が利下げに言及するところまではいかない限り、ドル円の下値も限定的になると思います。
2月15日までの米政府機関再開が決定したものの依然先行きが不透明であり、ドル売りの一要因
となっています。

2、(貿易戦争):30-31日の米中通商会議では米中が妥結するのか(ドル買い)、それともこれまで同様に決裂(ドル売り)して米中貿易戦争の再燃となるのかが目先の注目点です。米中貿易協議の期限とされる3月1日までは引き続き緊張感が高まり続け、その都度ドル売買の要因になると思います。
日米通商協議は米政府機関の閉鎖が3週間解除されたことで2月にも開催される可能性が高まりつつあります。米側は2月19日までに自動車輸入に対して追加関税を課すかどうか判断する予定があり、また意図的な通貨安を禁止する「為替条項」の導入も想定され(ドル売り円高要因)、日米通商会議が2月19日までに開催される可能性に要警戒することになるでしょう。

3、(本邦輸出筋・グローバルポジションの傾き):12月の日銀短観で大企業製造業の2018年度下期(3月末まで)想定為替レートは109.26円が公表されました。年末に節目の110円を下割れし、104円台まで下落し、戻りが110円丁度のワンタッチで109円台に戻されたドル円相場だけに今後109円台後半から110円台にかけては本邦輸出筋のドル売り予約がドルの上値を重くする大きな要因となります。
米政府機関の一部閉鎖により、グローバルなポジションの傾き動向を示唆するシカゴIMMの数値が年初から公表されていません。最後に公表された12月18日時点では、円売りポジションがグローバルに積み上がっていましたが、年初に104円台まで暴落したドル円相場だけに、現在はポジションの傾きは小規模で相場に与える影響は小さいと思料します。

上記1,2,3,よりドル売り材料は、利上げ打ち止め観測、米中通商協議や日米通商協議への警戒感、米ねじれ議会による政府機関再閉鎖や減税第2弾の難航の可能性、本邦輸出筋動向が考えられます。ドル買い材料として今後の経済指標に起因する再度利上げ織り込み回数の向上、底堅いNY株式市場、貿易戦争の進展、第2回米朝首脳会談への期待感などが挙げられますが、ややドル売り要因の方が多くドルの上値は抑えられると思います。一方、ポジションの傾きも小さいことが想定されることから、ロスカット発動によるドルの再急落も考えづらいです。3月の利上げはないと想定されますが、仮に今後発表される米経済指標が好調を維持し、再度利上げを織り込みはじめ、ドルの上値を追う展開となればそこはドルの戻り売り場と考えられます。ボラティリティが上昇する要因は見当たらないことから、狭いレンジを想定した“ドルの戻り売り一部押し目買い”の回転売買が奏功しそうであると思います。目先、上値の目途は110.50~111.00ゾーン(バリアオプションの大量のドル売り玉)、下値はフラッシュクラッシュ時に下ヒゲが始まった107円後半~108円前半ゾーンと考えられます。

 

ユーロ相場予測

ユーロ・ドル1.1300~1.1400ドルコアレンジでユーロの上値が重く軟調地合い、 ポンドも対ドル・対円で上値が重く軟調地合い。

1月のユーロ・ドル相場は、動意の薄いなか、月の大半を1.13~1.14ドルのレンジ膠着相場に終始しました。

月初1.13ドル台でスタートしたユーロ・ドルは3日の“フラッシュクラッシュ”時の相場展開でもあまり影響を受けず、1.13ドル台前半から1.14ドル台前半の狭いドル売りを示現しました。その後のハト派的なパウエルFOMC議事要旨を受けて(ドル売り)10日に一時1.1570ドル(月間高値)を示現し、24日ドイツの今年の経済成長見通しが大きく可能修正(1.8%→1.0%)されたこととドラギECB総裁が経済成長リスクは下方向に転じたと述べた際にユーロ売りから1.1290ドル(月間安値)を示現した以外は終始1.13~1.14ドル台にて動意なく狭いレンジで推移しました。一方、ユーロ・円は“フラッシュクラッシュ”時の円買いにより122円台から118.71円まで暴落し、その後は123~125円台で動意なく推移しました。
ユーロ・ドルは1.1300~1.1400ドルをコアレンジとしてユーロの上値が重く軟調に推移しそうと考えられます。
ユーロ圏の景況感悪化や経済の下方リスクが高まる中、今後のユーロ圏経済指標動向というよりは米ドル主導で(ドル売り→ユーロ買い、ドル買い→ユーロ売り)引き続き狭いレンジ相場展開が予想されます。ドイツ・フランスの政治リスク(独:連立政権から社会民主党が離脱するリスク、仏:マクロン大統領に対する不信任決議)が払拭されていないこともユーロの上値を重くする要因と考えられます。ユーロ・円は上記に加え日米貿易摩擦、英Brexit懸念(ユーロはポンドに連れ安)次第ユーロ・ドル相場よりも軟調な展開が想定されます。
以上からユーロは戻り売りの戦略が引き続きワークしそうです。上記ドル円相場同様、‘ユーロの戻り売り押し目で一部買い戻し’の狭いレンジでの短期売買が奏功しそうと考えられます。ユーロ・ドルの目先下値目途は、2018年11月に示現した年間安値の1.1216ドル、2017年以降の高安の61.8%戻しである1.1187ドル、一方、戻り上値として1.15ドル台は上値が重いと思料します。

(英ポンド)1月のポンド・ドル相場はBrexitに関して“合意なき離脱”の回避観測からポンドが買い戻される展開となりました。
年初2日は欧州金利低下に伴いポンド売り優勢となって、薄商いのなか2017年4月以来の1ポンド=1.2441ドル(月間安値)まで下落、ポンド・円は3日フラッシュクラッシュ時にNY終値137.25円から 133.87円(月間安値)まで急落しました。その後は15日のEU離脱合意案が議会で否決されるものの、メイ首相の不信任投票が否決され1.28ドル台までポンドは反発しました。さらに17日に野党労働党の党首が2度目の国民投票の可能性に言及したことから1.3001ドルまでポンドは買い戻されました。その後、Brexitの先行き不透明感が続くなか、「合意なき離脱」は回避されるとの期待感を支えにポンド・ドルは1.32ドル台、ポンド・円で144円台まで上昇しました。29日のEU離脱修正案採決で“「合意なき離脱」阻止”を可決、“アイルランド問題EUと再交渉”も可決されましたが、“離脱延長の義務付け”は否決されたため「合意なき離脱」回避への期待感が剥がされポンドは戻り高値圏から売られて月末を迎えました。
EU離脱協議は再度行き詰った状態になり、「合意なき離脱」回避へなんらかの合意に今後進んだとしても問題は山積しており、戻り高値圏から(1.32ドル、144円)のポンドの大幅な上昇は見込めないと思料しました。EU側は延長の準備はしているものの、EU離脱案の再交渉の可能性は否定しています。今後は「合意なき離脱」を避けるための“離脱延長(メイ首相は離脱延長する権限を保持)”、“総選挙”または“合意なき離脱”のいずれかを選択することになると思います。引き続き、ヘッドラインでポンドが足早に売買され不規則な動きが想定されるなか、ポンド取引は少額にするか控えたほうが賢明と思料します。

 

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円は円高トレンド継続、1月安値104.96円を目指す動きを予想

1月のドル円相場はリスクオフの動きで始まり、3日には108円台から104.96円まで一気に下げる場面がありました。しかしその後は、パウエルFRB議長が「問題が発生すれば、バランスシートの正常化も含めて修正をためらわない」と発言したこともあってリスク選好の動きが強まり、結局ドル円は一時109.99円と急落前の水準を回復、現在はFOMCがハト派色を明確にしたこともあって109円を挟んでの推移となっています。
今後のドル円相場ですが、1月の急落後の戻り局面で23日は109.99円、25日は109.95円と2度110円手前で抑えられており、110円を超えての上昇は難しいと思われます。FOMCが利上げに関して辛抱強いスタンスを表明、バランスシートの縮小についても柔軟に対応する考えを示唆したことで、ここからは円高が進む可能性が高いと考えています。昨年12月の始値113.46円からはすでに4円以上下げているため、目先は108円~110円で横ばいの動きとなりそうですが、そう遠くないうちに1月安値104.96円を目指す動きになると予想しています。
1月のユーロドルは米欧の弱材料に上下する展開で、FRBのバランスシート縮小が予想よりも早く終了するとの見方から上は1.1570ドル、独製造業PMIが景気判断の分かれ目となる50を割り込んだことやドラギECB総裁のハト派発言を受けて下は1.1286ドルまでありました。今後の見通しですが、当面はドルもユーロも売りにつながる材料が多そうで、1月同様に弱材料を受けての上下が続きそうです。ユーロ売りの材料が出た時は1.12ドル台、ドル売りの材料が出た時は1.15ドル台を目途に行ったり来たりの展開を予想しています。

 

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