鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

 
 

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

 

112.00~114.00円コアレンジ。米中首脳会談、英国Brexit議決の結果次第で110円、115円を突発的に示現する可能性あり。

11月のドル円相場は、動意の薄い112円前半から114円前半までの狭いレンジ取引に終始した。

月初113円台でスタートしたドル円相場は、FOMC声明で利上げ路線の継続が示されたことで一時114.21円(月間高値)までドルは買われたものの、8日の米中間選挙で、予想通り上院は共和党、下院は民主党が過半数を確保し‘ねじれ議会’となったことで、トランプ政権の政策運営の実現性が大幅に低下することを警戒したドル売りにより、一時112円台前半(112.31円:月間安値)まで下落した。その後は、パウエルFRB議長等複数のFRB高官による来年度の利上げサイクルの低下を促すハト派的な見解が表面化し、米長期金利(10年債)が直近高値から0.2%低下するなど(ドル売り要因)ドルの上値は重くなり、一方で引き続き堅調な米経済指標の発表により米株も底堅く推移したことからドルの底値も固い113円台を中心とした狭いレンジ取引に終始。月末のG20 での米中首脳会談を控え動意の薄い展開が続くなか月末を迎えた。

今後のドル円相場は、112.00~114.00をコアレンジとし110.00~115.00円レンジの中、米中首脳会談(12/1)の結果と英国Brexit案下院での議決(12/11)の結果次第でドルの上下を再度伺う展開となると予想する。ただ、季節要因からドル買い需要は強いことからドルの下値は固い。

1、(米国経済):10月の堅調な米雇用統計結果や年末商戦の個人消費拡大傾向からくる米国経済の好調維持は、12月FOMC(12/18^19)での利上げを確実視するものとなるだろう。しかし12月の25bp利上げは既に市場に織り込まれているため、ここからのドル買い要因とはならない。一方で、来年度の米景気後退を織り込み始めた米10年債利回りの低下(11月上旬の3.23%→3.03%まで低下、現在3.03%)はドル売り要因であることから今後もドル円相場と相関の高い米10年債利回りの動き(金利上昇→ドル買い、金利低下→ドル売り)を見ながらドル円の上下動が続くと思われる。リスクは米10年債が節目の3%を下割れすると一時的にドル売りが走る可能性が高い。

2、(米中首脳会談):12/1夕食時(G20サミット、アルゼンチン)に米中首脳会談が予定されており、中断が続く米中間の通商協議につき協議されることになっている。今回の首脳会談で両国の対立が緩和されるかどうかが焦点であり、結果次第でリスクオン(ドル買い)・リスクオフ(ドル売り)の方向性が決まり、短期的にはドル円相場がその方向性に沿って動くことが予想される。市場にとってネガティブな結果は①‘首脳会談が物別れ’となり、予定どおり2000億ドル相当の輸入品に対する関税率を1月に10%から25%に引き上げること。この場合、短期的には大きく株安・円高に繋がる可能性が高い。更に米国が中国からの輸入品全てに関税を課すことを正式に発表する可能性もある。更にドルが売られる要因となるだろう。ややポジティブな結果は②交渉再開で合意し、貿易戦争が「休戦」となる場合。この場合、1月からの関税引き上げ(10%→25%)が一旦取り止めとなる可能性が高い。ドル円相場には中立よりはややドル買い要因。よりポジティブな結果は③これまでに発動された関税の撤回で合意すること。2000億ドル相当に対する関税を撤回することであるがハードルは極めて高そうである。市場の予想では①、②で分かれているが①となった場合、グローバル市場の円売りポジションがいまだに高水準で積み上がっていることを考えるとインパクト(ドル売り円買い)が大きいだろう。②はこれまでの米国の覇権をかけた中国への継続的・執拗な圧力を考えると中国の譲歩が必要。ただ、緊張緩和に向けたなんらかの合意にたどり着くだろうという市場の期待感の方が①よりも少し高い。

3、(12月季節要因:リパトリ):12月の需給面は一般的にドル需要が強い。年末に向けて米系企業の海外利益のリパトリエーション(本国送金:ドル買い)が本格化する。本年度はトランプ大統領が導入した法人税減税により、今年1月以降に稼いだ海外利益の国内送金は非課税(例年は税率35%)となる。今年は例年のリパトリフローに加えて更なるドル需要(現地通貨売り/ドル買い)が見込まれ、相対的なドル高地合いを支える要因となるだろう。

4、(その他:英国Brexit要因)英国のBrexit(EU離脱)合意案に対する下院議決が12/11に行われる。メイ首相のBrexit案を賛成多数で通過させることが出来ればポンド・ドルが大きく上昇することが予想される(ポンド買いドル売り。現状ポンド・ドルは1.27ドル近辺ですが1.40ドルを超えていく可能性がある)。一方、否決されれば1.20ドルを下割れするくらいポンドは売られるでしょう(ドル買い)。その際、ポンド・円はポンドが売られれば現状ポンド・円145円が135円方向、ポンドが買われた場合は160円方向まで極短期的に相場が変動する可能性が高い。この場合、ドル円相場もポンド・円相場に引っ張られ突発的な値動きにより思わぬ上下動する可能性が高くなるだろう。下値は110円、上値は115円まで瞬間的に示現してもおかしくない動きが想定されるので注意が必要。グローバルなポンド持ち高はポンド売りに傾いていることから、可決された場合の方が値は飛ぶ可能性は高くなるだろう。

 上記1,2,3,4よりドル買いトレンドが続くなか、ドルの上値及び下値を突発的にトライする可能性もあるものの110~115円レンジ継続に変更はないと予想。引き続きドルの押し目買い戻り一部売りで回転売買する戦略がワークすると思料。米10年債利回りの動きを見ながら(金利上昇→ドル買い、金利低下→ドル売り)足早な短期売買をすることを推奨。英国Brexit(12/11)時には突発的にレンジを超えた値を示現する可能性もあるので要注意。

以上から年初来予想してきた「中長期的(年内)には米景気堅調、日米金利差拡大からドル高円安トレンドに回帰し110~115円レンジの円安を目指す展開」に沿った動きが12月も継続、上値の目途は10月に示現した年初来高値の114.54円、その次は節目の115.00円。下値は10月安値111.38円、9月安値110.52円、節目の110.00円が意識される。

 

ユーロ相場予測

ユーロ・ドルは1.1200~1.1400コアレンジのなか、ユーロの上値が重たい展開。英ポンドはBrexit議決(12/11)で値幅が大きく上下動する展開。

11月のユーロ・ドル相場は、イタリア予算案及びドイツの政局問題を背景にユーロの上値が重たい展開となった。月初1.13ドル台でスタートしたユーロ・ドルは米中間選挙の結果(ねじれ議会)を受けてドルが下落する中、一時(1.1500ドル(月間高値)までユーロは上昇するも、その後はイタリアの財政懸念等を背景に遂に1.13ドル(年初来安値:8月のトルコ危機時に示現した1.1301ドル)を割り込み、一時1.1216ドル(月間安値)昨年6月以来の安値を示現した。その後米長期金利低下を材料としたドル売りにより、1.14ドル後半まで戻す局面もあったものの、イタリアの予算案拒否が報じられユーロは軟調推移に、安値圏1.12~1.13ドル台を繰り返しながら月末を迎えた。

引き続き、ユーロ・ドルは①イタリア予算案②ドイツ政局混迷を主因に1.1200~1.1400ドルをコアレンジとしてユーロの上値が重く軟調に推移しそうである。

① イタリア:欧州委員会がイタリア政府の2019年予算案を財政規律違反として拒絶し、3週間以内の修正案を要請したものの、コンテ伊首相は予算案の修正を拒否している状況。その後欧州委員会がイタリア政府に対して、2週間の猶予を与えて是正措置を求める手続きを勧告しており、予断が許さない状況が続いている。イタリア政府に対して罰金などのペナルティーが課される可能性もあり、債務危機再燃からイタリア国債が売られる(ユーロ売り)環境が12月も続きそうである。

② ドイツ:メルケル首相が与党党首選(12月予定)の不出馬、2021年秋の退陣を表明し、連立を組んでいる社会民主党が連立政権からの離脱を示唆したことで解散・総選挙の可能性が高まりつつあることもユーロ売り要因となっている。

更に欧州の景況面をみると、現時点で来年夏場以降の利上げが後退している状況(秋口以降)。また12月で現行の量的緩和も終了するスケジュールであり、今後の景況感指数やドラギECB総裁の政策発言に注目が集まるもののユーロ売りの根底となっている。

以上からユーロは戻り売りの戦略が引き続きワークしそうである。指標としては、独・伊の長期金利差(独伊スプレッド:現在の基準を300bpとし、拡大するとユーロ売り、縮小するとユーロ買い)に 着目してユーロの戻り売り押し目で一部買い戻し’の短期売買が奏功しそうである。ユーロ・ドルの目先下値めどは、2017年以降の高安の61.8%戻しである1.1187ドル、昨年5月に示現した1.1110ドル。市場は節目の1.10ドル割れを意識している。一方、戻り上値として1.14ドル台定着は難しそうである。

11月のポンド・ドル相場はBrexitに関する離脱交渉不透明感が起因した神経質な値動きのなか、ポンド売りが優勢となった。米中間選挙(8日)のドル売りを受け一時1.3175ドルまでポンドが買い戻された局面はあったものの、その後Brexit懸念が高まるなかでポンドは軟調に推移し、一時1.2724ドルまでポンドは売られた。離脱案がEUと大筋合意した際、一旦1.29ドル台まで値は戻したものの英議会での承認懸念がくすぶるなか1.27ドル台に反落して月末を迎えた。今後の焦点は上記ドル円コーナーでも記載した英議会で承認されるか否かが最大のポイント。議会で否決されれば「合意なき離脱」、内閣総辞職、再選挙というシナリオになる可能性も排除できずポンドが大きく売り込まれるかもしれない。逆にメイ首相辞任と引き換えに(あくまで噂の範囲)賛成多数承認となればポンドが大きく買い戻される可能性も高い。いずれにせよ、噂やリークによるヘッドラインでポンドが足早に売買されて、不規則な動きが想定されるなか、ポンド取引は控えたほうが賢明と思料する。

 

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円は米FOMC、ユーロドルはユーロ圏PMIに注目。FOMC次第では大きく円高の可能性も

 11月のドル円相場は、10月の株式市場急落からのリスクオフの流れが落ち着いたことで底堅い推移となったものの、米中首脳会談を控えて上値を追いづらい状況から膠着状態が続き、月間の値幅はわずか1.91円にとどまりました。 今後のドル円の動きですが、目先は米中首脳会談の結果次第ですが、中期的には12月FOMCの結果が鍵を握ると考えています。市場では2019年に米景気がピークアウトし、米利上げも休止するとの見方が出てきており、12月FOMCで公表される政策金利見通しやパウエルFRB議長の発言内容次第では、ドル円は一旦大きく落ちる可能性があると思います。米FOMCで今後の金利見通しに変化がなければ111.50円~114円のレンジ相場、金利見通しが引き下げられた場合は110円や108円程度までの円高を予想しています。 11月のユーロドルは、ユーロ圏の景気見通しへの懸念やイタリア問題から一時1.1214ドルまで下げ幅を広げたものの、米金利先高観が後退したことから1.14ドル近辺まで値を戻しました。今後の展開ですが、ユーロ圏の景気見通しが改善するまではユーロ安基調が続くと考えています。ユーロ圏製造業PMI、独製造業PMIが4か月連続で下げてきており、5か月連続の低下となれば早期に1.12ドル割れ、PMIの低下が止まれば一旦1.12ドル~1.15ドルのレンジ相場を予想しています。

 

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