鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

 
 

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

 

111.00~114.00円をコアレンジとしてドルの上値を再度伺う展開。ただ、ドルの上値は重たく伸び悩むもののドルの下値も限定的。

10月のドル円相場は、月初こそ年初来高値を更新してドルの上値(114.54円)を試す展開となったものの、その後は米中貿易戦争の警戒感や世界同時株安を受けたリスク回避の円買いで111円台前半(111.38円)までドルは売られ,ドルの上値が重たい展開が続きました。

月初はパウエルFRB議長が中立水準金利(3%)を超えるまで追加利上げを示唆したことと、米10年債利回りが3.23%まで上昇(直近高値5/18の3.129%を上抜け、2011年以来の高水準)したことでドル全面高の展開となり、一時114.54円(月間高値)と昨年11月以来の高値を示現しました。その後は、米国が為替報告書(半年に1回公表)で中国を為替操作国と認定されることに対する警戒感やNY株式市場を震源とする世界同時株安を受けたリスク回避の円買いでドル円は114円台から111円台前半まで断続的に売られ、一時111.38円(月間安値)と9月13日以来の安値を付けました。

今後のドル円相場は、111.00~114.00をコアレンジとし110.00~115.00円レンジの中、ドルの上値を再度伺う展開となるものの上値が重たい展開を予想します。ただ、米国株の下落調整は底入れした感もあり、ドルの下値も限定的と予想します。

1、(米国経済):米国のファンダメンタルズの良好さに暗雲が立ち込め始めました。10月の一連の弱めの米経済指標の発表やリーマンショック以来となるNY発の世界同時株安(1ヵ月で概ね10%程度下落)により、米国の景気後退を意識する局面に市場は入り始めています。米10年債利回りも月初の3.2%程度から月末には一時3.05%程度まで急落し、米国経済がこの先、絶好調、株価も絶好調にはならないと市場が認識し始めている兆候が出てきています。当面このリスクオフ的な環境が続くことが予想されドル円の上値を抑える要因となりそうです。

2、(米中間選挙11/6)下院で民主党が過半数を奪還するとの見方が市場コンセンサスです。予想通りの結果となった場合、所得税の追加減税法案が困難との見方が台頭すれば、景気減速が意識されドル円の下落材料となります。仮に上下両院で共和党が過半数を維持する結果となれば、トランプ政権による追加減税(中間所得層向けの大規模な減税)に対する期待も高まり(ドル買い)、株価上昇、「米国一人勝ち」期待から短期的にドルが大きく買われるでしょう。

3、(グローバルポジションの傾き):グローバル投機筋の直近ポジション(シカゴIMM、10/23付け)は、トランプ政権樹立時のドル買い相場で積み上がった円売りポジション最大時の7割程度の円売りポジションがまだ積み上がっており、ポジション解消に伴うドル売りがドルの上値を抑える大きな要因となるでしょう。米株価の下落は終わりが近いかもしれませんが米長期金利が3%を割れて低下するようだとドル円は短期的にもう一段下落するリスクがあります。


4、(貿易戦争):10月中旬に米為替報告書が発表され中国と日本は為替操作国には認定されず、為替監視国リストに掲載されたままとなりました。一方で10/7に中国人民銀行が預金準備率を引き下げ、中国人民元安への警戒も高まり、両国は貿易戦争から通貨戦争へ突入しました。中国への圧力が対日貿易不均衡是正へと日本にも飛び火する懸念は高く、いずれも根強いドル売り要因となっています。

一方で米株を中心とした世界同時株安の様相を呈し(日経平均は米株以上の10%強下落)かつサウジアラビア等地政学リスク回避からの避難通貨である円が買われてもドル円は113円台から1%程度の下落でむしろ111円半ばでは底堅い動きをしています。上記1,2,3,4よりドルの上値は重たいもののドルの下値も限定的と予想します。ドルの上値を追うとすれば中間選挙での上下両院で共和党が過半数維持、下値リスクは米10年債利回りが節目の3%を下割れ、更なる長期金利低下のケースが想定されます。直近、ドル円と日米金利差(米10年債利回り)の相関は強くなっており、米10年債利回りの動きを見ながら(金利上昇→ドル買い、金利低下→ドル売り)短期売買をすることを推奨します。

以上から年初来予想してきた「中長期的(年内)には米景気堅調、日米金利差拡大からドル高円安トレンドに回帰し110~115円レンジの円安を目指す展開」に沿った動きが今後も継続目先はドルの上値が重たい展開を予想します。一方、下値も110円を割れてトレンドが変更となるような円高にはならないと予想します。 下値は9月安値110.52円が意識されます。

 

ユーロ相場予測

ユーロ・ドルは1.1300~1.1600コアレンジのなか、ユーロの上値が重く、下値更新する可能性も。英ポンドはBrexit関連で売り圧力の方が引き続き強い。

10月のユーロ・ドル相場は、イタリアの政治問題を材料に軟調に推移しましたイタリア政府の2019年予算案に対して欧州委員会が財政規律違反として拒否する観測からユーロ・ドルは月初の1.16ドル台(1.1628ドル:月間高値)から1.14ドル台までユーロが下落した後、英国のBrexit合意観測でユーロ・ドルは一旦1.16ドル台前半まで反発しました。しかし、月央に欧州委員会がイタリアに違反を通告したことでユーロ・ドルは再び1.16ドル台から1.14ドル半ばまで下落した。その後、欧州委員会の是正勧告に対して伊副首相が修正を拒否したことやECB(欧州中央銀行)の利上げ時期後ずれ観測が台頭したことでユーロは更に売られて、一時1.1336ドル(月間安値)と8月16日以来の安値を付けました。ユーロ・円も一時126.64円と8月21日以来の安値を示現しました。

当面、ユーロ・ドルは1.1300~1.1600ドルをコアレンジとしてユーロの上値が重く軟調に推移しそうです。ユーロは8月のトルコ危機の際に示現した1.1301ドルで底打ちし、ユーロ売りトレンドが反転したかにみえたものの、イタリア政治問題を中心にユーロの地合いは弱く、逆に1.1300を下割れする可能性が出てきました。

① イタリア予算案は今後11月中旬までに拒否している修正案が提出されるかどうか?修正案に対する見解は12月初旬まで行われる予定ですが事態が収束しなければ年内最後のEUサミット(12/13・14)で取り上げられるスケジュールとなっています。規律違反の場合、罰金が科されることも想定され、債務危機再燃への懸念からイタリア国債が売り込まれる(ユーロ売り)環境が続きそうです。イタリアに対する年内まで欧州政治不安が残ることが想定され、ユーロ売りの大きな要因です。

② 欧州の景気後退懸念は米国よりも大きく、現時点で来年夏場以降の利上げが後退している状況です。今後のドラギECB総裁等EU高官発言に注目が集まるもののユーロ売りの一因となっています。

③ 独メルケル首相が党首退任を表明しました。イタリアに続き独政局の先行き不透明感(党首選は12月)が当面ユーロ売りの要因になりそうです。

以上からユーロ・ドル及びユーロ・円ともに戻り売りの戦略がワークしそうです。ここ数年間のユーロ売買の指標としては①欧米の金利差と②イタリアとドイツの10年債金利差(拡大すればユーロ売り、縮小はユーロ買い)が2大指標であり、特に目先は②に注目。ドイツ10年債利回りが0.4~0.5%で低位安定推移しているのに対し、イタリアは政治問題により10年債は売られ、9月の2.8%から10月は3.5%(高値3.58%)まで金利は急上昇(伊・独の金利差拡大→10月のユーロ売りの大きな要因となりました)。今後も伊・独の長期金利差に着目して‘ユーロの戻り売り押し目で一部買い戻し’の短期売買が奏功しそうです。ユーロ・ドルの目先下値めどは8月のトルコ危機時に示現した1.1301ドルです。1.13ドルを下割れすると1.10ドルが意識されます。ユーロ・円の下値目途は8月の同時期に示現した124.91円です。

10月のポンド・ドル相場は9月に引き続きBrexitに関する離脱交渉不透明感からポンドの上値が重たいポンド安の展開となりました。月初はBrexitのEU離脱交渉をめぐる不透明感がポンドの上値を圧迫する要因となり、ポンド軟調地合いのなかポンド・ドルは1.28ドル台に押し戻され、ポンド・円は144円近辺まで弱含みました。その後、Brexit合意の楽観ムードでポンド・ドルは1.32ドル台、ポンド・円は149円台まで上昇したものの、離脱交渉の不透明感が続くなかポンドの上値は重く、月末にはポンド・ドルで1.26ドル台(1.2696ドル:8/16以来の安値)、ポンド・円は143円台まで押し戻されました。今後のポンドの先行きは「EU離脱交渉次第」であり、「合意なきEU離脱」の不透明感が継続する限りポンドの上値は重たく推移するでしょう。11月のEU首脳会議は延期され、最終期限は12月のEU首脳会議です。メイ首相に対する英議会内の反発も根強く、ユーロ同様ポンド・ドルで1.25~1.30ドル、ポンド・円で140~148円をコアレンジとして‘ポンドの戻り売り押し目買い’の足早な短期売買がワークすると予想します。

 

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円は底堅い動き、ユーロドルは一旦下げ止まりを予想

10月のドル円相場は、米長期金利上昇を受けて10月3日には年初来高値114.54円をつけたものの、その後は株式市場の急落に伴うリスクオフの流れから円高に推移し、一時111.36円まで下落しました。

今後の動きですが、ドル円は110円~115円の中で、リスクオフムードが強い時は110円~113円、リスクオフの流れが収まれば112円~115円での動きになると予想しています。今回株式市場の急落の割にドル円が下落しなかったのは米長期金利の先高感が根強いためと思われ、米長期金利の見通しに変化が出てこない限りは、ドル円は底堅く推移すると考えています。11月6日には米中間選挙が予定されており、過去の結果としては共和党政権下での中間選挙後はドル安円高となっていましたが、あくまで過去の結果であり、現在の米1人勝ちの現状を踏まえれば今回は中間選挙後に円高の流れになる可能性は低いと思います。

10月のユーロドルは、イタリアの財政懸念から弱い動きが続く中、独PMI・ユーロ圏PMIが大きく低下したことで下げ足を強め、一時1.1332ドルまで下落しました。今後の動きですが、ユーロ圏の景気見通しへの懸念が高まっており、経済指標の改善が見られるまではユーロドルの下落は続きそうです。ただ短期的には年初来安値1.1297ドル近くまで下げたこと、ドルインデックスも年初来高値付近まで上昇していることから、ユーロドルは一旦下げ止まり、11月は1.13ドル~1.15ドルでの相場になると予想しています。

 

バックナンバー

 

鶴のヒトコエの過去の記事を確認できます。

 

 

 
【ご注意】
  • 本ページは、投資判断にあたり参考となる情報の提供を目的としており、金融商品の売買を勧めるものではありません。投資の最終的な判断はお客様ご自身の責任でされるようお願いいたします。
  • 本ページでは、当社が信頼できると判断した情報を紹介しておりますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当サイトに基づいて被ったいかなるトラブルや損失・損害等についても、弊社及び情報提供元は一切責任を負うものではありません。