鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

109.50~112.50円をコアレンジとして方向感のない値幅の狭い取引継続。ドルの上値が重たい展開を予想。ドル高円安トレンド終焉の可能性あり。

8月のドル円相場は、4月に反転したドル高(ドル買い円売り)相場のトレンドが継続するなか、取引レンジがほぼ110~112円と非常に狭く、夏枯れの方向感のない取引に終始しました。

7/30-31の日銀政策決定会合で金融緩和の長期化を示すフォワードガイダンスが示されたこと(円安要因)で110円台から112円台(112.15円:月間高値)まで上昇し、スタートした8月のドル円相場は、すぐに米中や日米貿易摩擦の激化懸念からドルの上値が重くなり、その後月央(8/10)にはトルコ通貨危機へのリスク回避の円買いで110円台前半(110.11円)まで下落しました。トルコ情勢への警戒感が後退したことで一旦111円台まで反発したドル円はトランプ大統領がFRBの利上げ路線に不満を表明したことから一転ドル急落、心理的サポートラインである110円を一時的に割り込み109.84円(月間安値)まで下落しました。その後、日米中の株式市場が堅調に推移したことで111円台まで反発して月末を迎えました。

今後のドル円相場は、109.50~112.50をコアレンジとし、110.00~115.00円レンジ定着が不透明となりそうななか、方向感のない(トレンドレス)かつ価格変動性が低く、狭いレンジ取引が引き続き継続すると予想します。目先、ドルの上値は伸び悩み110^115円レンジが定着することなく終了し、レンジの下方シフトの可能性もあり得ます。

1、(米国経済):トランプ大統領の税制改革、好調な米経済指標、大規模な米企業による自社株買い、それらを反映した米株式市場の堅調さ(ナスダック、S&P500市場は過去最高値を連日更新)は引き続き大きなドル買い要因です。一方でトルコ情勢や中国経済への懸念、それらが起因する新興国・商品価格の下落はドル売り要因です。特にトルコ情勢等地政学的リスクが顕在化すれば避難通貨として円が買われやすい状況です。貿易戦争はドル売り円買い要因、貿易戦争緩和はドル買い円売り要因です。このように現状は「ドル買い円売り」「ドル売り円買い」の内容が顕在し、一方向にマーケットが動けない状況にあります。市場が織り込む来年度の米利上げ回数は1.2回程度まで減少(FRBの来年度予想は3回)しており、年内利上げを含めると来年までにあと5回→3回へ利上げ回数の織り込みが減少しています。インフレ加速の傾向が確認できるまでは米長期金利(10年債利回り)の上昇(ドル買い)は見込みづらく、引き続きドルの上値を重たくする要因となるでしょう。9月FOMCでの利上げはほぼ100%織り込まれているため相場への影響はありません。再度、本格的なドル買いトレンドを形成するには米10年債利回りの上昇(3%超への展開、現在2.85%程度)が必要です。そのような展開となれば来年までの利上げの織り込み度も上昇し、ドル買い要因となります。引き続き米インフレ関連指数と米10年債利回りの上下に注目です。

2、(グローバルポジションの傾き、本邦実需動向):グローバル投機筋の直近ポジション(シカゴIMM、8/21付け)は、ドル円が一旦110円割れを示現したことでは円売りポジションが縮小しました。グローバルなポジションの傾きは小さく、円売り圧力も弱まっている状況です。一方、8月に110円割れを示現したことで次回112円を超えて円安方向にドルが買われた局面では夏季休暇明けの本邦実需筋(輸出企業)のドル売りが出てくることが予想されます。本年度、多くの事業会社が設定する社内為替レート「110円」の水準は、来年3月末のフォワードレート(為替スワップ)を加味すると(▲180銭)と111.80円以上で確保できる水準です。7月示現の直近高値113.17円、1月示現の年初来高値113.50までは本邦実需筋のドル売り円買いが断続的に出てくることが予想されドルの上値を抑える要因となるでしょう。

3、(トルコ情勢):トルコリラ通貨危機によりトルコリラ円は8月中旬に20.06円から安値16.11円(史上最安値更新)まで1日で約20%近く暴落しました。これは、ドル円が111円から89円まで一夜にして急落したことに匹敵する衝撃的な下落です。その後トルコ政策当局より市中銀行支援措置やカタールの支援報道にて通貨危機の警戒感は一旦後退し、リラ円も18円台まで一旦戻しました。ただ、こうした措置は単なる延命措置であり、根本的な解決には至っていません。11%のインフレ率に対して低すぎる金利を引き上げることが最重要であり(中銀の独立性を認めること)、そして対米関係の改善が必要です。トルコ中銀の外貨準備は乏しく(1100億ドル)、民間の対外債務が多いなか、トルコリラの買い出動は現実的でなく、逆に本邦スワップ取引によるリラ買いポジションはまだまだ大きく、リラ円の上値(18^20円ゾーン)は非常に重たい状況です。今後状況改善が見えず、IMFの支援等最終手段に頼らざるを得なくなるような展開やアルゼンチン発の地政学的リスクがトルコリラにも伝播するようだと投機筋による更なる強烈なリラ売り攻勢があるかもしれません。節目の15円を下割れするとドル円も一時的に110円割れの急落となる可能性が高いです。そのような状況となれば今回のドル買い円売りトレンドは終焉を迎えることになるでしょう。

以上から年初来予想してきた「中長期的(年内)には米景気堅調、日米金利差拡大からドル高円安トレンドに回帰し110~115円レンジの円安を目指す展開」に7月及び8月は概ね沿った動きとなったものの、目先は年初来高値の113.50(1月示現)を上抜けていくというよりもドルの上値が重たく、貿易戦争が起因した通貨安政策(ドル安)や地政学的リスク回避の安全資産「円」に資金が集中(円買い)するようだと今回のドル高円安トレンドは7月示現した113.17円をピークとして終了する可能性もあるでしょう。目先のドル円相場は、方向感がなく一方向のマーケットを予想できない状況下、短期的には突発的なニュースに対応した短期売買が有効かもしれません。短期的な相場変動に振らされて累損が加算されている投資家は、むしろ「休むも相場」でマーケットから離れることも効果的かもしれません。
目先、上値の目処は7月高値の113.17円となるほか年初来高値の113.50円です。下値の目途は今年安値104.63円からのサポートラインが守られるかどうか、心理的サポートラインの110円、38.2%戻し(104.63-113.17)の109.91前後です。ここを明確に下抜けると今回のドル高円安トレンドは終了し、当面105円方向を目指した円高トレンドとなるでしょう。

ユーロ相場予測

ユーロ・ドルは1.1500~1.1750コアレンジのなか、ユーロの上値が重たい展開。しかし、ユーロ売りトレンド反転の可能性もある。ポンドは軟調地合い継続。

8月のユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.17ドル台から8/10のトルコショック時には1.13ドル台前半まで下落したものの、結局全戻しし1.17ドル台を回復しました。パニック的なユーロ売りとその巻き戻しの展開となりました。
当面、ユーロ・ドルは1.1500~1.1750ドルのユーロの頭が重たい展開が続きそうですが方向感がなく、下落するとしても緩やかな展開を予想します。ユーロ売りトレンドの反転の可能性もあります。

ユーロ・ドル相場は対米貿易摩擦懸念やイタリア政治リスクを背景に月初の1.17ドル台から下落基調となり、8/10のトルコ通貨危機で、欧州金融機関のトルコへの多額融資への警戒感から節目の1.15ドルをあっさりと下割れし(2017年7月以来)、1.1301ドル(月間安値)までパニック的に売られました。ユーロ円も124.91円まで下落しました。その後はトルコ通貨危機の緩和とユーロと連動性の高い人民元高(米中貿易摩擦の米圧力にて人民元安を露骨にできなくなった)の影響もあり、全戻しの1.17ドル台までユーロは買い戻されました。結局、パニック的なユーロ売りに便乗したユーロショートポジションも全て巻き戻される展開となり、現在はグローバルなユーロのポジションもほぼスクエアです。今後のユーロは①米欧の金融政策格差(ドルは利上げ、ユーロは緩和継続)②欧州金融機関のトルコ融資に対する警戒感(スペイン、フランス、イタリアの3か国で欧州全体の60%占める)③イタリアの政治リスク(来年度予算案が財政拡大路線となり、EUの目標に抵触する可能性が高まっています)を考えるとユーロの軟調な推移を予想するものの、チャート的には1.15ドル、1.16ドルを上抜け1.17台まで戻したことにより、簡単に下落する相場展開は考えづらい展開となっています。メインシナリオとしてはトレンドレス(方向感なし)、もしくは下落するとしても緩やかな展開となりそうです。もし、突発的なニュースで重要なチャートポイントである1.1750ドルを明確に超えてくると今回のユーロ売りトレンドは終焉を迎え、ユーロ買いのトレンド転換となる可能性が高いです。

8月のポンド・ドル相場は「ハード・ブレクジット(強硬離脱)」の思惑から軟調に推移し、ポンド・ドルで月初の1.30ドル台から一時1.26ドル台まで売られ昨年6月以来の安値を更新しました。 ポンド・円では145円台から一時昨年の8月以来となる140円割れを示現しました。しかし、月末にかけEU主席交渉官が「ソフト・ブレクジット」を表明したことから、一転ポンドは買い戻され、ポンド・ドルで1.30ドル台、ポンド・円で145円近くまでポンドは上昇しました。依然としてポンドは、英国のEU離脱交渉の行方次第となり、「ハード・ブレクジット」懸念が根強くポンド売り圧力を強めていくことを予想します。ただ、最終的にはメイ首相が目指している妥協的なブレクジット路線となると思われるが目先は両思惑で売り買いが混在する方向感がない値動きが続きそうです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円、ユーロドルともレンジ相場を予想も、新興国の通貨危機には注意

8月のドル円相場は、米中貿易摩擦やトルコリラ急落でのリスクオフ、トランプ米大統領のFRBへの利上げ批判発言など悪材料が重なったことから21日には一時110円を割れる場面がありました。しかしその後は、米経済指標の好結果もあって値を戻し、現在は111円近辺での動きとなっています。

今後のドル円相場ですが、8月にドル円の底堅さを確認したことから、7月高値113.16円を試しにいく展開を予想しています。ただドル円の今年の高値が1月につけた113.38円であることや、米インフレ率は低く2019年中の利上げ打ち止め感も出てきたことから、高値更新は難しいと考えています。結局、6月から続く110円~113円で方向感のない動きが続く可能性が高いと思います。

8月のユーロドルは、トルコリラ急落のリスクオフ相場の際、欧州銀行のトルコ関連資産が多いことが懸念され、これまでのレンジの下限1.15ドルを割れると一時1.1297ドルまで売り込まれました。しかしその後は、トルコリラの相場が一旦落ち着いたことや、近い将来の米利上げ打ち止め感が出てきたことで、一時1.17ドル台前半まで上昇しました。今後の動きですが、マーケットの米利上げ見通しに変化が出てきたことからユーロドルは底堅い動きが予想されるものの、トルコリラへの懸念も残るためここからの上値追いも難しいと思われ、そのため1.15ドル~1.18ドルで次の材料待ちの相場が続くと考えています。

ドル円、ユーロドルとも目先レンジ相場を予想していますが、8月30日にはアルゼンチンペソの急落から新興国通貨が売られており、さらなる新興国通貨下落をきっかけにリスクオフ相場が始まる可能性もあり、新興国通貨の動向には注意が必要でしょう。

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