鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

110.00~113.50円をコアレンジとして110~115円レンジ定着のための値固め局面。ドルの上値が重たい展開を予想。

7月のドル円相場は、4月に反転したドル高(ドル買い円売り)相場のトレンドが継続する中、取引レンジが更に上方シフトし110~113円台と110円超の円安レンジ展開となった。

月初110円台でスタートしたドル円相場は、5日110.27円(月間安値)までドルが売られる局面はあったものの、その後はパウエルFRB議長が漸進的な利上げ継続の方針と今年あと2回の追加利上げを示唆したことで、日米金利差拡大を背景に全面ドルが買われ19日には113.17円(月間高値)と1月9日以来の高値を更新しました。しかし、トランプ大統領がFRBの利上げ路線や現状水準のドル高(EUや中国の為替政策)に懸念を表明したことからドルは反落しました。月末近くに110円台半ばまで(110.56円)下落しました。月末の日銀政策決定会合(30-31日)で超金融緩和からの出口戦略(円金利上昇→ドル売り円買い)が示唆される可能性も浮上し、ドルの上値は重く、111円台前半で月末を迎えました。

今後のドル円相場は、110.00~113.50をコアレンジとし、110.00~115.00円レンジ定着のための値固め局面と予想します。目先はややドルの上値が重たい展開が続くことを予想します。

1、(米国経済):日米の金融政策の方向性の違い(米国:今年あと2回利上げ(9月、12月)来年3回の利上げ予想、日本:0金利政策継続)からファンダメンタルズ的にはドル堅調地合いが続くでしょう。7/27に発表された米4-6月期GDP速報値が約4年ぶりの高水準となったことや第2Qの米企業決算も概ね全業種プラス成長と、まず第1に米国経済は強くトランプ大統領による大規模減税効果を受け、米株式市場の堅調地合いはドル円をサポートする大きなドル買い材料(ドル買い円売り)となり続けるでしょう。→ドル買い材料

2、(グローバルポジションの傾き):グローバル投機筋の直近ポジション(シカゴIMM、7/24付け)は、ドル円は円売りポジションがトランプ大統領就任ドル買い局面ピーク時のほぼ半分くらいの量がこの1か月で積みあがっており、円売り圧力は高まっています。概ねチャートポイントの111.50以上でドル売り円買いしたポジションの積み上げのため、目先は112^113円台はポジション解消のドル売りが出やすい環境から、ドルの上値を重くする要因となるでしょう。また心理的抵抗ラインの110円を下回るとロスカット発動によるドル売り円買いが一時的に出やすい環境でもあります。一方で31日の日銀政策決定会合で「政策変更なし」、無風の結果となったことから、今後も日銀調整(利上げ)の思惑は根強く残るものの、目先はドル買い円売りの動きが再開されそうです。→ドル買い材料

3、(米貿易摩擦):米国による対中関税約500億ドル(25%)のうち、約340億ドル部分を7/6に発動され、残りの約160億ドル分を後日公表する予定であり、かつ、2000億ドル相当(10%)への追加関税も秋頃予定されています。同関税措置を巡った交渉は長期的なものとなりそうであり(貿易戦争)、かつ直近の中国元安(ドル高)についてもトランプ大統領から牽制発言もあり(通貨戦争)、今後もその都度、リスクオフ(ドル売り)からドル円の上値を重くする材料となるでしょう。一方、日米通商協議は当初の6月開催から7月後半に延期されていましたが8/9に行う方向で最終調整に入っています。トランプ政権は日米貿易不均衡是正への対応策として、為替相場の調整(ドル安円高)を挙げています。当面これらの貿易戦争が通貨戦争に拡大する可能性が高まっており、引き続きドルの上値を重くする要因となりそうです。→ドル売り材料

以上から年初来予想してきた「中長期的(年内)には米景気堅調、日米金利差拡大からドル高円安トレンドに回帰し110~115円レンジの円安を目指す展開」に7月は概ね沿った動きとなったものの目先は年初来高値の113.50を上抜けていくというよりもドルの上値が重たく、しばらくは110~113.50円レンジ内で110円超のレンジ相場を形成するための値固め局面とのなる可能性が高いでしょう。短期的には111.50円前後にあった125円からのトレンドラインを上方突破し、大きな三角持ち合いを上抜けしたとみられていたものの、目先失速した結果となり、7/19高値113.17から110円半ばまで比較的大きく落ちているので短期的には頭打ちの可能性が高いです。
目先、上値の目処は7月高値の113.17円となるほか年初来高値の113.50円です。下値の目途は今年安値104.63円からのサポートラインが守られるかどうか、現状110.75円前後と7月安値110.27円です。そして心理的サポートの110円、38.2%戻し(104.63-113.17)の109.91前後です。ここを下抜けると今回のドル高円安トレンドは終了し、当面105円方向を目指した円高トレンドとなるでしょう。

ユーロ相場予測

ユーロ・ドルは1.1500~1.1850ドルの狭いコアレンジのなか、ユーロの上値が重たい展開。ポンドもハードBrexit懸念が強く軟調地合い継続。

7月のユーロ・ドル相場は米欧金融政策の乖離(米:利上げ、欧:来年9月まで利上げなし)をベースにユーロは引き続き軟調地合いの展開が継続、1.15台後半から1.17台後半の狭いレンジ取引に終始しました。
当面、ユーロ・ドルは1.1500~1.1850ドルのユーロの頭が重たい展開が続きそうです。しかし、ユーロ・ドルで節目の1.1500ドルを下抜けてユーロが更に売られる可能性も遠のきました。

ユーロは米欧金融政策の乖離や米欧貿易摩擦の激化懸念がユーロ売り材料となっています。トランプ大統領とユンケル欧州委員長の会談が米欧貿易摩擦を一旦緩和したものの、自動車関税が決着しなかったことで、依然ユーロの上値を重くしています。一方、トランプ大統領によるユーロ安(通貨戦争)懸念発言もあり、心理的サポートラインである節目の1.1500ドルも固そうです。グローバルな投機筋の直近ユーロポジションは相変わらずスクエアと持ち高の傾きはなく、当面は狭いレンジ取引に終始しそうです。ただユーロ売りトレンドに変更はないことから‘ユーロ安牽制発言’や来年9月前の‘ユーロ金利引き締め’の思惑がでてユーロが買われた1.1750ドル以上はユーロの戻り売りを丁寧に実行し、1.15ドル台で一部買い戻す短期取引がワークしそうです。ユーロ・ドルで6月に示現した1.1840ドルを超えてユーロが買われる可能性は低いでしょう。 仮に節目の1.1500ドルを下割れしたらチャート的には2017年高安の50%押しが1.1448ドルに位置しており、当面の下値の目途となります。

7月の英ポンド・ドル相場はポンド軟調地合いが引き続き継続しました。月初メイ政権の2人の閣僚(デービス離脱相、ジョンソン外相)が辞任したことを受けてポンドドルは1.33ドル後半(月間高値:1.3363ドル)から1.31ドル台まで下落しました。その後もBrexitを巡る懸念や低調な英CPIを材料にポンドは売られ、一時1.2958ドル(月間安値)まで下落し年初来安値を更新しました。当面EU離脱交渉を巡る不透明感や警戒感からポンドの上値は限定的であり、更なる年初来安値を更新する可能性が高いでしょう。8/2のBOE金融政策委員会で政策金利の引き上げ(利上げ)が織り込まれていますが(0.5%→0.75%)、そこで素直にポンドが買われた場合は絶好のポンド戻り売り局面となりそうです。メイ首相のソフトBrexit方針案はEU交渉官から拒否する発言が出ており、メイ政権は強硬離脱派からも新EU派からも批判を浴びています。追加利上げのポンド買いよりもEU離脱交渉を巡る先行き不透明感の方がマーケットインパクトは強く当面のポンドは軟調地合いを継続するでしょう。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円、ユーロドルとも引き続き狭いレンジでの小動きを予想

7月のドル円相場は、6日の米国の対中関税発動後は堅調な推移となり、5月高値111.39円を上抜けすると113.16円まで上げ幅を広げました。しかしその後、トランプ大統領が為替に言及したことや7月31日の日銀政策決定会合で政策の調整が行われるのではないかとの思惑から110.58円まで下落、現在は日銀政策決定会合で政策に大きな変化が見られなかったため、若干値を戻して111円台前半での動きとなっています。

8月のドル円相場ですが、上値を抑える要因となっていた日銀政策決定会合が終了したことで、まずは7月高値113.16円を試しにいく可能性が高いと考えています。しかしドル円の今年の高値が1月につけた113.38円であることや米国の保護主義的な貿易政策を考えると、高値更新は難しいのではないかと思います。一方、下値も米経済1人勝ちの状況を考えると堅そうで、結局上にも下にも動きづらく、110円~113円を中心としたレンジ相場が続くと予想しています。

7月のユーロドルは、1.157ドル~1.179ドルと高安の差がわずか220PIPSの狭いレンジとなり、2016年9月以来の値動きに乏しい月となりました。今後の動きですが、ECBは来年夏まで利上げしない方針であるのに対し、FRBは来年夏までに4回の利上げが予想されていることから、将来的には1.15ドル割れを予想しています。しかし目先に関して言えば、11月6日に米中間選挙を控えてトランプ大統領のドル高牽制の動きが強まってきていることもあり、当面は1.15ドル~1.18ドルでの小動きになると考えています。

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