鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

107~112円をコアレンジとして110~115円レンジへ上方シフトする過程の値固め局面。 ’バイオンディップ(ドルの押し目買い)’の戦略を推奨

5月のドル円相場は、昨年12月以降のドル売り相場(114.736→104.56)から遂に4月に反転したドル高(ドル買い円売り)相場の流れを引き継ぎ、ドルがさらに反発、節目の110円を上抜けて、21日には1月以来の高値111.40円までドルは上昇しました。

月初109円台でスタートしたドル円相場は、米貿易戦争懸念や北朝鮮の地政学的リスクの後退により、主要通貨に対するドル全面高の地合いを受け、2日(110.04円)と10日(110.02円)に一時110円台を上抜けました。一旦、節目の110円台を付けたことで達成感もあり一時的には108円台(108.65円)までドルが売られる局面も見られたものの、その後もドル高の流れは継続し、NY株や米長期金利の上昇を背景にドル買いが強まり、ドルは更なる上値を試す展開となりました。21日には1月以来の高値となる111.40円(月間高値)を示現しました。その後は、米中通商協議や米朝首脳会談に対する先行き不透明感が広まったことから、一転リスクオフのドル売り展開となり、110円を割れて109円台までドルは下落、24日にトランプ大統領が米朝首脳会談中止を発表すると108.96円まで値を下げ、29日米中貿易戦争に対する懸念が高まった事が更にリスクオフに繋がり、ドル円は108.11円(月間安値)まで下落し、4/23日以来の安値を更新しました。

今後のドル円相場は、107.00~112.00をコアレンジとし、夏場以降の110.00~115.00レンジに上方シフトするまでのドル買いトレンドの値固め局面と予想します。3月末からのドル上昇トレンドは継続し、一旦は値固めレンジ相場に膠着しそうであるものの、再びドルの上値を試す可能性もあるでしょう。

1、(米国状況):6月12,13の米FOMCでの0.25%利上げは現時点で100%織り込まれていることから、これは材料視されないでしょう。一方でドル円相場と相関が高い米10年債金利は5月中旬に2011年以来の3.10%を示現するなど111円台まで上昇したドル高相場を牽引したものの、その後は3%台を維持できずに上昇幅を縮め目先は調整リスクが高まっています(一時ドル円が108円台前半まで売られる局面で2.76%まで金利低下)。今後も米インフレ関連指標に着目し、強めの数値が発表されれば米10年債金利上昇に伴うドル買い、弱めの結果となれば米長期金利低下が進みドル上昇の重しとなる可能性が高いです。ただ、最近の米経済指標は総じて堅調推移していることから強めの指数が発表となればFRBの利上げペースが早まるとの観測が高まり、日米金利差拡大からドルが買われる日米のファンダメンタルズ構造(ドル買い円売り)には変化はありません。

2、(グローバルポジションの傾き):グローバル投機筋の直近ポジション(シカゴIMM、5/22付け)は、依然ドル円はほぼスクエア(ポジションの傾きはなし)に近くポジションの傾きはありません。一方で主要通貨ではユーロの買い持ちが相変わらず高水準(22日時点でピーク時の2/3くらいの買い持ちポジションが維持されている)であり、5月ユーロ相場もイタリア・スペインの政局不安からユーロ下落(特に対ドルで)は加速しており、今後更なるストップロスを巻き込んだユーロ売りドル買いが継続する場合は、ドル円もドル買いにより上方に引っ張られる可能性が高いです。ただ、ユーロ・円の下落が大きい場合(円高)はドル円の上値も限定的でしょう。ユーロ政局リスクと米中貿易戦争に対する懸念が強まれば、リスクオフから質への逃避、いわゆる円やスイスフランへの買戻しが強くなる傾向が高く、逆に円高ドル安を牽引する可能性もあります。

3、(本邦需給):本邦輸出筋は5月の110~111円台の円安局面で順調に輸出予約(ドル売り)をこなしたのに対し、輸入筋は3月末からの急ピッチなドル上昇により輸入予約が遅れていた状況下、110円台以上の円安局面でもやむなく輸入予約のドル買いを余儀なくされ、ドル高円安の牽引役を担いました。今後、輸出筋は一旦110~111円台もしくは更なる円安局面までは様子を見る姿勢に対し、輸入筋も110円以上の円安を追いかけてドル買いすることはしないでしょう。年金資金は、これまでどおり110円以上のドルの上値を追ってドル買いをすることは考えにくく、ドルが落ちたドルの押目(107~108円台)では、継続的・断続的なドル買いを行う行動が予想され、ドルの押目ではサポート役となり続けるでしょう。
本邦需給面では引き続き「バイオンディップ(ドルの押目買い)」の相場環境となっており、110円以上の上値を押さえる要因はないものの110円以上の円安を追いかけてドルを買い上がる要因もありません。

4、(北朝鮮地政学的リスク):トランプ大統領により、6/12開催予定の米朝首脳会談中止が発表されましたが、ここにきて予定どおり行われるとの機運が高まっています。本イベントに関しては完全にトランプ大統領ペースとなっており、韓国大統領の参加も検討されているようで、米朝もしくは米南北いずれにせよ実現すれば、再びリスクオンの地合いとなり、ドル円は買われるでしょう。

以上から年初来予想してきた中長期的(年内)には米景気堅調、日米金利差拡大からドル高円安トレンドに回帰し110~115円レンジの円安を目指す展開により近づきつつあるものの、やや材料出尽くし感もあり、ボラティリティ(価格の変動率)も低水準域内での推移でなかなか上昇の兆しも見えてこないことから、しばらくは狭いレンジ内での膠着相場になる可能性が高いでしょう。当面はまだ105~110円レンジから110~115円レンジに上方シフトするまでの過渡期が続きそうです。5月高値である111.40を超えるドル円相場が見られるとすれば、米朝首脳会談の実現と、良好な米経済指標の発表およびユーロ・ドルがロスカットを巻き込むようなユーロ急落・ドル買い(ユーロ・ドルで1.15ドル割れ大幅下落)が揃ってくれば十分示現する可能性が高いです。引き続き押し目買いでドルを着実に買って110円以上で一部ドルの戻り売りを繰り返す回転売買が効果的と推奨します。

目先、上値の目処は5/2高値の110.04円です。21日高値の111.40円。その上は節目の112.00円となり、上抜けると1/8の年初来高値の110.483が目途となります。下値の目途は5/29安値の108.11となりますが、108円を下抜けると107円前半まで下値余地が拡大する可能性があります。ただ107~108円ゾーンは底堅いと思料します。

ユーロ相場予測

ユーロは南欧政局リスクから更なるユーロ下落の展開。
1.15ドル割れて急落展開を予想。ポンドも戻り上値が重たく軟調相場を予想。

5月のユーロ・ドル相場は足元の欧州経済減速に加え、イタリア・スペインの政治リスクが再燃、ユーロは大幅に下落し、ユーロ・ドルは節目の1.20を割れるとユーロ売りが加速、29日には一時昨年7月以来の1.1511ドルまでユーロは売られました。一方、ユーロ・円も節目の125円を一時割り込みました。
当面、ユーロは下値を模索し、ユーロ・ドルで節目の1.1500ドルを下抜け更なる大幅下落の可能性が高いです。

直近の経済指標の回復ペースが減速していることに加え、イタリア・スペインの地政学的リスクも加わったことで、6月14日ECB理事会での金利・QE(量的緩和)ネット購入に係るフォワードガイダンス変更(超金融緩和からの脱却)の可能性は更に低下し、ユーロの上値は当面重たいでしょう。足元は、ユーロ下落(売り)による節目の1.20ドルを割れて一時1.15ドル台前半までユーロが大幅下落しているものの、グローバルにユーロの買い持ちポジションはいまだ高水準に積み上がっている状況です(IMM通貨先物ポジション)。今後、イタリア(大統領と連立政権対立、9~10月解散総選挙の可能性→EU離脱の可能性)・スペイン(最大野党がラホイ首相への不信任決議案を提出)政局懸念が更に台頭しユーロ売りが加速すれば、節目の1.15ドルを下抜けてストップロスの状況次第では一旦1.13ドル前後まで急激に下げる可能性が高いです。」1.15以下も断続的にバリアオプションが観測されており、ユーロ売りのクライマックスを迎えることになれば1.13ドルあたりまでユーロが一気に下落する可能性は高いです。ユーロ売り持ちをキープした短期売買が一番効果的であると考えます。バリアオプションを利用して、防戦買いで一旦ヒットする直前で買い戻される局面が出てくると(5月相場の局面ではユーロ・ドルが1.1511で止まり、1.1500のバリアオプションをヒットさせたくない参加者によるユーロ防戦買いからユーロは1.16台まで上昇)そこは絶好のユーロ売りです。

ユーロ・円も130円を挟んだ狭いレンジ相場が月間を通して続いていたものの、月末にかけユーロ売り円高が急加速、一気に5円以上下落して30日には125円割れ(124.98円)を示現しました。やりすぎ感はあるもののユーロがセリングクライマックスを迎えれば更なるユーロ・円の下落は十分考えられます。その場合はドル円も円高に牽引すると思われます。

5月の英ポンド・ドル相場は当面のポンド利上げが遠のいたことから月間を通してポンド軟調地合となりポンドは大きく下落しました。利上げの可能性を残した注目の10日英MPC(英中銀政策委員会)は金利据え置き(7対2)決定、GDP成長率は下方修正、インフレ予想も2018年、2019年、2020年それぞれ下方修正され、市場の予想する年内の利上げ確率はほぼゼロとなりました。直前まで利上げ期待からポンドは買われていたもののそれが裏切られた格好となり、ポンドの下げが加速しました。月初1ポンド=1.37ドルレベルから月末にかけ1.32ドルレベルまでポンドは軟調に推移しました。当面のポンド・ドル相場は更に軟調に推移しそうです。経済指標が弱めとなりハード・Brexitの思惑が台頭してくると節目の1.30ドル割れが見えてきます。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円は108円~111円のレンジ相場、ユーロドルは下げ止まりを予想

5月のドル円相場は、米長期金利が大きく上昇し3.1%を突破したことや米中貿易戦争懸念が後退したことで、21日には111.39円まで上昇しました。しかしその後は、米中通商協議の行方に不透明感が増したことやイタリアの政局不安によりリスクオフ姿勢が強まり、一時108.11円まで下げる場面がありました。

6月のドル円相場ですが、今後105円~108円を中心とした相場になるのか、108円~111円を中心とした相場になるのかを分ける重要な月になりそうです。他国に比べ米経済の好調が際立っていること、米金利も他国に比べて高いことから、個人的には108円~111円の相場になる可能性が高いと考えています。イタリアの政局不安によるリスクオフから一時的に108円を割れることがあるかもしれませんが、米経済が他国より好調である現状が変わらない限りはすぐに値を戻すでしょう。6月の米FOMCではFOMCメンバーによる政策金利見通しが発表されるため、今後のドル円相場を占う上で特に注目したいところです。

5月のユーロドルは、ユーロ圏の経済指標が引き続き悪化してきていることに加え、イタリアの政局不安が重なったことからユーロ売りが進み、一時1.15ドル台前半まで下げました。今後の展開ですが、ユーロドルが1.20ドル達成後につけた安値がこれまで昨年11月の1.1554ドルであり、すでにこの水準まで下落したことから、一旦は下げ止まると考えています。6月は1.15ドル~1.18ドルでの動きになると予想していますが、1.15ドルを割れた場合は1.12ドルまで下げる可能性が高く、1.15ドル割れには注意が必要でしょう。

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