鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

ドル円予想レンジ107~111円をコアレンジとしたドルの上値が重たくドルの下値を模索する展開。107円を割れると105円までの円高が視野

1月のドル円相場はドルが主要通貨に対して前面安、節目の110円を割れて108円台前半まで大きく下落しました。月初、世界的な株高を背景に113円台(113.309、月間高値)を窺う展開も見られましたが、その後は①日銀のテーパリング観測(0金利緩和政策終了観測→円金利高→円高)②中国の米国債購入停止報道(ドル売り)③12月ECB理事会でのフォワードガイダンス議論(早期量的緩和終了観測→ユーロ買いドル売り)が契機となり、一転ドル売りの展開となりました。24日には米財務長官のドル安容認発言によりドルが売られ節目の110円を割り込み、黒田日銀総裁のインフレ対する言及が日銀の緩和縮小(円高要因)と市場に受け止められドル売りが加速、昨年の9月11日以来の安値となる108.285(月間安値)円までドル円は急落しました。

今後のドル円相場は、ドルの戻り上値が鈍く昨年9月~11月のドル上昇相場(107.32円→114.736までドル円上昇)一巡後の調整相場(ドル売り円高)が当面続きそうです。107~111円コアレンジとしてドルの底値を窺う展開を予想します。

1.米暫定予算可決による不透明感払拭、
2.黒田日銀総裁による早期出口観測火消し発言、トランプ大統領によるドル高発言、
3.米景気堅調による日米金利差拡大(米10年債上昇、2.7%超え)、
4.堅調な米株式相場、
5.本邦機関投資家(年金)の110円台からの断続的なドル押目買いがある中でのドル下落、
これらをこなした一連の根強いドル売りはドル軟調地合の強さを再確認する展開となっています。

また、1月以降ユーロ高観測を筆頭に英ポンド等主要通貨だけでなく資源国・新興国通貨に対してもドル安の地合(ドル指数低下)がドル円相場の下落にも拍車をかけています。 ドル円は110円を割り込んだことで調整地合が一段と強くなり、昨年来のレンジ下限である107円台に留まるかどうかが目先の焦点です。107円を割り込むと105円程度までの円高ドル安を想定しなければならないでしょう。

グローバル投機筋の直近ポジション(シカゴIMM、1/23)は約140億ドル強相当の円の売り持ちと2012年以降でみても依然高水準(最大売り持ちの半分程度)の円売りドル買いポジションとなっており、前週(1/16)比円の売り持ちは増加しました。これはドル円が110円台に下落していく過程でも円の売り持ち(ドル買い)は積みあがったことを示しており、投機筋はドルが下落する過程でドルを買い下がっています。108円台を割れてくるようだと投機筋のロスカットによるポジション解消のドル売り(ドル安円高)が加速する可能性は高く、逆に110~112円台の戻りも一旦ポジション解消の動き(ドル売り)から鈍くなることが予想されます。直近、108.50円割れまで急激な円高ドル安の展開となったが依然ロスカット発動連鎖によるSellingクライマックスとはなっていない状況です。

②本邦大企業製造業の2017年度下期のドル円想定為替レートは109.66円(平均値、12月公表)と、足元において同水準を超える円高水準となっており、戻りの110円以上は3月末までの輸出予約による大量のドル売りが想定され、ドルの上値を重たくする一要因となるでしょう(ドル売り円買い)。

③円高トレンドが続くと業績懸念から日本株の上値が重くなることが想定され、海外投資家の日本株の売買動向をみても1月第2週以降は売りこしに転じています。昨年9月以降のドル高円安ラリーの過程で(日経平均20000円超え)、海外投資家の日本株買い(手持ちのドルを売って日本株手当ての円を買う=ドル売り円買い)はドル高トレンドを意識して日本株を買うと同時にほぼ同額のドル買い円売りの為替ヘッジ取引を実施しました。今回の日本株の利食い売りでは、ヘッジはずしのドル売り円買いも同時に実施しており、更に円高傾向が続くと海外投資家の日本株売り=ドル売り円買いフローも断続的に出てくることが予想され、もう一段の円上昇リスクには警戒が必要です。

以上①②③の要因も含め、中長期的(年内)には米景気堅調、日米金利差拡大からドル高円安トレンドに回帰し115円以上の円安を目指す展開に変更はないものの、当面は、ユーロや英ポンド等主要通貨に対するドル安地合の継続の可能性が高く、ドルの戻り上値は重たくドルの下値を窺う展開を予想します。また、1月以降、ドル円相場と昨年来相関が高かった米長期債(10年債利回り)との連動性(米長期金利上昇=ドル買い円売り)は一旦損なわれ、今後3月のFOMCに向け米利上げ観測が高まる際も米長期金利上昇=ドル買い円売りとはならない可能性があります。逆に(米)景気拡大サイクル終盤に見られる米金利上昇=ドル安の逆相関の様相を呈するかもしれません。

このようにドルが再び上昇トレンドに転換するには、当面ドルの底値が固まる展開をこなす必要があり、少し時間がかかりそうです。

目先、下値の目処は昨年安値(9月)の107.32、107円の心理的サポートライン、そこを下抜けすると105円が意識されます。上値の目処は110円、そこを上抜けしても1月高値である113.309までドルは買われないでしょう。107円を下割れするとたとえ中長期的なドル高円安展開となっても上値は115円程度になる可能性が高いです。

ユーロ相場予測

ユーロ及び英ポンドともに対ドルでは底固い値動き。ユーロ及びポンドをロングポジションキープで回転売買推奨。両通貨ともに対円では狭いレンジの膠着相場を予想。

1月のユーロ・ドル相場は全般的なドル売りを背景にユーロ騰勢が強まり、大幅ユーロ上昇の展開となりました。月初、ユーロ圏経済見通し改善を見込んだ思わぬユーロ買いから4日には昨年のユーロ・ドルの高値1.2070ドル(8月示現)をあっさり上抜け、1.2089ドルまで上昇しました。その後もユーロ圏景気回復期待、主要通貨に対するドル全面安、11日の12月ECB議事要旨にて「2018年初めからフォワードガイダンスの変更を検討(緩和早期終了→ユーロ金利上昇→ユーロ買い)」、独連立協議暫定合意などのユーロ押上げを後押しする報道にてユーロ買いは断続的に継続、ユーロ・ドルは1.23ドル台まで買われました。25日ECB理事会後の記者会見にてドラギ総裁によるタカ派発言がユーロ買いを更に加速、ストップロスを断続的に巻き込み2014年12月以来の高値となる1.2538ドル(月間高値)までユーロは上伸しました。

当面、ユーロは将来のフォワードガイダンスの変更、ユーロ圏の経済見通し改善を見込んだユーロ買いが継続、ユーロ・ドル相場は1.2000~1.2500をコアレンジとしてユーロが底堅く推移する展開を予想します。更に、主要通貨に対して全面的なドル安の相場展開が続けば、ユーロ・ドル相場を押し上げしやすい材料にもなるでしょう。ただ一方でユーロ・ドルは昨年年初の1.05から1.25ドルまでこの1年間で急伸したため、1.25ドル以上のユーロ高に対してはECB当局者が牽制発言することが予想され、目先は上値も限定的と考えます。また、グローバルな投機筋のユーロ買い持ちポジションも直近(1/23)約300億ドル相当のユーロ買い持ちとかなり高水準に積み上がっています(2012年以降、最大ユーロ売り持ち、買い持ちポジションの約3/4水準)。ユーロの戻り上値は一旦利食いのユーロ売りが出やすいグローバルなポジション状況ともなっています。目先のユーロ・ドル相場は、ユーロの押目買い一部戻り売りでユーロ買い持ちをキープする回転売買が有効に機能しそうです。

一方、ユーロ・円相場はドル売りが起因したユーロ高(ユーロ買いドル売り)と円高(ドル売り円買い)が拮抗し、1月は概ね135円を挟んだ狭いレンジ相場(高値136.31、安値133.09)に終始しました。最終的にはドル及びユーロ買い円売りの展開となり、ユーロ・円相場も円安展開を予想するものの当面は膠着相場に終始しそうであり、現在はやや蚊帳の外、魅力が薄れています。

1月の英ポンド・ドル相場はユーロ騰勢に英ポンドも連動、大幅なドル安からポンドは大幅に上昇しました。月初1ポンド=1.35ドルレベルでスタートしたポンド・ドル相場は、ユーロ主導のドル売りやEU離脱交渉が「ソフトブレクジット」になる期待が浮上し、月間を通して対ドルで終始ポンド買いとなり、昨年高値の1.3657ドル(9月示現)を上抜けると更にポンド買いが加速、次の抵抗ラインであった一昨年の英国国民投票(Brexit、6/23)前の安値1.3836も上抜け1.40ドル台までポンドは急上昇しました。その後もポンドの騰勢は継続し1.4345(月間高値)ドルまでポンドは上昇しました。当面のポンド・ドル相場はドル安要因が継続する限り底固く推移しそうです。目先の焦点は1.40台が定着するかどうか試される展開を予想します。足元では「ソフトブレクジット」の期待がくすぶっており、ポンドの下値を支える材料となるでしょう。一方、英国はEUサミット(3/22.23)で通商協議の概要を提出する見通しで、与党保守党内での合意が必要となり、目先政治的不確実性が高まればポンド売りに転じる可能性もあります。1月以降、ポンド・ドルのボラティリティ(価格変動率)も急上昇し、値動きが激しいポンド本来の相場展開に戻ってきました。取引をする場合は小額のポンド買い持ちをベースに足早の回転売買を推奨します。

一方、英ポンド・円相場はユーロ・円相場同様、ポンド買いドル売りとドル売り円買いが拮抗、150~155円の膠着相場となっており、ポンド・円相場が160円を目指すには少し時期がかかると予想します。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

2月はドル安一服で調整相場を予想

1月のドル円相場は、日銀の超長期国債の買い入れ減額をきっかけに日本の金融緩和縮小が意識されたことに加え、米国の太陽光パネルへのセーフガード発動やムニューシン米財務長官の「弱いドルは貿易に望ましい」との発言から米通商リスクが再燃したことで、一時108.27円まで下げる場面がありました。

2月のドル円相場ですが、米通商リスクから円高ムードが漂っているものの、すでに昨年安値107.31円近くまで下げてきたことから、一旦は横ばいの動きになる可能性が高いと考えています。108円~110円を中心としたレンジを想定しています。今年はどこかの段階で日本の金融緩和縮小を材料に100円割れも視野に入ってくると予想していますが、現時点では大幅な円高は時期尚早だと思います。米長期金利が2.7%を超えてきており、市場の関心が米金利に向いてくれば、111円近くまで戻る場面もあると考えています。

ユーロドルは、12月のECB議事録の内容や1月ECB理事会後のドラギ総裁の会見を受けて、ユーロ圏の経済見通しに楽観的な見方が広がり、一時1.2536ドルまで上値を伸ばす場面があったものの、ドラギ総裁が「年内の利上げはほとんどありえない」と発言したことから下落し、現在は1.24ドルを挟んでの動きとなっています。今後の見通しですが、ユーロ圏経済の堅調さからユーロ高の流れは変わらないと考えています。ただ急上昇してきたことでユーロ高けん制発言も出始めてきていることから、当面は1.22ドル~1.26ドルで横ばいの動きになると予想しています。

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