鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

2018年ドル円予想レンジ105~120円、日米金利差拡大を背景とした緩やかなドル堅調地合。リスクは地政学的リスク(北朝鮮動向)

2017年のドル円相場はトランプ政権の不確実性を背景とした上下激しい値動きとなる年初の巷予想とは裏腹にドルの安値107.32(9月示現)~高値118.60(1月示現)、年間変動率は約9.6%と歴史的な低さ(変動相場制移行5番目の狭い値幅)に留まる狭いレンジ内の膠着相場となりました。年初118円台でスターとしたドル円相場はトランプ政策への不信感からドル高調整局面(ドル売り)となり、9月には北朝鮮の地政学的リスクもありドル売りが加速して107円台まで下落、その後米景気堅調地合に伴う米追加利上げ観測からドル買いとなり年末113円水準で終了しました。

現時点における私の2018年の予想レンジは105~120円です。ドル円相場は米国景気が堅調を保ち、現FOMC委員の中心予想3回の米利上げに対し、日本サイドはアベノミクス(株高・円安)継続に起因した日銀の超金融緩和政策も継続、日米金利差拡大からドルは買われ115~120円のレンジ圏内に上昇することを予想します。ただ、米インフレ兆候が出ないうちは米長期金利の上昇はあまり見込めず、ドル円の上昇トレンドは一本調子とはならないでしょう。年初からトランプ政策進展からドルが買われやすい展開となりそうであり、年間を通してドルの買い持ちを基本戦術として相場に臨むことを推奨します。年初のドル買い理由としては、以下3つが挙げられます。①税制改革法案成立→米長期金利(10年債)上昇に伴うドル買い。②「リパトリ減税」本格施行→米国外で得た利益を低い税率で米国に送還することが可能となり、米国送還のためのドル買い需要が急速に高まる。③トランプ大統領の一般教書演説(1/30)前にインフラ整備計画を発表する予定→国債の増発に繋がり米長期金利上昇に起因したドル買い。

元来、ドル円相場の値動きは常に日米金利差で説明されてきましたし、事実本邦0金利政策導入以降は、その展開で過去の値動きは推移してきました。金利差が拡大すればドル買い、金利差が縮小すればドル売りとなります。

1. 政策金利:米国は2018年3回の利上げが予想されていますが、これはあくまで現時点のメンバー予想中心値です。2月に新FRB議長が就任し、退任した副議長の後任はいまだ未定、更に現NY連銀総裁が2018年中旬に退任することが発表されています。FOMCで政策決定に最も影響力が高かった全3高官が2018年中に交代することになっています。よって、3回が確定されているわけではありません。金利先物市場から算出する2018年の利上げ織り込み回数は現時点で約1.8回であり、FOMCメンバー予想通りの3回を市場が織り込んでくると現時点のドル円水準よりも更なるドル買い要因となります。この「回数織り込み度合い」が2018年のドル円売買の大きな一要因となることから、織り込み度合いを見ながらその都度、戦略の調整が必要となります。一方、本邦サイドは11月の自公連立与党大勝により、2018年9月の自民党総裁選も安倍再選の可能性が高まり、4月の日銀総裁指名も黒田氏再任を含めハト派路線が踏襲されることが確実となりました。アベノミクス(株高・円安→本邦年金を主体とした機関投資家はドルの押目買いで110円近辺の強力なサポーターとなり続ける)継続により日銀の0金利政策も継続が予想され、日米金利差拡大から年間を通してドル買い要因が勝ることが予想されます。

2. 長期金利(10年債)動向:最近のドル円相場の値動きは米国の長期金利10年債との相関が高まっており(0.8程度の正相関)、2018年度も本邦0金利政策が継続すると仮定すれば、この構図に変化はなさそうです。要は米10年債利回りが上昇すればドル買い円売り、低下すればドル売り円買いということです。しかし、ここ最近は米国が追加利上げしても米長期金利が上昇しないためドル買いとならず、115円以上の円安とならない状況となっています(米10年債利回りはトランプ大統領勝利の暴騰で2016年12月に2.64%の戻り高値をつけたものの、その後は9月に2%割れ寸前まで低下し、年末2.4~2.5%水準まで戻している状況)。その理由としては、市場は米インフレ率があまり上がらないと見ているからです。実際に日米欧ともに物価目標である2%を下回り、日欧は2020年までのインフレ見通しですら2%に届きそうにない状況です。2018年は米経済指標の中でも雇用統計の「平均時給」やCPI等インフレ関連の指標に注目し、インフレ関連指数の上昇→米10年債利回り上昇→「ドル買い円売り」、その逆は「ドル売り円買い」で臨みたいところです。一方、本邦サイド黒田日銀総裁からは、「リバーサル・レート(金融引き締め)」の発言も最近散見されます。長期的な超金融緩和政策の弊害が意識されはじめ、2018年度後半に日本の10年債の金利を現在の0%(実質0.1%まで許容)から0.2%程度の金利上昇を容認することも想定されます。もしこのアナウンスがあれば、「ドル売り円買い」に大きく傾くことから、大前提として120円程度の円安局面にあることが絶対条件と思料します。

3. ドル堅調地合のリスク要因:地政学的リスク。2018年も北朝鮮関連の不確実性は継続するでしょう。①弾道ミサイル発射、②核実験、③軍事衝突、いずれもグローバルなリスクオフから、一旦ドル売り要因となるでしょう。特に③の米国による大規模軍事衝突となった場合は、流動性が薄い中、断続的なロスカット発動により短時間でドルが5円程度(グローバルのポジション次第では5円以上)急落する可能性が高いです。
しかし、いずれの場合もドルが売られて落ちたところはドル買いで臨みたいです。ドル円相場を形成する日米金利差拡大の構図が崩れなければ、絶好のドルの買い場と思料します。

このように2018年は緩やかなドル高円安基調を予想するものの、年を通して弱い米経済指標、米利上げ期待後退、北朝鮮問題、グローバルな投機筋の円売りポジション調整によって、度々ドルが売られる局面が出てくると想定します。このようなドルが売られた押目でドルを買ってドルロング(ドルの買い持ち)ポジションをキープしながら、ドルが上昇した局面で一部利食って回転を利かせる(ドルの押目買い一部戻り売り)、ドル円相場の緩やかな上昇軌道に乗って利潤を確保する戦略が一番効果的であると推奨します。特に2018年前半は、グローバルな景気拡大が緩やかに続く一方インフレ率の低迷で、各国中央銀行の金融引き締め速度も遅れる可能性が高くなります。これが為替市場の予想変動率(ボラティリティ)を下げる依然として大きな要因となり、2017年同様、為替変動が小さな膠着相場となる局面が随所に散見されるでしょう。

以上、あくまで現時点での2018年の為替予測ですが、これは年間を通した予想を的中させることを目的としたものではありません。上記予想をベースに想定外の突発的な追加事項等を加味して、予想された項目がそれぞれ時間軸や数値が変更となった場合は、その都度、戦略・戦術を見直していくことが必要となることを申し付けます。

ユーロ相場予測

ユーロ、英ポンドともに対円で上昇。対ドルでは拮抗した展開に。
ユーロ・円、ポンド・円で押目買い戻り売り戦略

2017年度のユーロ・ドル相場は、年初こそ2016年の英国(Brexit)に続く欧州政治リスクの顕在化(蘭・仏・独のユーロ離脱の可能性)からユーロは下落し、年間安値1ユーロ=1.0341ドル(1月)を示現したものの、4~9月にかけ欧州政治リスクの払拭と共に欧州経済の予想外の改善とECBのテーパリング(超金融緩和からの出口模索→資産縮小→金融引き締め・金利上昇)への転換で、ユーロは1.20台(年間高値1.2070ドル、8月)に急上昇し、2015年1月以降2年半以上長らく続いた1ユーロ=1.05~1.15ドルのレンジ相場を遂に上方ブレイクしました。

2018年のユーロ・ドル相場は今後もユーロが底固く推移しそうであり、「1ユーロ=1.15~1.25ドル」をコアレンジとして緩やかなユーロ上昇基調とみます。現在の金融緩和策である債券買取プログラムは9月まで減額されて延長されています。焦点は12月に上方修正された欧州景気が更に上方修正され、市場予想よりもECBが早めにタカ派転換となれば、ユーロ買いに拍車がかかる可能性も高いこと。一方、予想に反して景気回復が緩慢となれば、現金融緩和策が10月以降も延長される可能性もあり、その場合は「1.15~1.20ドル」の下方レンジ内に留まる可能性もあります。ユーロに関しては、現行延長された債券買取プログラムの購入額減少・期間変更(短縮・延長)に焦点をあてて、その都度戦略の調整をしていくことが求められます。ユーロは対米ドルよりも対円の方が上昇、上振れ余地は広がりそうです。超金融緩和継続必至の円に対して利上げしている米ドルと同様、テーパリングにより超金融緩和政策から脱却した(金融引き締めに方向転換した)ユーロとは金利差拡大から「ユーロ・円は140~145円」へ上方ブレイクすると予想します。

英ポンドはBrexit(EU離脱)へ向け、基本的には成長鈍化からポンド自体、売られやすい環境が続くと思われますが、2016年6月のBrexit(英国国民投票)以降、成長鈍化を早取りして売られすぎた分、12月の10年ぶりの英中銀による利上げなど、何らかのきかっけで一時的に反発する場面も2018年はまだまだ続くでしょう。Brexitまでまだ2年程度期間はあり、最終的にはハードBrexitでポンドは対米ドルやユーロに対して基調はベアとなると思われますが、2018年でみれば、ユーロ同様にポンドも対円の方が上昇余地がありそうです。ポンド・円は、利上げを始めたポンドに対し円は超金融緩和政策継続で、金利差拡大からBrexit(英国国民投票)前の水準である160円を目指すポンドが底固い展開となりそうです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

レパトリ減税から年前半はドル高、その後はドル安を予想

12月のドル円相場は、米利上げや米税制改革法案が上下両院で可決するなどの材料はあったものの値動きに乏しく、高値と安値の値幅が約2.3円と2014年8月以降で最も値幅の小さい月となりました。

今後のドル円相場ですが、米レパトリ減税から年前半はドル高に推移する可能性が高いと考えています。2005年のレパトリ減税の際はドル独歩高となり、ドル円は一時20円近く円安になりました。ただこの時は、前年10月から年始までに10円近く円高になっていたことに加え、相場全体が円安地合いでした。今回は事前に円高となっていないことから上げ幅もそれほど大きくならない可能性が高く、116円~118円程度までの上昇を予想しています。その後は日米の経済政策次第ですが、年後半には日本でも金融緩和縮小の話が出てくるのではないかと考えています。その場合は2017年にECBの金融緩和縮小期待から大幅にユーロ高が進んだように、ドル円は100円割れといったような大幅な円高も視野に入ってくると思います。

12月のユーロドルは、1.17ドル台~1.19ドル台で方向感に欠ける展開が続きました。今後の動きですが、こちらも年初は米レパトリ減税を材料にドル高になると予想しています。前回のレパトリ減税の年は1,600PIPS近くドル高が進みましたが、こちらも事前にドル安が進んでいたことが影響しており、直近のユーロドルが横ばい推移であることを踏まえると、1.15ドル程度までの下落にとどまるのではないかと考えています。その後は2017年に続き、ECBの金融緩和縮小を材料にユーロ高が続くと予想しています。ユーロ圏経済の好調さを確認しながら徐々に上昇していき、1.30ドルから最大で1.40ドル近くまで上昇すると予想しています。

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