鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

110.00~114.00円 ドルの上値が重たいレンジ相場。
中長期的観点からはドルの押目買い。

11月のドル円相場はドルが軟調に推移しました。月初6日には114.736円と3月15日以来の高値を更新したものの、その後は株安・米長期金利の低下を背景にドルが売られ、28日には北朝鮮弾道ミサイル発射事件で一時110.841円と9月15日以来の安値までドルは売り込まれましたが、米税制改革法案の進展により112円台までドルが戻して月末をむかえました。月初こそ10月のドル堅調地合を引き継ぎ114.736(月間高値)と久々にテクニカルポイントの114.50を上抜けしたものの、その後は米税制改革案にて上下両院が法人税減税の次期について異なる法案をまとめたことで今後の調整が難航するリスクが浮上、株安や米10年債金利の低下も相場の重しとなりドルは緩やかに下落しました。

22日のイエレンFRB議長講演にて、インフレ動向につきこれまでとは逆行するハト派トーンの発言をしたことから米10年債金利が更に低下し、感謝祭で流動性が薄い中ドルが売り込まれて9月以来の111円台前半を示現しました。28日に北朝鮮が9月15日以来の弾道ミサイルを発射したことにより、一時110.841(月間安値)までドルは売られたが米上院にて税制改革法案の票決ニュースにより、ドルは112円台まで回復しました。

今後のドル円相場は、ドル高円安トレンドが継続する中、神経質な110.00~114.00円のドルの上値が重たいレンジ相場で推移しそうです。リスクはグローバルな投機筋(IMM)の高水準な円売りポジションの巻き戻しと北朝鮮の地政学的リスクです。
米の堅調な経済指標を背景とした米金利上昇観測に対し、本邦アベノミクス継続(超金融緩和政策維持→株高・円安)による日米金利差拡大をベースとしたドル高円安トレンドは継続中です。しかし、目先12月は米税制改革法案の交渉やその結果がドルの上値を重くしそうです。今年の12月は減税法案を控え、通常の季節的ドル買い要因が剥落することがドルの上値を重くします。一方、グローバルな投機筋の円売り(ドル買い)ポジションはここ2~3年で最高水準に積み上がり、ドルの上値を押さえる要因となるだけでなく、ドルが下落した場合にポジションの巻き戻しで一時的にドルが大きく売り込まれる可能性も高いです。ただ、日米の金融政策スタンスに変更はないことから、ドルが売られた111円以下の局面では中長期的なポジション運営(2018年以降の115~120円レンジを目指した)として絶好のドルの拾い場(買い場)と推奨します。

① 米税制改革法案については、上院で可決され最終案が上院下院両院で可決されればその都度ドル買い要因となります。一方難航すれば一時的なドル売り要因です。さらに、実現成立が見えてくると米10年債金利が上昇することが予想されドル買い要因となります。短期的な取引の観点からは、ドル円相場と相関が高い米10年債利回りの金利動向を見ながらドルの回転売買を推奨します。11月は概ね2.30~2.40%の狭いレンジで推移したことからその上下をコアレンジとしてドル円の回転売買を推奨します。
減税の施行は2018年1月1日からなので相場への影響が最も大きい項目は「リパトリ減税」です。米国外で得た利益を米国に送還する場合、今年の場合は減税措置を意識して12月ではなく1月以降になることが予想されます(米国は12月決算)。よって、今年の12月は季節的要因である(米国送還のための)ドル買い需要が剥落し、逆にドル安要因となりそうです。ただ、実現成立が見えてくるとこれを先取りする動きが予想されクリスマス前後から薄い市場の中、急激なドルを買う動きになる可能性も高く注意が必要です。

② シカゴ・IMMグローバル投機筋の直近ポジションは約150億ドル相当の円の売り持ち(ドル買い円安ポジション)を保持しており、昨年11月の米大統領選を契機にドル買い円安トレンドとなって以降、最大級の円売りポジションに膨れ上がっています。これは本邦金融緩和継続予測に加え、トランプ税制改革法案が実現する可能性が高まっていることを予測しての動きですが、北朝鮮の地政学的リスクから年末に向け投機筋がポジションの解消に動けばドル安円高が加速する可能性が高いです。一方、本邦年金を主体とした長期資金の動きは自民党が大勝した10月22日以降で始めて111円台となった10月中旬から変わることなく、111円台からドル買いを継続しています。110円を中心としたドルの押目は継続的にドルの買い切り玉が今後も大量にでてくることが予想され、強烈なドルのサポート要因となるでしょう。

以上から地合はドル堅調ではあるものの、目先ドルの上値を押さえる要因やドル下落要因もあることから110~114円でドルの上値が重たいレンジ相場を予想します。中長期的観点からはドルの押目買い、短期的取引では米10年債の利回りを見ながらドルの押目買い戻り売りの回転売買を推奨します。

トランプ米大統領により「テロ支援国家」に再指定された北朝鮮は今回の決定で反発(ミサイル発射)を再開しました。季節的要因から地政学的リスクが緩和されていたものの再びリスクが顕在化し、要注意事項です。北朝鮮は9月15日のミサイル発射以降沈黙を保っていましたが、その理由として兵士は秋の収穫期は農作業に専念する慣行があり、兵士不在の状況が一時的に継続していたものです。事実、金総書記が最高指導者となってから85発のミサイルが発射されましたが、10-12月の打ち上げは5発のみとなっています。しかし、11月28日に9月15日以来の弾道ミサイルが発射されたことにより、再び地政学的リスクが顕在化し、今後も一時的なドル売りのリスクは継続します。

ただ、地政学的リスクにより一時的にドルが売られた局面は、中長期的なドル高円安の構造が変わるものではないことから絶好のドルの買い場と推奨します。 目先、下値の目処は110.00の心理的サポートライン、そこを下抜けすると9月15日安値の109.556が意識されますが、これらドルの押目は絶好のドル買い局面と思料します。上値は113.50~114.00がまず重たくなりそうです。

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ユーロ相場予測

ユーロ及び英ポンドともにドル安を背景として対ドルでは底固い値動き。
対ドルで‘押目買い一部戻り売り‘の回転売買推奨

10月のユーロ・ドル相場は全般的なドル売りを背景に騰勢が強まり、ユーロ買戻し(ユーロ上昇)の展開となりました。月央までのユーロ・ドル相場は10月下旬のハト派的ECB理事会を受けて1ユーロ=1.15台後半~1.17ドル手前のレンジ相場で推移していましたが、米税制改革法案の不透明感を背景とした米長期金利低下によるドル売りからユーロ騰勢が強まり、1ユーロ=1.1500ドルの節目下割れを目指して短期的にユーロ売り持ちにしていた投機筋のロスカットユーロ買戻しも巻き込み月央には1.1862まで上昇しました。その後ドイツの次期政権樹立へ向けた3陣営の連立交渉が決裂し一時的にユーロ売りが加速し、1.17台前半までユーロは下落するものの、月末30日にメルケル首相率いる第1党と第2党が協議することに合意したことからユーロは一転上昇しました。一時1ユーロ=1.1944ドルまで上昇しました。

当面、ユーロは1ユーロ=1.1600~1.2000ドルのドル安を背景としたレンジながらユーロが底固い相場を予想します。ドイツ3党連立協議が決裂したことを背景とした総選挙実施の警戒感がある中、今後の大連立交渉は難航する公算が大きいです。メルケル政権終焉を意識したユーロ政治リスクの台頭とグローバルなIMM投機筋のユーロ買い持ちポジション高水準の積み上がりがユーロの上値(1.20近辺)を抑える要因となり、ユーロ単体でユーロを買うには材料が乏しい状況です。

一方、ドルも積極的な買い材料が見あたらない中「リパトリ減税」を意識したドル安要因が重くのしかかります。目先は米10年債の金利動向を見ながらユーロ・ドルで‘ユーロ押目買い先行の戻り売り’、レンジ売買をするのが有効となりそうです。金利上昇局面にあるドルとテーパリング(資産縮小)=金利上昇をついにスターとさせたユーロは年内拮抗しそうながらもユーロ優勢とみます。

10月の英ポンド相場はメイ政権運営の不透明感からポンド軟調基調の中、1ポンド=1.3050~1.33ドル台の狭いレンジ相場で推移しました。月初2日、英中央銀行が10年ぶりの利上げを実施したものの、次回以降の利上げ観測がないことと材料出尽くしによりポンドは1ポンド=1.33ドル台から1.3050割れまで続落しました。その後は米金利低下によるドル売りの中、英与党保守党内での複数の閣僚辞任や保守党内でのメイ首相に対する不信任支持署名等ポンドのネガティブな材料もあり、1ポンド=1.31~1.33ドルとポンドのやや軟調地合かつ狭いレンジ相場に終始しました。

しかし、月末にEUとの間で離脱交渉に係る「精算金」で合意したとの報を受けポンドは1.34台まで買い戻されて月末をむかえました。目先のポンド相場はドル安要因もあり底固く推移しそうです。離脱交渉の進展期待を背景に堅調な値動きを予想します。注目は12月14,15日のEU首脳会議。ただ、政権不透明の高まりの中、次回利上げの時期の動向(当面利上げ無しの予想で現時点の市場は織り込み)やBrexitの交渉(ハードBrexitの方向性)次第ではポンドが軟調に推移する可能性もあります。目先の下値の目処は今年の安値(1月16日)1.1986と高値(9月20日)1.3657を結んだフィボナッチ38.2%戻しにあたる1.3019がターゲットです。上値の目処は9月に示現した年初来高値1.3660です。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

2018年米金利見通しに変化がないかに注目

11月のドル円相場は、前半は114円を挟んで底固い展開が続いていたものの、黒田日銀総裁が「リバーサル・レート」に言及したことや、イエレンFRB議長が「低インフレ一時的か確信持てない」と発言したことで下落し、27日には一時110.83円まで下げる場面がありました。

12月のドル円相場ですが、12月FOMCでの利上げはほぼ確実視されており、今後の動向はFOMCで発表される2018年の金利見通し次第になりそうです。低インフレの長期化懸念から、もし来年の金利見通しに下方修正があれば、ドル円は110円を割れる動きにつながると思います。逆に2018年の金利見通しに変化がなければ、ここまでイエレンFRB議長の発言を契機に下げ足を強めてきたこともあり、113円台回復の可能性が高いと考えています。

11月のユーロドルは、欧州委員会が今年と来年の欧州の成長率を大幅に上方修正したことや第3四半期の独GDPが予想を上回る数字だったことで、改めてユーロ圏の経済の好調さが注目され、一時1.1960ドルまで上昇しました。ユーロ圏の経済が予想以上に改善されていたことから、目先のユーロドルは底堅く推移すると思われます。上値を追えるかは米経済状況次第で、こちらも2018年の米利上げ見通しが焦点となりそうです。米金利見通しに変化がなければ、1.16ドル台~1.19ドル台のレンジ、米金利見通しに下方修正があれば年初来高値1.2092ドルを超える展開になると予想しています。

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