鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

111.50~115.50円のコアレンジの中、ドル堅調地合。リスクは北朝鮮、ドルの押目買い一部戻り売りを推奨。

10月のドル円相場は9月のドル買い戻しの展開が継続し、米長期金利(米10年債)上昇を受け、27日には1ドル=114.499円と7月11日(114.495)以来の高値を示現しました。月初から月央までは材料難の中、主に111円台後半~112円台後半と狭いレンジの膠着相場が続いていましたが、20日に米上院が予算案決議を可決したことをきっかけに米長期金利が急上昇するとドルの上値を試す展開となり、一気に113円台半ばまで上昇しました。22日の本邦衆院選で与党大勝を受けて、週明け23日早朝よりアベノミクス継続を背景としたドル買い円売りが加速、米経済指標の堅調地合もあり、27日には114.499と7月11日以来のドルの高値を示現しました。

今後のドル円相場は、ドルが堅調に推移しそうです。リスクは北朝鮮の地政学的リスク。 米議会が税制改革に向け前進しているほか、世界的な株高や米金利上昇を背景にドルが底堅い展開が続くとみます。一方、本邦に目を向けるとアベノミクス(株高、円安)継続を背景として、引き続き金融緩和策維持を表明する日銀と次回12月FOMCや2018年(追加利上げ3回)にて利上げが期待されている米国に対し、金利政策スタンスの違いによる対日金利差拡大から円安基調は継続するものと見込みます。

① 12月米FOMCでの追加利上げ観測が現時点で約80%程度織り込まれている中、直近の米主要経済指標の堅調さには12月の利上げを変更させるデータはなく、米経済好況及び金融政策の短期見通し(12月利上げ)には変更はみられません。米追加利上げ見通しとともに米10年債利回りも9月末時点の2.2%台から一時2.47%まで上昇しました(10月末時点は2.37%程度)。米10年債利回りとドル円の連動性は相変わらず強く、米金利上昇=ドル円上昇という図式が成り立っています。目先は、11月2日に発表される予定の新FRB議長の人事が焦点です。現時点のFRBメンバーでは、2018年中に3回の利上げが予定されているものの、2018年度のFRBメンバーが決まっていない現時点では、マーケットは1回程度しか織り込んでいません。来年2月で任期が切れるイエレンFRB議長の後任次第で2018年度の利上げが複数回織り込まれてくるとドル円の更なる上値をトライする要因となるでしょう。次期FRB議長候補は現FRB理事のパウエル氏(ハト派:金融緩和に積極的、共和党主流派に近い)、イエレン議長の再任(ハト派)、とタカ派(金融引き締めに積極的)のテイラー氏(元財務次官、主にインフレ率やGDPの経済指標にもとづき政策金利を機械的に決める「テイラールール」提唱者)とに絞られているがいずれに決まったとしても緩やかな利上げ路線に変更はなさそうであり、逆に人事を巡る不透明感払拭によりドル円には上昇圧力がかかりそうです。発表直後はパウエル氏かイエレン氏ならドル売り、テイラー氏ならドル買いで1円程度反応するかもしれませんがこれはあくまでも短期的なものに留まる可能性が高いです。

② 税制改革は共和党単独での法案承認が可能となりました(上院100議席のうち共和党が52議席)。12/8期限の継続予算や債務上限などの不透明感は残り、トランプ大統領の政策運営については引き続き不透明感は払拭できず短期的なドル売り要因は残るものの、税制改革の進展が続けばドル買い圧力は高まるでしょう。

③ 本邦衆院選で自公連立与党が2/3以上の議席を勝ち取って大勝しました。これで来年9月の自民党総裁選も安倍再選の可能性が高まり、来年4月の日銀総裁指名も黒田氏再任を含めハト派路線が踏襲されることが確実となりました。これにより、日本の政権、政策の連続性が確保され、株高と円安地合は支持されるでしょう。年金や生保等の本邦機関投資家はこれまでどおり為替投資としての外国証券購入について、110円近辺のドルの押目買いを継続するでしょう。ドル円相場は更なる押上げの牽引役とはならないものの、ドル円の買い支え要因となり続けることが確実です。さらに選挙後、生保が今後積極的にヘッジ無し外債投資(ドル買い要因)を増やすことを表明した(これまではヘッジ付外債投資が主流で為替に影響はなかった)こともドルの底堅い動きに拍車をかけそうです。

以上から米来年度利上げ観測の織り込み期待と減税改革の進展により米金利は上昇圧力がかかりやすくドルは堅調に推移することを見込みます。目先111.50~115.50円をコアレンジとしてドル円相場と連動性が強い米10年債の金利動向を見ながら金利が低下したところでドル買い、上昇局面でドルの一部戻り売りを引き続き実施することを推奨します。ただ、グローバルな投機筋の円売りポジション(ドル買い円売り)は過去2~3年で最高水準近く積み上がっており、節目の115円前後では頭を重くする(ドル売り円買い)大きな要因となるでしょう。115~120円レンジにドルを押し上げるには、2018年度の利上げ織り込み度合いが現FRBメンバー予測の3回に近づくこと(米10年債利回りが2.5%以上維持)とグローバルな円売りポジションが掃けない限り、当面は困難と思料します。逆に北朝鮮による地政学的リスク、大規模軍事衝突が顕在化するとグローバルにリスクオフの展開となり、ドル円は5円程度落ちる可能性が高いです。最近の北朝鮮は静観していますが、11月第1週末のトランプ大統領の来日を控え、ミサイル発射(1円程度のドル下落)や核実験の強行(2円程度のドル下落)の可能性は低くありません。ただ北朝鮮リスクによりドルが落ちた押し目は確実にドルの絶好の拾い場(買い場)と捉えたいです。現ポジションの大きな傾きの巻き戻しによるドル下落であり、ドル円相場を動かす構造にはなんら変更はありません。上値の目処は、7月11日高値の114.495、節目の115.00、3月10日高値の115.505です。下値の目処はまず112円割れゾーンから9月安値の111.654が意識されます。

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ユーロ相場予測

ユーロは対米ドルや英ポンドに対して軟調。
1ユーロ=1.5000ドルを割り込むと1.1000~1.15000ドルの下方レンジの可能性

10月のユーロ・ドル相場は9月に引き続きユーロの上値が重い展開となりました。全般的なドル買いを背景に1ユーロ=1.16ドル台後半~1.18ドル台後半のレンジを中心としてユーロは軟調な展開で26日のECB理事会をむかえました。理事会では今年終了する予定の債券買取プログラムにつき、現在の月額600億ユーロから300億ユーロに減額したうえで、来年9月まで延長するテーパリング(資産縮小)を決定しました。市場予想通りの結果となりましたがマーケットは緩和的な環境が続くとの見方からユーロが全面安となり、27日にはカタルーニャ議会がスペインからの独立を宣言したことも嫌気されユーロ・ドルで1.1574と7月20日以来の安値を示現しました。

当面、ユーロは頭の重い軟調な展開を予想します。26日のECB理事会後、欧州金利(ドイツ、フランス、スペイン、イタリア)は急低下するのに対し米金利は上昇傾向です。このユーロ政策は2018年9月まで今から1年近く金融緩和政策が続くこととなり、利上げが期待される米国に対し、金融政策の面からもユーロを買う材料が一旦なくなりました(今後も購入額や期間を変更する用意があるとは発表されました)。目先、下値のターゲットは1.1500です。過去約2年半、1ユーロ=1.0500~1.1500ドルのコアレンジを継続したユーロ・ドル相場は長らく続いた超金融緩和政策終了観測を背景に今年の7月下旬に遂に1.1500を明確に上抜けるとバリアオプションのトリガーを誘発し、8月下旬には一気に1.20ドル台まで加速上昇しました。グローバルな投機筋のユーロポジションもそれまでのユーロ売り持ちから約3年ぶりに買い持ちに転換し、ここ最近は高水準までユーロ買い持ちが積み上がってきている状況です。

しかし、金融政策面からのユーロ買いが見込めなくなった現状では、この節目1.1500を下割れしてくると短期筋だけでなく中長期投資家も含めてかなりの量のユーロ売り圧力がかかりそうです。このようにグローバルなユーロ買い持ち高、金融政策面、スペイン発の政治リスク広がりを材料としたユーロ安は当面続く見込みです。ユーロの戻り上値1.1750~1.1850は重いでしょう。当面、ユーロは対ドルだけでなく利上げしそうな英国や既に利上げに踏み切ったカナダなど金利上昇主要国通貨に対しては全面安に推移しそうです。一方、対円(ユーロ・円)では超緩和政策の金融政策がともに続くこととなり、今後は1ユーロ=130~135円コアレンジの中で一進一退の膠着した相場展開となるでしょう。ユーロ・ドル相場は、1.1500を明確に下割れすると1ユーロ=1.1000~1.1500ドルのレンジ相場に一旦戻るでしょう。

10月の英ポンド相場は米債金利上昇を背景に対ドルでは軟調な地合に、一方、超緩和政策継続を決定づけたユーロや円に対しては年内英国利上げ観測からポンドは堅調地合で推移しました。ポンドは対ドルでは1ポンド=1.3000~1.3400ドルのレンジの中、やや軟調地合の展開となっていますが、目先の焦点は11月2日の英中銀政策決定会合です。現時点では9年ぶりの利上げが予想されていますが、予想に反して金利が据え置かれたり、中銀レポートのインフレ動向の内容次第ではポンドが乱高下しそうです。当面、ポンドを取引する場合は年内利上げ観測が台頭し続けそうな英国に対し、超緩和政策を決定したユーロや円は金利面で見劣りがするため、対ユーロ及び対円でポンドの押目買い及び戻り売りを繰り返す足早な短期売買を推奨します。ただ、ポンドの利上げ自体1回程度しか想定されておらず、ハードBrexitの位置づけに変更はないのでいずれポンドは軟調地合に転換することを念頭において取引してください。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

12月米利上げを織り込みにいき、ドル円上昇・ユーロドル下落を予想

10月のドル円相場は、衆議院選挙で与党が圧勝したことや米第3四半期GDPが前期比年率3.0%増と予想を大きく上回ったことで、一時114.44円まで上昇しました。

11月のドル円相場ですが、米経済の力強い成長が確認されたことで、引き続き底堅い展開が続くと考えています。11月2日に次期FRB議長が決定する予定ですが、本命視されているハト派のパウエル氏に決まった場合、目先は一旦下げることになるでしょう。ただ足元の米経済は堅調であるため、下げは一時的なものにとどまると思います。過去4回の米利上げのうち、前回を除く過去3回はFOMCまでは利上げを織り込む形で上昇、利上げ実施後に材料出尽くしから下落という動きになっており、今回も同様の動きになると見ています。次期FRB議長決定のニュースが消化された後は、12月利上げを織り込む形で徐々に上昇、12月の利上げ前には116円手前まで上昇すると予想しています。

10月のユーロドルは、ECB理事会を控え1.17ドル~1.19ドルのレンジの動きが続いていましたが、ECB理事会後のドラギ総裁の会見内容がハト派的だったことでレンジを下に抜け、27日には1.1573ドルまで下げる場面がありました。ユーロドルは米利上げ後ずれ懸念がある中、ECBの量的緩和縮小開始期待から9月には1.2092ドルまで上昇しましたが、ここにきて米は経済の好調から高確率で12月利上げが見込まれているのに対し、ユーロは金利先高観後退と、置かれている状況が逆転しました。このため、今後のユーロドルは弱い動きが続く可能性が高いと考えています。短期的に1.15ドル、中期的には1.13ドル程度まで下げると予想しています。

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