鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

方向感を探る、流動性が枯渇した値動きの早いかつ値幅の大きい展開に。109~115.50をコアレンジに上下レンジブレイクの可能性あり。

11月のドル円相場は、8日に行われた大統領選挙で予想に反してトランプ氏が勝利し一転してドル高(円安)相場に、1995年以来の急ピッチ(2週間で約12%の上昇)で短期間にドルが全面的に買われる展開となりました。選挙当日はクリントン氏優位の予想から105円台前半までドルが買われてスタートした選挙戦であったものの、途中トランプ氏優位の報道からトランプリスクを意識したリスクオフ(ドル売り、米株売り)により一時101.20までドルは下落しました。その後同時に行われた連邦議会選挙で上下院共に共和党(トランプ氏)が過半数を取得したことで、同氏が主張する減税策やインフラ投資などの景気刺激策などが実現する可能性が高まったことから米金利上昇・株高を誘発しました。

ドル円は一転してドル買いとなり、NY株が連日史上最高値を更新し、選挙前からドル円相場と相関性が高い米長期金利(10年債)も選挙当日の1.8%から一時は2.4%台と2013年5月バーナンキショックを上回る短期間(約60bp)での上昇とドル全面高の様相を呈し、選挙からわずか2週間あまりでドル円は101.20から113円台後半(113.90)を示現するに至りました。その間、12月(15日FOMC)の米利上げはほぼ100%織り込み、2017年度も2回以上の利上げを織り込むなど想定以上の日米金利差拡大を背景としたドル買い円売りの相場展開となりました。トランプ氏は選挙後沈黙を保ち政策の具体案が見えてきてない中、期待先行で急ピッチに上昇したドル円相場は、月末にかけて米長期金利の下落とともに調整が入り下111円台前半(111.36)まで急落、市場流動性が枯渇して値動きが早い展開の中111円台から113円台を何度も往復するような方向感のない展開で月末をむかえました。

今後のドル円相場は、引き続き方向感のないかつ値動きの激しく、上下ともに大きな想定レンジを突き抜ける可能性を秘めた投機的取引では利潤の確保が難しいマーケットを想定します。一方、年末に向け徐々に流動性が枯渇していく中、値動きが激しく値幅も大きい相場が予想されることから短期売買における収益チャンスが豊富なことも同時に想定できます。

今回の急ピッチなドル円の上昇は次の2つのロスカットが主な要因です。

①円ロングポジション(円の買い持ち)の損切り:年初121円台から直近100円を割り込むまでドルが売られ円が買われた値動きの中でもともとグローバルな投機筋の円ロングポジションが円急騰に備え積み上がっていた状況下、その損切りが余儀なくされたこと。

②米長期債券ロングポジション(金利低下予測)のロスカット:米経済鈍化及びインフレなき緩やかな利上げ(年1回程度)からくる米長期金利低下地合がトランプ時期大統領による積極財政政策及びインフレ期待から特に長期金利が大幅上昇(価格は大幅下落)。グローバルな投機筋・投資家のフローが債券(売り)から株式(買い)に資金をシフト、米債は損切りが損切りを誘発し一気に2.4%台まで上昇。米長期金利と相関性が高いドル円相場も連動して一気に大きく買われ思わぬ展開となったこと。

①②共に特にグローバルな投機筋の代表格であるヘッジファンドの動きが大きな要因であり、大半が11月末決算であることから11月末に向けポジションを閉じる動きが加速したものと思われます。しかし、これら2点の動きはあくまでポジション調整による部分が大きく、ポジション調整が一段落すれば急速に反転・反落する可能性があり、月末のドル円、米10年債の反落はその動きの一環であると考えます。そういった点ではドル円一直線の上げ相場は一旦終了した可能性が高いです(①のロングポジションは22日時点で解消、逆にショート転へ)。ただ②の米債ロングについては特に本邦投資家を中心にまだまだ損切りはできていないのが現状です。2.5%を超えたら損切りが加速して2.7%程度までのオーバーシュートは充分にあり得ます。その場合は115円超のドル高円安になるでしょう。逆に行き過ぎた反動で心理的サポートラインである110円を割れたら105円近辺まで戻る可能性も否定できません。

今後もトランプ氏の見えない政策の真意に振られる可能性が高く、基本的には良好な米経済指標と金利上昇を背景としたドル高地合の中、方向感を探る値動きの速い相場展開を予想します。焦点は、足元のドル高トランプ相場を牽引した米10年債利回りに素直に反応するマーケットが続くと予想するが、このような方向感が定まらない環境下、個人投資家は一旦サイドラインに立つか(「休むも相場」:トランプラリー相場に乗り切れていない人、自信のない人)もしくは原点回帰で「順張り」で相場の流れについて行くのが原則です。ただその場合、予測を間違えた時の損切りは確実にかつ自動的にしないといけません。一個人のちっぽけな相場観への固執と値ごろ感からくる勝手な思い込みのレンジ取引は厳禁であり、このような相場つきでは、値動きに「順張り」マーケットセンチに「逆張り」で向かうのが原則です。上値の目処は113.90の次は115.00(心理的抵抗線)、115.56(アベノミクス後最高値125.86→Brexit後最安値98.90の61.8%戻し)です。下値の目処は110.90(101.20→113.90の23.6%押し)、110.00(心理的サポートライン)、109.05(101.20→113.90の38.2%押し)です。

ユーロ相場予測

ユーロの下値を試す展開。1.05を下抜けし1.00(パリティ)が視野に。

11月のユーロ相場は米大統領選挙によるトランプ氏勝利によりドル高の展開の中、ユーロは対ドルで軟調に推移し、1.05台前半まで下落したものの、一方で円全面安の展開となった結果、ユーロ円は一時120円台(120.16)を回復するユーロ高となりました。ユーロ・ドル相場は心理的サポートラインの1.08を割れると一気に1.05台へ突入し、一時昨年12月安値を下抜け1.0518まで下落し、長らく継続した1.05~1.15の下方を早晩ブレイクしそうな勢いです。

今後の目先の焦点は12月4日のイタリアの国民投票。憲法改正案が否決され、レンツィ首相が辞任に追い込まれた際には、最大で国内8行の銀行破綻リスクが生じるとみられており、欧州株式の下落や「ユーロ離脱」の思惑からユーロ売りが加速、1.05を割れるとユーロ下落余地が更に拡大しそうです。逆にトランプ相場の反動でユーロの戻りがあれば丁寧にユーロの売り持ちを積み上げることを推奨します。対ドルでの金利差拡大と域内主要国の政局不安(オランダ3月総選挙、フランス4~5大統領選挙、いずれもEU離脱が焦点)からくるユーロ下落圧力継続に変化はありません。以前から予測している来年にはパリティ(1ユーロ=1ドル)を割れる展開には変更はなく、ユーロ売り持ちをキープしながら戻り売りとサポートラインでの部分利食いを繰り返す取引が今後もワークしそうです。

一方、ユーロ円は上昇トレンドに転換したかどうかの判断は今後の円安とユーロ安の強弱次第であり、まだ方向感がない状態が当面続きそうです。ユーロ・ドルの上値の目処は1.08を上抜けすると1.0937(今年最高値1.1616→1.0518の38.2%戻し)、大統領選挙前の1.11。下値は1.05を抜けると1.0458(2015年安値)、その下はパリティを目指す展開です。

一方、英ポンドは、トランプ氏の勝利は対ユーロにおいてドル買いとなったものの、対ポンドに対しては米国とのより好ましい貿易交渉の可能性を意味する事を背景にポンドドルはポンド買い展開に、対ユーロでもポンドの買い戻しが進みポンド買いに拍車がかかったことから対ドルで1.2350~1.2650のポンドの戻しを試す狭いレンジ取引に終始しました。当面はまだ対ドルでポジションがショートとなっているポンドは1.2350付近がサポートラインとなり底堅い展開が続きそうです。しかし、ハードBrexitから長期的なポンド下落の方向性に変更はなく、ポンドを投機的に取引する場合は、ポンド買い戻しから上値を追う展開となればポンドの戻り売りを徐々に積み増し、ポンド売りの持ち値を改善させポンドショートをキープする戦略が将来的に見てワークしそうです。 ポンドの上値の目処は11月に示現した1.2550、1.2674です。下値の目処は1.2300です。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル 総合企画室 市場リスク管理マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円の長期トレンドは円安転換か?

11月の為替相場は、トランプ氏が米大統領に選ばれたことを受けて直後はドル安となったものの、その後は大規模な減税や公共投資といったトランプ氏の経済政策により、今後米経済が加速するとの期待から米長期金利が上昇、あわせてドル高が進み、ドル円は113.89円まで上昇、ユーロ・ドルは1.0515ドルまで下落する場面がありました。

今後のドル円相場ですが、減税や財政支出拡大という米経済政策の転換はその重要度、対象期間の長さから為替の長期トレンドの方向性を決定づける要因となる可能性が高く、そのためドル高はまだまだ続くと予想しています。米経済成長が続く限り、短期的な動向は別としてドル円は上昇していくのではないでしょうか。将来的には前回円安時の高値125.85円、日本の長期金利が現在のように0%付近が続く場合は130円や140円といった水準も見えてくると思います。ただし、ここまで不確実な未来に対して相当期待を織り込んで急上昇してきたことから、目先は109円~114円で次の上昇にむけた足場固めの動きなると考えています。

ユーロ・ドルも上記理由によりユーロ安ドル高の動きを予想しています。ECBがテーパリングに動くまでは金利差拡大の方向にあるためドル高の流れが続き、来年にはパリティ(1ユーロ=1ドル)を割り込む可能性が高いと考えています。ただし、こちらも直近大きくドル高が進行して2015年の安値付近まで下落していることから、一旦は1.05ドル~1.09ドルあたりでのレンジ相場に移行すると思います。

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