鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

ドルの上値を探る展開ながら103~107.50コアレンジ、円高急落リスクも

10月のドル円相場は、総じてドル堅調地合の展開となり、7月以来の105円台を示現しました。月初は101円台と100円割れをうかがう展開でスタートしたドル円相場は、市場予想を下回る9月の米雇用統計や強弱まちまちの米経済指標が発表されたにも拘わらず、12月FOMCでの米利上げ観測を背景に米10年債利回りが5月以来の1.86%台まで大幅に上昇するなど、米長期金利上昇を受けて総じてドル堅調推移となりドル買い(円売り)展開に、グローバル投機筋のドル円ショート(ドル売り円買いポジション)買い戻しも誘引し105円台半ばまで上昇しました。米大統領選のテレビ討論会でクリントン氏が引き続き優勢だったことや原油価格の反転上昇(50ドル台示現)もドル買いに拍車をかけリスクオンムードが高まり、米金利上昇、米株堅調地合いから米ドルに資金が集中しました。

今後のドル円相場は①米大統領選挙(11/8)におけるトランプリスクの後退、②米12月利上げ期待の高まり(12月利上げ確率は70%台まで上昇)、③ドラギECB総裁発言(金融緩和継続)をきっかけとするユーロ売り、④ハードBrexit懸念及び利下げ期待によるポンド売り、⑤OPEC加盟国と非加盟国の非公式な原油減産合意、が現在のドル買い地合の背景となっていますが、そういった意味では11月4日発表の10月の米雇用統計は今後のFRBの政策運営を占ううえで重要な指標となりそうです。

現在の米経済指標は強弱まちまちの発表が継続しており、10月の雇用統計が先月、先々月に引き続き鈍化を示す内容となれば、12月利上げ及び米長期金利上昇のいわゆる日米金利差拡大に着目したドル買いが根本的に崩れることになります。また、米国の実質金利はまだまだマイナス圏にとどまっているため、たとえ12月の利上げ確率が高水準で推移しても足元のドル高が長期的なトレンドになるには限界がありそうです。また、10/31、11/1の日銀政策決定会合では追加緩和が打ち出される公算が小さいこと(黒田総裁が早々に否定発言)から円安(ドル高)地合に拍車をかける要因とはならないでしょう。ドル高を阻む他のリスク要因としては英国のBrexit同様、次期大統領にトランプ氏が選ばれる結果となること(不透明リスクからドル売り)、また11/30のOPEC定例総会で正式に原油の減産合意を決定するかどうかであり、11月のドル円相場は不確定要素が多いです。さらに105~107円台(本邦輸出企業の社内輸出予約目標水準、2016/9月日銀短観)は取り遅れているドル売り予約やグローバル投機筋のドル円ショート再構築も断続的に出てくることが予想されることから、一方的なドル高地合にはならないと考えます。

基本的なドル円相場の考え方は今後発表される米経済指標が堅調地合を継続し、12月以降も複数回利上げ期待が早期に強まらない限り、ドルの上値は限定的であり、逆に直ぐにドル円の下方リスクが台頭する展開に変更はありません。目先は105円以上の円安上方を探る展開となりつつも103~107.50円をコアレンジとした下方急落リスクが高い展開を予想します。いまだ105円以上に留まる可能性よりは100円割れをうかがう展開の方が依然強いと予想します。ドルの戻りは丁寧にドル売りを推奨します。目先の上値抵抗ラインは7/29高値の105.74、次は106.72、更に7月月間高値の107.49です。

ユーロ相場予測

ユーロ、ポンドともに戻り売り、ショート(売り持ち)キープ。

10月のユーロ・ドル相場はECBの金融緩和の縮小(テーパリング)検討の噂からユーロが底堅い展開(ユーロ買戻し)が続いていたものの10/20の理事会で現行政策の据え置きを決定するとともにドラギ総裁による12月以降の金融緩和新継続を示唆する発言もあり、一転ユーロ売りの展開になりました。節目の1.10を割れると一気にユーロ売りが加速、今年3月以来の1.08台前半までユーロは売られ、4月以降長らく膠着していたユーロ・ドル相場が大きくユーロ売り仕掛けで動き出しました。今後も利上げ観測の米国と金融緩和継続のECBによる金利差拡大と域内主要国の政局不安から想定されるユーロ売りがくすぶり継続しそうです。

ユーロ圏は一旦スペインの政党確立目処やポルトガルの格付け維持で落ち着きは取り戻したように見えましたが、イタリアの憲法改正の是非を問う国民投票(12/4、否決の場合首相辞任)やオランダでのEU離脱の声の高まり(2017年3月総選挙)、テロから開放されないフランス(17年4~5月大統領選挙)、メルケル首相の支持率低下が進むドイツ総選挙(17年8~10月)を控えて不透明感からくるユーロ売り圧力は継続しそうです。 ユーロの下値の目処は1.08を割れると強力なサポートラインの1.05をうかがう展開、長らく継続した1.05~1.15の下方を探る展開を予想します。ただ、最近のEU圏メイン指標である独長期金利急騰(独10年債は10月初の-0.15%から直近0.15%近辺と30bpも急上昇)は日銀の金融政策変更(長期金利引き上げ)と同様の動きをしており、ECBもテーパリングが近いと市場が動き始めている兆候でもあり、一方通行的にユーロが売られる展開にはならないと予想します。引き続きユーロ売り持ちをキープしながらユーロ戻り売り、サポートラインでの部分利食い(ユーロ買戻し)戦略がワークしそうです。

一方、英ポンドは、10月2日のメイ首相表明のEU離脱につき、徐々に交渉が厳しさを増す(ハードBrexit)との見方が強まり、ポンドが断続的に売られ節目の1.30を割れるとBrexit(6/23)後に示現した7月の年初来安値の1.2780もブレイク、10/7には一気に31年ぶりの安値1.1840近辺まで下落し、その後は1.20~1.25レンジ取引の中、ポンドの上値が重い展開が続きました。目先の注目材料は11月3日の英MPC(英中銀金融政策委員会)。利下げ観測が台頭しているもののカーニー英中銀総裁は「現状のポンド安を考慮する」と発言しており、利下げを見送る可能性も出ています。いずれにせよ、ポンド取引をする場合は、ポンドが買われた上値は丁寧にポンド戻り売りを継続し、ポンドが売られた展開で一部速やかに利食いのポンド買いをしかける足早のポジション運営がワークしそうです。上値の目処は1.251.26。下値は1.1840です。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル 総合企画室 市場リスク管理マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

11月はドルの上値が重い展開を予想

10月の為替相場は、米大統領候補討論会をうけてヒラリー大統領候補の当選確率が高まりトランプリスクが後退したことや、米経済指標の好結果から12月米利上げ観測が高まったことを受け、月間を通して米ドルが買われ、ドル円は一時105.53円まで上昇、ユーロ・ドルは1.0848ドルまで下落する場面がありました。

今後のドル円相場ですが、引き続き上記材料を元に底堅い展開が予想されるものの、ドルインデックス(主要国通貨に対する米ドルの総合的な価値を示した指標)は10月31日時点で98.31と100近くまで上昇しており、2015年以降ドルインデックスが100近くまで上昇した際には毎回ドル高が抑えられてきたことから、ここからのドル円の上値はそれほどないと考えています。7月21日高値が107.47円であることから、上がって107円台前半まででしょうか。11月は103円台半ば~106円台を中心としたレンジ相場になると予想しています。但し、米大統領選でトランプ氏が勝った場合は、マーケットはここまでヒラリー氏が大統領選で勝つことを織り込んできたこともあり、Brexit並の変動が予想され、ドル円は90円台に下落する可能性が高いと思います。米大統領選の行方には注意が必要でしょう。

ユーロ・ドルに関しては、ECBが12月会合で量的緩和を延長するとの期待やドイツ銀行問題もあり、ユーロが売られやすい状況であることから、このまま1.05ドル台を目指して下落する可能性もありますが、こちらも上述したドルインデックスが高値圏にあるため、このあたりで下げ止まる可能性の方が高いと考えています。当面は1.08ドル~1.10ドル台を中心としたレンジになると予想しています。

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