鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

98~103円のコアレンジ。ドルの下振れリスクが高く、90円台定着も視野。

9月のドル円相場は、2日(金)8月の米雇用統計が予想よりも弱い内容となったこともあり、月初は101.00~104.50のレンジ取引の中、ややドルの上値が重い展開が続き注目の21日、日米政策金利発表をむかえました。日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しました。これが市場参加者からは量的緩和の限界が近づいているととられ、また実質の金利引き上げとも受け止められたことからドル円は乱高下しながらドル売り円高へ、また当日夜の米FOMCでは政策金利の据え置きが決定、12月の利上げ余地は残したものの、将来の政策金利見通しも引き下げたことから更なるドル売りにより100.00の大台割れを覗う展開まで円が買われました。その後は材料難の中、100~101.50の膠着相場にて月末をむかえました。

今後のドル円相場の焦点は米大統領選挙(11月)に向けた両候補の優劣により更なる円高が加速するかが最大の注目材料です。いずれの候補もドル安を志向していること。足元、支持率は拮抗しているもののクリントン氏が僅差で優勢です。今後の展開でトランプ氏が優勢となった場合は、市場はリスク要因と捉え円高に振れる可能性があります。また、今後両候補から改めてドル高牽制発言が出ることも十分予想されドル安(円高)方向に振れやすくなるでしょう。

ドル円の目先の分岐リスクは100円付近で横ばいとなるのか90円台を深く下落するかであり、リスクは後者の方が大きく、円高に下方修正した98.00~103.00のレンジ取引になりそうです。

目先の焦点は今後の米経済指標の強弱です。米経済指標が鈍化を示す内容となれば、ドル円は100円を大きく割れ込む可能性が高く、たとえ底堅い発表となっても、12月以降も複数回利上げ期待が早期に強まらない限り、ドルの上値は限定的(105円を超えない)と思われ、逆に直ぐにドル円の下方リスクが台頭するでしょう。

8月以降の100~105円を中心とした円高展開は、大半の本邦輸出企業の企業目標レート(105円以上)を下回っており、輸出予約(ドル売り円買い)が大量に遅れているのが現状です。思わぬドル買いでドルが上昇した局面ではドルの上値を押さえる大量のドル売りが想定できます。また、10月の下期に入り本邦輸出企業は目標レートの下方修正に動くことも予想され(自動車最大手は102円台に既に引き下げ)、105円を待たずにドル売り(円買い)玉が出てくることも十分予想されます。

一方、ドルの下値(円の高値)である心理的サポートラインである100.00も相変わらず底固いです。Brexit(6/23)以降、幾度となく100.00割れは跳ね返されてきました。グローバルな投機筋の利食い(グローバルな持ち高は高水準の円買い持ち)や本邦年金等(ドルの買い切り)の買い玉が今後も出てくるでしょう。ただ何らかの要因(新興国・資源国通貨の反落によるリスクオフの展開から安全資産‘円’への資金集中)によりそれらの買い玉をこなし、90円台に慣れてくるようだと一気に95円近辺までドルが売られる可能性は高いです。

日銀も新しい金融緩和を実施したばかりであり介入はないと考えてよいでしょう。また、資本フロー面を見てもドルの下値を助長する可能性が高いです。日銀によるマイナス金利が導入された1月以降、金利を求めて本邦機関投資家(年金等)は積極的な米債投資(ドル買い)を行ってきました。今回の日銀政策により、長期債(10年債)を0%まで上昇、誘導することが公表され、円長期金利上昇により米債投資の妙味は薄れてきています。最近の財務省公表ベースでも外債は売り越し超となっており、ドル買いよりもドル売りの方が勝っています。今後ドルが落ちた100円割れでの年金等のドル買い意欲は弱まる可能性が高いです。下値の目処は8月安値99.55、Brexit時(6/24)安値98.90。上値抵抗ラインは105.00、7月高値107.49です。

ユーロ相場予測

ユーロは動意薄、ユーロ円で戻り売り。英ポンドは下値トライ、年初来安値更新も視野。

9月のユーロドル相場は新規材料難の中、1.1100~1.1350、8月同様コアレンジ1.1150~1.1250の狭く動意のない膠着相場に終始しました。目先の見通しは、米金融見通しやリスクイベントである米大統領選挙など米国関連要因が主材料と考えるが膠着相場から抜けられそうもないです。かなり長期間ユーロ・ドルは膠着相場となっているため、レンジを抜ける爆発のエネルギーも溜まっていることは確かです。12月までのスパンで見れば、Brexitの影響による経済減速、EU圏内信用不安、ECB追加観測、イタリアの国民投票(12/4、憲法改正の是非、否決されればレンツィ首相は辞職を表明済み)などでユーロは再び下方トレンドに入っていくと予想するものの、当面はユーロ売り持ちをキープしながらトレードする場合は、狭いレンジ内での短期売買を繰り返すのがワークしそうです。ユーロの売り持ちで取引する場合はユーロ・ドルよりもユーロ円の方が値幅も大きく目先ワークしそうです。115円以上でユーロの売り持ち作成、112~113円で部分利食いです。円高が加速する場合は110円割れも期待できます。

一方、英国ポンドは、予想に反したBrexit後の相次ぐ、やや堅調な英国経済指標の発表により、1.30を底にポンド買戻し優勢の底固い展開が続いていました。しかし、英国外相のジョンソン氏の発言により、英国の早期EU離脱の思惑が浮上し、英ポンドは一時1.30を割れ1.29台へ突入しました。今後は早期離脱に市場の注目が集まる展開になれば、英ポンドに対する売り圧力が更に強まることが予想されます。今後、ドル関連要因や堅調な英経済指標により英ポンドが買われて上がった局面では丁寧に英ポンドを売ることを推奨します。英ポンドの売り持ちをキープしながら1.30割れで部分利食いをしていく戦略がワークしそうです。上値の目処は1.31450、1.3350、1.3450、下値の目処は8月安値1.2865、7月に示現した年初来安値1.278です。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル 総合企画室 市場リスク管理マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円は下抜けで100円割れ定着を予想

9月のドル円相場は、日銀の追加緩和期待や米利上げ期待から103.41円で始まったものの、日銀政策決定会合はポジティブサプライズなし、米金利も据え置きとなったことで、現在は101円前半での推移となっています。

今後のドル円相場ですが、日米の金融政策決定会合が終わったことで、これからは金利よりも米大統領選の行方次第で動いていくことになりそうです。米大統領選の主な日程ですが、10月4日副大統領候補討論会、10月9日第2回大統領候補討論会、10月19日第3回大統領候補討論会、11月8日投票日となっています。

ヒラリー氏、トランプ氏の両候補ともドル高よりもドル安を望んでいることから、どちらの候補が勝利しても中長期的には円高となる可能性が高そうです。ただし短期的に見た場合は別で、第1回大統領候補討論会でヒラリー氏優勢を受けドル円が上昇したように、目先はヒラリー氏が優勢になれば円安、トランプ氏が優勢になれば円高で反応していくでしょう。ただどちらが勝つにせよ中長期的には円高が予想されることから、討論会の結果や世論調査結果で上下しながらも、だんだんと相場は将来の円高を織り込んでいくのではないでしょうか。これまでドル円は100円を割れるとすぐに反発してきましたが、そろそろ100円割れが定着していくことになると思います。

9月のユーロドルは、1.1120ドル~1.1280ドルの狭いレンジでの推移となりました。ドイツ銀行の破たん懸念にも反応は限定的で、底固い動きが続いています。しかし、英EU離脱時には1.09ドル台前半まで下げていることから、このままドイツ銀行の株価が下げ止まらなければ、近いうちに1.09ドル台前半を目指して下げていく展開になると考えています。

バックナンバー

鶴のヒトコエの過去の記事を確認できます。

 

【ご注意】
  • 本ページは、投資判断にあたり参考となる情報の提供を目的としており、金融商品の売買を勧めるものではありません。投資の最終的な判断はお客様ご自身の責任でされるようお願いいたします。
  • 本ページでは、当社が信頼できると判断した情報を紹介しておりますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当サイトに基づいて被ったいかなるトラブルや損失・損害等についても、弊社及び情報提供元は一切責任を負うものではありません。