鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

100~105円のレンジ。ドルの戻り売り、押目で部分利食いのドル売りポジションキープ。

8月のドル円相場は、夏季シーズンの薄商いの中99円台半ばから103円台前半の狭いレンジ相場で終始しました。月初の米7月雇用統計は強い結果(前月比25.5万人の増加)となったものの、その後の強弱入り混じる米指標を受け、コアレンジ:100.00~101.00の極端に狭い膠着相場で一進一退していましたが、8/26ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演がややタカ派的に受け止められ、9月の米利上げ観測も台頭しました。月末に1ヶ月ぶりの103円台までドルが戻し、ドルの上値を伺う展開にて月末をむかえました。

今後のドル円相場の焦点は、米経済指標が堅調さを示す発表が継続できるか?が最大の焦点です。目先の注目点は9/2の米8月雇用統計です。2ヶ月連続で前月比25万人超の増加と労働市場の堅調さが増しつつあることが確認されている中、先月並みに強い数値が発表されれば(市場予想:18万人増)、現状約4割の9月利上げ織り込み度が急速に増加する可能性があります。その場合、9/21のFOMC(米政策金利発表)に向けドル高トレンドが継続する可能性が高いです。

また本邦サイドでは日銀が7月会合で示した9/21日銀金融政策決定会合での「総括的検証」に注目が集まります。米国の利上げ観測とセットで日銀の追加金融緩和観測が台頭すれば103~107円程度の上値レンジにスライドすることも想定できます。しかし、今回の局面でドルが買われた場合、ドルの戻り場は一旦絶好のドル売りのステージと考えます。この展開は米国が年末の12月も含めて今後複数回利上げが正当化できるほど堅調な経済指標が続く場合に限ってドル円相場はサポートされ、緩やかなドル高トレンドを形成できるとの現時点での判断です。

一方、本邦輸出企業は7月にバーナンキ前FRB議長が来日しヘリコプターマネーのキーワードが飛び交った際、ドル円が急騰、107円台へ反発した展開で、105~107円台で当座必要なヘッジ売りをしたものの、8月の相場展開では大半の企業が想定レートを下回っており(期初4月に概ね110円以上に設定した想定目標レートを8月に105~110円、自動車最大手は102円台まで目標レートを引き下げました)、今後ドルが上値をトライする展開となれば為替予約が遅れている本邦輸出企業の大量のドル売り予約が想定されます。

一方、投機筋はBrexit(6/23)以降8月も100円割れ直後の急反発を何度も見ており、早期の下値攻めには慎重になる可能性があります。このような展開で、米経済指標が引き続き強弱混じりであれば、ドル円は100~105円レンジに留まる可能性が高いです。逆に米経済指標の堅調さが継続できなければドル円は引き続き下値を試す展開が継続すると予想します。

9/21の「総括的検証」(結局、現状維持)や11月の大統領選挙(むやみな利上げが株価下落に繋がり、トランプ氏優勢→当選だけは絶対避けなければいけない状況。クリントン氏確定までは現状維持継続)などで市場がリスクに慎重になる分、円に資金が集まりやすくなります(円高を招きやすい)。目先は105~110円のレンジに戻るよりも95~110円レンジに下方スライドする方向が依然強いと想定します。ドルの戻り売り先行、一部押目買い(利食い)を繰り返し、ドル売りポジションキープの戦略がワークしそうです。下値の目処は8月安値99.55、Brexit時(6/24)安値98.90。上値抵抗ラインは105.00、7月高値107.49です。

ユーロ相場予測

ユーロ、英ポンドともに引き続きショート(売り)ポジションキープ。下押し局面では確実な利食い。

8月のユーロドル相場はドル円同様「夏枯れ相場」で特に材料のない中、1.1050~1.1350、コアレンジ1.1100~1.1200の狭く動意のない膠着相場に終始しました。今後の見通しとしては、引き続きユーロ主導ではなくドル主導の展開でユーロドル相場も値動きする方向に変わりはありません。利上げサイクルに入ったドルに対し、英国問題とそれも含めたユーロ圏下振れ予想から来る追加金融緩和継続のユーロ軟調地合いの構造に変化はなく、中長期的なユーロドルの下落トレンドに変更はありません(来年にはパリティ1ユーロ=1ドルを割れていく展開を予想)。今後9月FOMCでの米利上げ観測が台頭してくれば、ユーロの下値を攻める展開が想定されるもののグローバルな投機筋の中長期的ユーロ売りポジションも積み上がっていることから目先の下値も限定的と考えます。一旦1.10割れは利食いのユーロ買いドル売りが大量にでそうです。引き続きユーロ売りポジションを維持しつつ、ユーロの下値(1.10割れ)で押目買い、戻り局面(1.13アッパー)でユーロの戻り売りを繰り返す戦略が奏功しそうです。

一方、英ポンドは8月4日英中銀政策決定会合にて包括的で期待以上の金融緩和策(政策金利を0.5%→0.25%へ引き下げ等)を発表しました。ポンドドルは一旦1.30を割れて下落したものの7月に示現した年初来安値1.2780までは売られず、逆に金融緩和を織り込んでポンド売りポジションを積み上げてきた投機筋の利食い場(ポンド買い)となり、Brexit後の安定的な経済指標の発表にも支えられ、ポンド相場は底堅くドル、円、ユーロ同様、ポンドですらボラティリティが低下した流動性のある値動きに終始しました。今後の英ポンド動向は英中銀のカーニー総裁はマイナス金利の可能性は排除したものの多くの委員は年内の追加利下げを言及しており、11月インフレ報告時点での政策発表に注目が集まることを示しています。それまでは英指標が注目材料となるが対ドルをはじめとして金利差からポンドの上値が重い展開が継続する方向性に変化はありません。引き続きポンドの戻り売り(1.33アッパー)、一部押目買い(1.30割れ)を推奨します。しかし現時点でのグローバルな投機筋のポンド売りポジションが過去6年間で最高水準まで積み上がっており、ポンドが売られた1.30割れは一旦大量の利食い(ポンド買い)が出そうです。下値押しは確実に利食いをかけておきたいです。下値の目処は7月安値の1.2780。上値の目処は8月高値圏の1.3350、次は1.3500が抵抗ラインです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル 総合企画室 市場リスク管理マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

9月前半の相場は米雇用統計次第

8月のドル円相場は、7月の日銀政策決定会合で緩和策がETFの増額のみにとどまったことに対する失望感から一時100円を割れる場面がありましたが、8月26日のジャクソンホールでイエレンFRB議長が「金利引き上げの論拠はこの数ヶ月で強まった」と述べたことに加え、フィッシャーFRB副議長がCNBCのインタビューで9月利上げの可能性があり得るとの認識を示したことで、現在は103円近辺での推移となっています。

9月のドル円相場ですが、前半は2日の米雇用統計の結果次第となりそうです。過去3ヵ月平均の19万人を上回ってくるようですと、9月利上げへの期待感からドル円は104円~105円程度まで上げていく可能性が高いと思います。一方、米雇用統計の結果が市場の予想を大きく下回った場合は、9月利上げの可能性がほぼ消滅し、ドル円は再び100円割れを目指した動きになるでしょう。9月は21日に日銀政策決定会合、22日にFOMCが予定されています。日銀の総括的な検証の内容と追加緩和の有無、米利上げの有無により今後数か月のマーケットの方向性が決まりそうです。米雇用統計が良かった場合は両会合での結果判明後に、米雇用統計が悪かった場合は9月利上げの可能性は低いことから日銀政策決定会合の結果判明後にマーケットが動いた方に素直についていくのが良いと思います。

8月のユーロドルは、7月29日の米第2四半期GDPの速報値が予想を大幅に下回ったことから1.13ドル台半ばまで上昇する場面があったものの、イエレンFRB議長、フィッシャーFRB副議長の発言を受け、米早期利上げ観測が高まったことから現在は1.11ドル台半ばで推移しています。目先はこちらも9月2日の米雇用統計の結果次第でしょう。米雇用統計がよければドル高が進み1.10ドル、米雇用統計が悪ければ1.14ドルを目指した動きになると考えています。

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