鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

ドル売りポジションキープ、リスクオフ巻き戻しのドル買い局面はドルの戻り売り(103~106)。米経済軟調であれば95~100円レンジへ。

 6月のドル円相場は、月初、5月末のイエレンFRB議長によるタカ派発言(6月もしくは7月の利上げ観測)及び安倍首相からの財政出動の表明観測(株価浮上→円安への連動)によりドル買い戻し基調の中、5月末111円台半ばまでドルの戻りがあったものの、1日の首相会見で大型景気刺激策への言及がなかったこと、また3日の米雇用統計が予想よりかなり弱いデータ発表だったことを受け、6月の米利上げ観測は大きく後退し、一転ドル売り円買いの流れから106円台までドル円は続落しました。その後米FOMC(15日)で政策金利据え置きとなり、更なるドル売りから年初来の安値105.55(5月示現)を割り込みました。また同時に英国国民投票(Brexit,23日)世論調査にて、Brexit支持多数の発表が相次ぎ、避難通貨としての円に資金が集中し、更なる円買いから105円の心理的サポートラインもあっさりブレイクし、一時103円台半ばまでドル円は下落しました。

注目のBrexitでは24日投票終了後(朝6時)の出口調査では‘残留’優位と発表されたことから、ドル円は106円台後半(106.88)まで戻したものの、その後開票が進むに連れ‘離脱’優位となり、日本市場を直撃しました。ポンド、ユーロ、ドル、円の弱い順に反応し、ポンド円は160円台から133円台まで下落、ドル円も一時100円を割れ2013年11月以来の99円割れ(98.95)を示現しました。英国のEU離脱から世界経済への不透明感が漂い、グローバルなリスクオフの動きから各国債券市場の金利は低下、グローバル株式市場は軒並み大幅下落、日経平均株価も24日1300円安の15000円割れで引けました。行き過ぎたマーケットの買戻しで投票結果後のドル円相場は103.22まで戻りはあったものの、ドルの頭は重く102~103円で月末をむかえました。

今後は、英国の先行き不透明感が当面継続することで安全資産としての円需要(円買い)が当面続きそうです。英国発世界金融市場の混乱から米FRBは利上げできない状況に追い込まれました。7月の利上げは完全になくなり、11月の米大統領選挙を控え、11月までは日程的に利上げはできない状況にあります。英国発リスクオフが長引けばFRBは12月以降も利上げはできず、今後米経済指標が腰折れの数値が継続するようだと、次の政策金利変更は利下げ(金融緩和)となる可能性も排除できません。当面ドル円の頭は重く、103円台半ば以上の戻りは一旦ドルの売り場と考えます。また、米景気の堅調地合が早期に確認できないようだと、ドル円のレンジが95~100円に軸足を下振れさせる可能性が高くなるでしょう。

日銀による臨時金融政策決定会合による追加緩和の可能性は残るものの、世界的なリスクオフ環境下では多少のサポートとなってもこの円高トレンドを円安に転換させることは不可能であり、逆に105円以上の戻りがあればドル戻りの絶好の売り場と考えます。目先、ドル円の下値の目処はBrexit時に示現した98.95です。その次のターゲットは、11年10月の75.35からアベノミクス相場で15年6月に125.86まで上伸した61.8%(フィボナッチ)押しの94.64です(半値(50%)戻しは100.60)。

100円台が維持できず、レンジが95~100円となっても政府・日銀による単独介入(特にドル円は)はできないでしょう。英国発リスクオフ相場の展開の中、介入が想定できるのはポンド円、ユーロ円の買い支え委託介入であるがグローバルなデフレ環境化、英国をはじめ、EU諸国も内心は通貨安を歓迎しており、通貨安はBrexitの緩和剤ともなり得ます。英国は外貨準備高が少ない(15兆円程度)うえ、1992年の介入失敗(英国中央銀行のポンド買い介入がヘッジファンドマネージャー、ソロス氏のポンド売りに負けて当時の欧州通貨メカニズム(ERM)から脱退を余儀なくされた)の痛い経験もあることからまず介入はないと考えてよいでしょう。

今後、米国及び世界経済の軟調な経済指標が相次げば、益々円高となる可能性が高くなります。その環境下、Brexitによる行き過ぎたグローバルなリスクオフのまき戻しや日米好材料(日銀の追加緩和、介入もどきも含む)で突発的にドルの戻しがあれば、そこは確実にドル売りを推奨します。また、ドル売りを大量に抱える本邦輸出企業の目標レートは概ね110円に引き下げられていますが105円程度に再引き下げされる可能性は高いです。6月初旬以降、輸出予約ができていないことから、105円以上では確実にドル売りで、ドルの頭を押さえる要因になるでしょう。

ユーロ相場予測

ユーロ、英ポンドともにショート(売り)ポジションキープ、売り増し。

 6月のユーロ・ドル相場は英国国民投票(Brexit,23日)の事前世論調査にほぼ連動する取引展開となる中、投票日までは概ね1.11~1.14の狭いレンジ相場で終始し、やや蚊帳の外でした。開票日直後は、英国のEU残留への可能性が高まり、ユーロ・ドルは一時1.1428まで上昇しましたが、開票結果が離脱優勢と判明するとユーロ・ドルは下落に転じ、離脱派の勝利がほぼ確実と報じられると、一時1.0913まで下落し、その間ユーロ円は122円台から一時109円台半ば(109.57)まで一方的にユーロ売り円買いとなりました。一方、英ポンドは、開票直後ポンド・ドルは残留優勢から1.50台(1.5022)、ポンド円で160円台(160.19)までポンド買いが上昇したものの、それぞれ一時1.32前半(1.3228)、133円台(133.68)まで急落し、ポンド・ドルは1985年以来、31年ぶりの安値水準と大幅下落となりました。売り一巡後は、リスクオフの巻き戻しによりユーロ・ドルで1.11前後、ユーロ円114円前後、ポンド・ドル1.34、ポンド円138円近辺までもみ合いながら上昇し、月末を迎えました。

 今後は、BrexitによりEU域内外への不安心理が蔓延し、経済活動の鈍化によりユーロ圏経済が下振れすることが予想され、リスクオフの動きからユーロ売り、ポンド売りが継続することがほぼ確実となりました。目先ユーロ・ドルの下値は過去何度も止められた1.08、その次は1.05のサポートラインがターゲットとなります。Brexit直後のスペイン総選挙ではEU残留派の与党が勝利したものの、今後EU諸国では緊縮財政反対派によるEU離脱の機運が高まる国・地域が台頭してくることが想定され、ECBは更なる金融緩和及び継続を余儀なくされるのがほぼ確実です。英国は今後イングランド銀行(中央銀行)による金融緩和が検討・想定され(7,8月)、また親EUのスコットランド(29日、EU残留を首相が表明)及び北アイルランド(残留支持)の英国からの独立運動が再浮上(英国自体の先行き不透明感)することが確実であり、ユーロ及びポンドが対ドル、円で買われる要素はありません。ポンド・ドルは目先1.30(フィボナッチ76.4%戻しが1.3030)、その先1.20方向へ下落していくことが予想されます。

ユーロ・ドル、ユーロ円で思わぬユーロ買いによる戻りがあれば、そこは絶好のユーロの売り場であり、ユーロを売れていない投資家はリスクオフ巻き戻しの現状レベルからでもユーロ売りすることを推奨します。一方、ポンドは当面流動性が枯渇し、値動きが激しいマーケットが続きそうです。ポンド円で短時間に1~2円は簡単に動くので、戦略はポンド売りでも小額で投資することが望ましいです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル 総合企画室 市場リスク管理マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

英EU離脱決定の混乱も収まり、7月のドル円は底堅い動きになると予想

 6月のドル円相場は、EU離脱に関する英国民投票の世論調査で5月31日に離脱派が残留派を上回ったことに加え、6月3日の米5月雇用統計の数字が予想を大幅に下回ったことからリスク回避の動きが続き、23日の英国民投票前に一時103.57円まで下落する場面がありました。その後、英国民投票で離脱派が勝利するとドル円は100円を割れて99.08円まで急落、現在は102円台後半での推移となっています。

今後のドル円相場ですが、しばらく横ばいの動きが続くと考えています。英EU離脱決定の混乱も収まりを見せてきており、ここからすぐに100円を割れて円高が進むのは難しいと思います。一方、英EU離脱により7月の米FOMCで利上げが行われる可能性はほとんどなくなったことから上値も重い状況が予想されます。そのため当面は101円~105円でのレンジ相場になることを想定しています。7月29日には日銀政策決定会合が予定されており、追加緩和に対する期待の高まり次第では110円近くまで上昇する可能性もあるかと思います。

ユーロドルは3月中旬以降、1.11ドル~1.15ドルを中心としたレンジ相場が続いてきましたが、英国民投票の結果判明後、1.10ドルを割れて1.09ドル付近まで下げる場面がありました。今後の相場展開ですが、英EU離脱をきっかけに他のEU諸国でも同様の動きが出てくることが懸念され、ユーロは上値の重い動きが続きそうです。今後はこれまでのレンジを一段階引き下げて1.08ドル~1.12ドルでのレンジ相場になると予想しています。

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