鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

日米好材料によるドル上昇局面でドル戻り売り(ドル売りポジションキープ)

 5月のドル円相場は、4月末(28日)の①日銀追加緩和見送り決定を受けて111円台から108円台へ反落、その後、②米財務省による為替報告書で日本を監視国リストに加えたことで為替介入警戒感が大きく後退、GWの薄商いの中ドル安(円高)が進み、4月の熊本地震と日本株急落時に示現した4月安値107.67をあっさり割り込み、3日に105.55(5月安値)まで下落しました。その後、比較的弱い米雇用統計でもドルが下げなかったことを受け、過去最高クラスに積み上がっていた投機筋の円買いポジションの解消による断続的なショートカバーでドルは上昇(円売り)基調に、原油価格の安定・反発(50ドル示現)及び相次ぐFOMC高官によるタカ派発言と月末28日のイエレンFRB議長のタカ派講演(6月または7月にも利上げを示唆)によりドル円は111円台まで戻し、全般にドル高の様相を呈して月末をむかえました。

目先はドルの好材料を背景にドルの戻り高値を伺う展開を予想し、115円に向けたドルの戻りを丁寧にドル売りすることを推奨します。安倍首相は早ければ6月1日にも消費増税延期と財政出動を表明する意向であり、7月の衆参同日選挙を同時発表する可能性もあります。財政積極化と政権安定は日本株上昇及びそれに伴うドル円の下支え要因(ドル高円安)となるでしょう。また6月FOMC(14,15)までの米経済指標の堅調さにもよるが6月利上げが一層織り込まれれば(31日時点で6月利上げ織り込み度合いはまだ30%程度)更に投機筋のショートカバーがドルの上値を踏み上げる展開となり、ドル強気の基調が続くことが予想されます。

ドル円上値のテクニカルターゲットは、4月末日銀会合前の高値111.88、3月高値114.55、2月高値114.88、心理的抵抗線である115円。逆に日米好材料(特に6月利上げがあった場合)によるドル上昇によるドルの戻り局面は絶好のドルの売り場と考えます。今年は11月に米大統領選挙を控えFRBによる政策変更に関しては6月もしくは7月以降はできない状況です。来年初までの長期的視野にもとづいて先行利上げをするとしたら6月か7月しか選択肢はありません。

一方、米国及び世界経済が米利上げに耐えうるほど磐石ではないのが現状であり、12月最初の利上げ後、1月、2月と世界的な株安を引き起こしたことは記憶に新しいです。また米国景気に注目しても強弱まちまちであり、利上げ継続を正当化できるほどの強さは現在ありません。更に、ドルのヘッジニーズ(ドル売り)を大量に抱える本邦輸出企業や年金等長期資金投資家はドルの上値は確実に押さえ続ける要因(ドル売り)と成り得ます。

本邦輸出企業の本年度輸出予約目標レートは概ね110円に引き下げられました。115円に上昇する過程では先物予約で確実に上値を押さえる要因となります。また年金資金のドル売りヘッジニーズは115円以上の円安局面で断続的に発動しそうです。黒田バズーカのアベノミクスとともに本邦年金資金のドル買い(買い切り玉)は110を抜け125円の円安を助長した立役者であり、特に115~125円のレンジで大量のドルの買い持ち(米証券投資)となっています。

直近105円台までの円高で肝を冷やしたことと通貨安競争回避の合意がある以上、日本単独での円安誘導には所詮限界があるので確実にドルの戻りはヘッジしたい意向です。逆に、日米好材料尽くし後の世界的な株価軟調や米景気軟調地合が再度露呈してくればドル売り円買いの動意・基調は直ぐに表面化してきます。その場合でも目先円の下値はドル売り持ちポジション保有者による一部解消(ドル買い戻し)が出やすい107~108円台は固そうです。当面短期的にはドルの戻り売り押目買いを推奨、米経済成長からくる断続的な米利上げサイクルによる中期的なドル買い円売り基調転換には時期尚早と考えます。ただ目先、2月のような大規模な世界的株安にでもならない限り105円割れも難しそうです。

ユーロ相場予測

ユーロショート継続(戻り売り)、1.08~1.10で部分利食い。

 5月のユーロ・ドル相場は引き続き米金融政策に連動する取引展開となる中、月初ドル円相場が105円台までドル売りが進んだ局面では4月以降継続していたユーロショートポジションの巻き戻し(ショートカバー)で1.16台までユーロが買われる局面があったものの、月末にかけドルの6月利上げ観測が台頭してくると徐々にユーロ売りとなり、1.11台前半までユーロは一方的に軟化しました。ECBの金融緩和姿勢に変化はなく、根本的なユーロ下落トレンドに変更はありません。

 ユーロ・円相場は121~124円台と円の高値圏でのレンジ取引に終始しました。目先のユーロ相場は米金融政策(利上げ観測)の動向次第であり、引き続きユーロ軟調を予想します。現時点での6月FOMC(14,15)での利上げ確立は30%程度であるがここから更に利上げを織り込みドルが買われる展開となるとユーロ・ドルは1.10を再度割り込み1.08レベルまで下落することは十分想定できます。ただ、米国が継続的な米利上げサイクルに基調変換するとは考えづらいので1.10を割れユーロが下落した押目は一旦ユーロショートの部分利食いをすることを推奨します。

一方、戻り上値の1.14~1.15はかなり固くなったことが想定され、ユーロを売れていない投資家は1.12~1.14の戻りを丁寧にユーロ売りすることを推奨します。リスクは英国のEU離脱問題(Brexit,6月23日国民投票)です。直近の世論調査では残留指示派が上回っていてほぼ残留で落ち着きそうであるが23日までは引き続き残留・離脱で英ポンド相場が振らされることが予想されます。グローバルの英ポンド売り持ちポジションは直近の英ポンド上昇により、少し解消され、売り持ち水準が減少したとはいえ、まだまだ高水準の持ち高です。23日に向け、残留がより明確となってくれば引き続き英ポンドのショートカバーで英ポンドは上昇しやすいでしょう。英ポンドが対ドル、ユーロ、円に対して買われます。

ユーロ・英ポンド相場(31日現在0.7590)で残留であれば0.70方向までユーロ売り、仮に離脱となると一気に0.80を上抜け1.00方向までユーロが買われる可能性も排除できません。Brexit動向も含めてユーロが買われて上がった局面は丁寧にユーロの戻り売りポジションを積みましていくことを推奨します。ユーロ・ドルで中長期的にパリティ(1ユーロ=1ドル、ユーロ・ドル1.00)を目指す展開に変更はありません。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル 総合企画室 市場リスク管理マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

6月はドル高の相場展開を予想

 5月のドル円相場は、半期の米為替報告書で日本が監視リストに指定されたこともあり、一時105.52円と年初来安値を更新する場面があったものの、その後は4月開催分の米FOMC議事録の内容や堅調な米経済指標の結果を受け、6月か7月に米利上げが行われるのではないかとの期待感から111円まで切り返す動きとなりました。

今後のドル円相場ですが、日本の消費税増税が延期になる公算が高いこと、米利上げ観測が高まっていることなどから、ドル円は一旦上値を追う展開になると予想しています。上値目途としては今年2月の急落後、上値抵抗となっていた114円半ばを想定しています。仮に115円を超えて円安が進んだ場合は、長期的なトレンドも円安に転換し120円を目指した動きになると思われますが、その可能性は低く、上値を試した後は112円~114円を中心としたレンジ相場になると考えています。

ユーロドルは5月序盤にドル安の流れから一時1.1614ドルまで上昇する場面はあったものの、終値ベースで1.15ドルを超えていたのはわずか1日で、その後は結局1.11ドル台まで下げています。3月中旬以降は.1.11ドル~1.15ドルを中心としたレンジ相場が続いてきましたが、米早期利上げ観測もあり、一旦レンジを下に抜ける可能性が高いと思います。下値目途としては、今年1月や3月の安値を参考に1.08ドル辺りを考えています。6月23日にはEU離脱の是非を問う英国民投票が予定されていますが、EU残留の可能性が高く、相場への影響は限定的でしょう。仮に離脱となった場合は、ユーロも対ドルや対円で大きく売られることが予想され、その場合は1.05ドル近くまで下げることになると思います。

バックナンバー

鶴のヒトコエの過去の記事を確認できます。

 

【ご注意】
  • 本ページは、投資判断にあたり参考となる情報の提供を目的としており、金融商品の売買を勧めるものではありません。投資の最終的な判断はお客様ご自身の責任でされるようお願いいたします。
  • 本ページでは、当社が信頼できると判断した情報を紹介しておりますが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。
  • 当サイトに基づいて被ったいかなるトラブルや損失・損害等についても、弊社及び情報提供元は一切責任を負うものではありません。