鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

110~113円をコアレンジとして、方向感のない展開
110円前半からのドル押目買い一部戻り売り

7月のドル円相場は材料が乏しいなか、概ね111~114円の狭いレンジ展開に終始しました。月初から「円キャリートレード(為替で低金利の円を売って金利の高い欧米通貨を買い、その国の株式や債券に投資する取引)」再燃からユーロ円・ポンド円を中心としたクロス円の上昇がドル円の上昇を後押し、11日にドル円は一時114.495月間高値)と5月高値114.37を上抜けし、3月15日以来の高値を付けました。その後は①足元の弱い米経済指標、②トランプ政策の先行き不透明感の再燃(大統領長男のロシアゲート疑惑)、③イエレンFRB議長の予想外のハト派発言、から米長期金利の低下やNY株安から一貫してドルが売られる展開となり、注目の27日FOMCではインフレの現状判断引き下げとバランスシート調整(米長期金利上昇要因→ドル高)時期について「比較的早く」とコンセンサスの9月表明が曖昧となったことを受けドル売りの流れは継続し28日には一時110.552までドルは売られ月間安値圏で月末を迎えました(ドルの強弱を示すドルインデックスDXYは3週連続の低下)。

今後のドル円相場は引き続き110~113円程度の狭いレンジで方向感なく(ドル安、円安の拮抗)推移しそうです。

ドル円を動かす主要因は米国経済指標の強弱と政策金利動向及び米10年債利回りの上下であることには変わりありませんが、足元の米経済指標は総じて弱く、FRBの利上げ見通しも後退し、米10年債利回りも軟調地合です(月末2.29%)。一方、円は2名の日銀政策委員の交代就任により、日銀政策委員会は事実上全員がハト派(異次元金融緩和支持)となり、アベノミクス(円安・株高)を後押しする体制は当面継続することが確定的となりました。

取引環境面から見れば8月はグローバルのトレーダーが休暇で取引が細るなか、本邦輸出企業のドル売りがドル円の上値を押さえる季節要因があります。一方、グローバルの投機筋(IMMポジション)の直近円ショートポジション(円売り)は年初来もっとも積みあがった状態となっており、更なる(ドル買い)円売りの積み増しは限定的であると想定され、逆に110円を割れると一時的にポジションを外す円買いのロスカットを誘導し、6月安値の108.83が意識される可能性が出てきます。季節柄薄商いが想定され、小さな要因で値幅が大きくなりやすいことも注意点です。

一方、ファンダメンタルズに目を向けると欧米(金融引き締め)と円(異次元緩和継続)の金利政策の方向性の違いは明白であり、金利格差が起因したドル高円安の方向感に変更はありません。本邦年金を中心とした長期資金(ドルの買い切り玉)は今後もドルの押目(売られた局面、110円前半以上の円高局面)を確実に拾い(ドル買い)続けるでしょう。また、円キャリートレードの継続からクロス円(ユーロ円、ポンド円、豪ドル円、カナダドル円)が引っ張る形でドル高円安を誘発する可能性も十分にあります。引き続き米経済指標と米10年債利回りを注視しつつ、ドルが売られた局面でドルの押目を拾い(ドル買い)ドルが買われた局面で一部ドル売りを継続する押目買い一部戻り売りを推奨します。ドルの上昇要因としての注目点は、①米経済指標のインフレ指標改善とそれが起因した12月FOMCでの利上げ確率(現在40~45%と低水準)の上昇、②FRB理事による9月FOMCでのバランスシート調整(ドル買い要因)表明に繋がる発言。現時点ではスタート時期が曖昧となっているものの9月表明が現実味をおびてくるとドルは買われやすいです。8/3日の内閣改造は動意薄でしょう。

中長期的には115円以上のドル買い方向へ向かう予想に変更はなく、押目で拾った持ち値の良いドル買い持ちポジションをキープする戦略で臨みたいです。当面の上値の目処として7月高値114.495を上抜することは難しいでしょう。

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ユーロ相場予測

ユーロ・ドル、ユーロ・円ともに上昇トレンド継続
英ポンド・ドル、英ポンド・円も堅調地合、ポンド買い先行の足早な短期売買

7月のユーロ・ドル、ユーロ・円相場は、6月に続き更なるユーロの上値を試す展開となりました。月初1.13~1.14台でスタートしたユーロ・ドル相場はその後のドル安基調とユーロの長期金利の指標である独10年債が急上昇、節目の0.5%を上抜けるなどユーロ買いを後押しする環境から6月高値1.14455)、節目の1.15を断続的に上抜け、28日には一時1.1764月間高値)と2015年1月以来の約2年半ぶりの高値を示現しました。ユーロ・円も月間を通してユーロ買い優勢となり、節目の130円を上抜け、一時130.76月間高値)まで買われました。

今後のユーロ相場は当面ユーロが対ドルや円に対して引き続き上昇しやすい展開となるでしょう。 ユーロ・ドル1.17台半ばまで上昇したことで、チャート的には2年半続いた1.05~1.15のレンジを上抜けた形を証明しており、グローバルの投資家にとっては、今後ユーロの押し目でユーロ買い先行の取引に転換していくことが予想されます。当面ユーロの下値は固くなりそうであり、注目指標としては独10年債利回りに着目します。独10年債は7月に0.25%から一時0.6%(月末0.54%)へと0.35%も急上昇し(その間、米10年債は2.14%から2.38%まで0.24%上昇し、2.38%上昇時にドル円で114.495を示現)、ECBが早期に金融政策の正常化(超金融緩和の解除)に向かうことを示唆した金利上昇となっています。今後も独10年債の利回りに着目して、金利が低下した局面でユーロ買い、上昇した局面でユーロの一部利食い売りをユーロ買い先行で回転売買することを推奨します。ユーロ・ドルの上値の目処は節目の1.20、その上は1.2097(2014年12月安値)や1.2109(2015年1月高値)のチャートポイントである1.21です。下値の目処は1.15を割れても1.14台は固そうです。ユーロ・円の上値は昨年の年間高値132.32が意識されます。

7月の英ポンドはユーロ同様、米ドルの軟調地合と根強い英利上げ観測からポンドの更なる上値を試す展開となりました。月初こそ1.2812(月間安値)と1.28台前半までポンドが売られる局面はあったものの、その後は独10年債利回りの上昇に連れ、英10年債利回りも上昇(月初1.12%から一時1.33%と約0.20%上昇、月末1.22%)、総じて対ドル、円でポンド堅調地合が続き、28日には1.3134までポンドは買われました。今後もドルの軟調地合が継続するようだと当面ポンドもユーロ同様上昇しやすい相場が続くでしょう。ただ、グローバルな投機筋のポンド持ち高は2014年の秋以降ポンドの売り持ちだったが直近ほぼ解消(スクエア)と更にショートカバーでポンドが持ち上がる環境にはありません。またハードBrexitになるポンドの基本的構造(ポンド売り)に変化はなく、ここからのポンド上値(チャートポイントのポンド・ドル1.33以上、ポンド円150円以上)は、一旦絶好のポンド売りと考えます。短期的な売買をする場合はユーロ同様、英10年債利回りに着目してポンド買い先行によるポンドが上昇したら直ぐに利食う(ポンド売り)足早な短期売買が有効でしょう。当面ドルの軟調地合と英利上げ観測が継続すればポンドの下値は1.28が固そうです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円はレンジ相場、ユーロドルは引き続き上昇を予想

7月のドル円相場は、米ISM製造業景況指数や米雇用統計の好結果から114.49円まで上昇したものの、FRB議長の議会証言をきっかけに市場の関心が低い米インフレ率の伸びに向かうとドル円は下落に転じ、米消費者物価指数の予想を下回る結果も相俟って、一時110.60円まで下げ幅を広げる場面がありました。

今後のドル円相場ですが、日米の経済政策の違いは顕著であるものの、米インフレ率が低いことから米利上げの後ずれ懸念もあり、しばらくは109円から114円を中心としたレンジ相場が続くと考えています。米インフレ率が高まればレンジ上抜け、日銀の引き締め観測が高まってくればレンジ下抜けを想定しています。

ユーロドルはECBの緩和政策の終わりが現実味を帯びてきていることで、6月に続き7月も大きく上昇し、一時1.1776ドルまで上昇しました。ここまで大きく上昇してきたユーロドルですが、ECBの量的緩和開始前は1.20ドル以上で取引されていたことから、まだまだ上昇余地があると考えています。米国のインフレ指標が冴えない状況も考慮すると、引き続きドルよりもユーロが選好されやすい地合いが続きやすく、利食い売りをこなしながら8月は1.20ドル近くまで上昇する動きを予想しています。

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