鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

110~114円をコアレンジとして、ドルの上値を窺う展開
110円レベルの押目買い一部戻り売り

6月のドル円相場は方向感がない中、110円を挟んでボラティリティ(価格変動率)の低い狭いレンジ展開に終始していましたが、下旬に、円を除くグローバルな長期金利上昇によりドル高・円安に振れました。
月初から市場予想を下回る一連の米経済指標の発表が相次ぎ、ドル円は節目の110円を下抜けし、一時108.833月間安値)と4月20日以来の安値を付けました。ただFOMCで政策金利を25bp引き上げると同時にバランスシート縮小(米国債への再投資がないため債券価格の下落圧力→米長期金利上昇要因→ドル高)の方針が示されると、米長期金利上昇と相まってドルが買われ、111円台半ばまでドルは一気に戻しました。その後111円台中心で一進一退の方向感のない膠着相場が続いていましたが、27日ドラギECB総裁がユーロに対してタカ派発言をしたことをきっかけに欧米債の金利上昇、ユーロ円や英ポンド円の上昇の流れも受けてドル円は113円手前(112.926、5月17日以来の高値)まで買われました。

今後のドル円相場は110~114円程度のレンジながら、110円レベルで底堅く、やや上値を窺う展開を予想します。ドル円を動かす主要因は米国経済指標の強弱と政策金利動向及び米10年債利回りの上下であることには変わりありません。ドルはそれほど強くないものの、円がそれ以上に弱いためドル円は上昇しやすい環境にあります。

ドル円の上値を押さえる要因としては、直近の米経済指標は予想比下振れが目立ち、かつインフレも伸び悩んでいることから、年内にもう1回予定されている米利上げ予想に対して、足元FF金利先物から算出される、9月FOMCでの利上げ織り込み確率は15~16%程度とかなり低いです。また12月までの市場の米利上げ織り込み確率も、55%程度と停滞しているなど、現在追加利上げ期待が後退している状況です。さらにドル円相場と連動性の高い米長期金利(米10年債利回り、金利が上昇するとドル買い、金利が低下するとドル売り)は、2.25%程度(6月は概ね2.1~2.2%で推移、3月利上げ時には2.6%台まで上昇していた)と昨年11月の大統領選挙時程度の低水準に留まっています。

一方、上値を窺う要因として、6月下旬のドラギECB 総裁とカーニーBOE総裁の相次ぐ超金融緩和政策からの脱却発言により、グローバルに長期金利(米長期金利も含め)が上昇傾向にあることです。対円と比べ欧米金利格差が注目され、特にユーロ円及び英ポンド円が円安傾向となり、それがドル円の押上げ要因となっていることです。今後も欧米の金利上昇に対して日本はインフレ率の目標もあり、異次元の超金融緩和政策を当面継続しなければならない状況下、円売りが進みやすい環境となってきています。いわゆる円キャリートレード(為替で低金利の円を売って金利の高い欧米通貨を買い、その国の株式や債券に投資する取引)」の機運が再浮上しています。 目先の焦点は7月FOMC(7/25~26)です。利上げはないと予想されるものの、6月FOMCで方針が表明された、バランスシート調整を正式表明(8月開始)すると、サプライズなドル買いとなり得ます。現時点では9月FOMCで表明(10月開始)が市場の大方の予想となっています。また、今後発表される米経済指標が堅調地合を示すようであれば、ドル買いに拍車がかかる可能性もあり、110円レベルをボトムとして底固い動きが予想されます。

リスクは7/2の都議選です。自民党が大敗するようだと政治的リスクから日本株安・円高に繋がる可能性が高いです。引き続き、9月及び12月の利上げ織り込み確率と米10年債利回りに注視し、ドルの押目を拾って(買って)上がった局面で一部利食う押目買い戦略を推奨します。中長期的には115円以上のドル買い方向へ向かう予想に変更はなく、押目で拾った持ち値の良いドル買い持ちポジションをキープする戦略で臨みたいです。当面の上値の目処は114円台まで、一方下値は6月16日安値110.649や14日高値の110.344が意識され110円の壁は厚そうです。

ユーロ相場予測

ユーロ・ドル、ユーロ・円ともに上昇。ただ上値は限定的
英ポンド・ドル、ポンド・円はショートカバーで上値トライ、そこは売り場

6月のユーロ・ドル相場は、更なるユーロの上値を試す展開となりました。またユーロ円も128円台と昨年2月以来の高値を付けました。月初1.2台でスタートしたユーロ・ドル相場は8日のECB理事会にて期待されていた緩和バイアスの修正が発表されなかったことから軟調な展開となり、一時1.1119月間安値)までユーロは売られました。その後1.12を挟んだ狭い膠着レンジ相場が続いていましたが、27日ドラギECB総裁のタカ派発言をきっかけにユーロは買い戻される展開となり、強力な節目の1.13を上抜けると一気に1.13ミドルへ、その後もユーロは続伸し、29日には昨年5月11日以来の高値1.14455の高値をつけました。
ユーロ円も大幅続伸。27日の同発言で5月16日の直近高値125.816円を上抜けるとストップロスを断続的に誘発し5日続伸、29日には128.832昨年2月10日以来の高値を更新しました。今後も当面ユーロは上昇しやすい展開を予想します。

ユーロ圏の経済指標は底固く、景気回復期待がユーロをサポートし続けるでしょう。対ドルでは米経済指標次第であるものの6月の流れを引継ぎ、景気下振れの米経済指標が続けば、ユーロ・ドルは目先節目の1.15を目指す展開となるでしょう。逆に対円の方がユーロは上昇しやすい環境にあります。ユーロを後押しする発言や指標が相次げばユーロ・円は130円を目指す展開となりそうです。

リスク要因としては、域内インフレ鈍化に対する警戒感と堅調な米経済指標発表による米利上げ期待の再浮上です。現在のユーロ・ドル相場はトランプ政権の不確実性からくる、米景気の緩慢さがユーロ・ドル相場のレンジを押し上げた展開となっています。

2018年度までを見据えた中長期的な展望では、ドルの堅調さがユーロを凌ぐ予測に変更はないものの、当面ユーロ・ドル1.10~1.15のレンジながらユーロが底堅く展開すると予想します。目先上値の目処は昨年4月月間高値の1.1465、1.15を上抜けると昨年の高値1.1616(6月に示現)が視野に入ります。ユーロ円の上値の目処は130円を上抜けると昨年高値132.32(1月示現)が意識されます。ただ、グローバルな投機筋のユーロ持ち高は5月上旬に約3年ぶりにユーロの買い持ちに転換し、現在まで積み上がってきていることから更にショートカバーで吹き上がるイメージは小さく1.15以上は一旦ユーロの売り場と考えます。

一方、5月の英ポンドは8日の英総選挙で与党保守党が過半数割れとなったことを受け、EU離脱交渉を巡る不透明感の高まりにより、ポンドは月初の1.29台から、メイ英首相による総選挙実施表明時の水準1.25近くの1.2589(月間安値)まで売られました。その後英中銀金融政策会合にて政策金利の変更は予想通りなかったものの、利上げ派が増えるなどサプライズな内容が報じられると、一転ポンドは買い戻され1.28台後半まで上昇、その後カーニーBOE総裁の緩和策解除発言も出て英ポンドは1.30超まで上昇しました。

今後も当面ポンドは上昇しやすい展開を予想します。タカ派よりの発言を受け市場の英年内利上げ観測が再浮上しているのが一番の要因です。英総選挙時の1.29台半ばを上抜けてきているので(100%戻し達成)目先1.30台をどこまで上抜けていけるかが焦点です。ユーロと比較してグローバルな投機筋のポンド持ち高は依然ポンドの売り持ち(2014年の秋以降売り持ち継続)のためショートカバーでポンド・ドル、ポンド円共に吹き上がる可能性があります。ただその局面は(チャートポイントのポンド・ドル1.33以上、ポンド円150円以上)絶好のポンド売りと考えます。目先のポジション調整によるショートカバーでポンドが買われただけでハードBrexitになるポンドの基本的構造に変化はありません。当面下値は1.25が固そうです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

ドル円は米インフレ指標に注目。ユーロドルは上昇相場の本格スタートを予想

6月のドル円相場は、これまでの米利上げの際の動きとは異なり、米利上げ発表までは下落し一時108.81円まで下げたものの、利上げ発表後は上昇に転じて112.92円まで上昇、現在は112円近辺で推移しています。

7月のドル円相場ですが、米経済指標、特にインフレ指標の結果次第となりそうです。FRBは今後の金融政策に対してタカ派的な見通しなものの、直近の米経済指標が冴えないことからマーケットでは懐疑的に見ており、両者の見方に乖離が生じています。7月に発表される米経済指標がよければ、9月の追加利上げやバランスシート縮小への期待が高まり、5月高値114.36円を試す展開が予想されますが、7月も米経済指標が冴えない結果となるようならばドル円の上値は重くなり、110円~113円あたりでのレンジ相場になる可能性が高いでしょう。米株式市場が利上げ後も好調に推移していますが、もし米株式市場が調整から大きく下落すれば、リスクオフ機運の高まりからドル円も大きく下げることが予想され、株価の動向には注意したいところです。

ユーロドルは、8日の定例理事会でECBがインフレ予測を引き下げたことから金融政策の正常化観測が後退し、一時1.1117ドルまで下げる場面があったものの、27日にECBのドラギ総裁が「今は全ての兆候がユーロ圏の回復の強さが増し、裾野が広がっていることを指し示している。 デフレ圧力はリフレの力に置き換わった」と発言すると急騰し、1.14ドル台まで上昇しました。今後ですが、ECBの緩和政策の終わりが現実味を帯びてきたことから、ユーロドルは息の長い上昇相場が始まると考えています。当面は2016年の高値1.1614ドルを目指して上昇していくと予想しています。

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