鶴のヒトコエ

東京・ロンドン・ニューヨーク世界3大市場でチーフディーラーを務めた鶴の視点。

鶴 泰治 株式会社FXトレード・フィナンシャル代表取締役社長

三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行後、本店資金為替部にてディーリングの世界に入り、1990年、為替グループドル円チーフディーラーを経てLA支店ディーリングルーム・チーフディーラー、NY支店ディーリングルーム・シニアマネージャー、ロンドン・ディーリングルームディレクターを歴任。20年以上一貫して外国為替を中心とした外貨ディーリング業務に従事。2008年より現職。

ドル円相場予測

112~116円をコアレンジとして保護主義政策優勢のドルの下値を試す展開。ドルの押目を拾い上値で一部利食う回転売買が有効。

1月のドル円相場は米大統領選後2ヶ月のトランプ相場を経て、ドル高に対する調整局面に移りました。
月初118円台でスタートしたドル円相場は、11日のトランプ氏記者会見や20日の大統領就任演説が注目視されていましたが、両会見で具体的な経済政策への言及がなかったことから「期待はずれの内容」と市場は受け止め、米長期金利が急低下、同時に株安になったことでドル売りの展開となり、更にトランプ氏が対人民元でのドル高に懸念を示したこと(保護主義政策)もドル売りを促し、24日には一時112.527と昨年11月30日以来の安値を更新しました。
その後はイエレンFRB議長が2019年末までの複数回の利上げと、政策金利が長期の中立金利見通しである3%に近づくことを示唆したため、米長期金が急上昇、ダウ平均が2万ドルの大台を示現するなど、過去最高値を更新、株高を支えにドルの下値を切り上げる展開となりました。更にムニューチン新財務長官のドル高肯定発言もあり、一転してドルの買い戻しが優勢となり、115円台後半まで戻しました。しかし、就任10日にして立法府である議会の議決や承認を経ずに直接大統領令を17件も発動(「テロ懸念国」入国制限など)するトランプ政策に対する警戒感から投資家心理が弱気に傾き、株安と同時にドルも売られ113円台まで下落して月末を迎えました。

目先のドル円相場は、日米の景況感や金利差に着目したドルの底固い相場展開よりも、トランプ氏のツイッターや大統領令による保護主義政策の動向に注目すべきです。リスクが高いのはトランプ米大統領の保護主義政策を背景とした発言であり、1月の相場同様、神経質で方向感のない展開が充分想定され、ドルの下値を模索するケースも随所に出てくる難しい相場が続きそうです。当面は112.00~116.00をコアレンジとしてドルの押目を丁寧に拾う展開がワークしそうです。
一方、1月の相場展開で堅調な米経済情勢とFRBの段階的な利上げ姿勢が確認されていることから、現在の3月FOMCでの利上げ織り込み度は35%程度である米金融政策についても(当面の米経済指標とイエレン議長のタカ派発言に)注視すべきであり、3月の織り込み度合いが増加して米長期金利が上昇するようであれば、ドルの上値を探る展開もあり得ます。しかし当面上値は限定的と考えます。

トランプ大統領は着々と選挙期間中の「公約」を実行していますが、すべて「保護主義政策」ばかりであり、目先の重要な2月末までの政治予定は、10日の「日米首脳会談」と28日の「一般教書」(通常は2月初め)です。特に2国間協定では「為替条項」を入れ、通貨安誘導を制限するとしているので、ドルが戻した上値は当面売られやすい展開が続きそうです。
グローバルな投機筋の持ち高(IMM)は、1月の調整局面で円の売り持ち(ドル買い円売り)がかなり剥がされたとはいえ、まだまだ高水準のドル買いポジションであり、ドルの戻り上値では持ち値を落すドル売りが出やすいでしょう。ただ中長期で見たドル円相場の2国間景況感及び金利差から判断したドル高方向に変化はないことから、トランプ大統領による保護主義発言により、株安・ドル売りからドルが売られた局面では、ドルの押目を丁寧に拾うのが1月以降の上下に方向感もなく神経質に激しく展開される相場つきには一番ワークしそうです。

ドルを買えてない人は110円をバックにドルの押目を拾い、ドルが上がった局面では一部利食いをかけた回転売買、ドルの買い持ちポジションをキープする運営を推奨します。下値の目処は1月25日安値113.042、24日安値112.527です。ドルの押目ではトランプラリーで出遅れた本邦輸入筋や機関投資家(年金)の根強いドル買いが発動されることが予想され、110円の節目は割れないと想定します。一方ドルの高値は、116円を上抜けすると1月11日高値116.868、9日高値117.531、3日高値118.607やトランプラリーの戻り高値118.667(12月示現)が意識されそうですが、当面上値は限定的と考えます。

ユーロ相場予測

ユーロ、英ポンドともに戻り売り。短期的にはトランプ政策のドル売りからユーロ・英ポンドともに上値を試す展開。

1月のユーロドル相場は、年末から続いたトランプラリー(ドル買い)の流れから1.04を下抜け、1.0341まで下落、2003年来かつ昨年12月に示現した1.0367の安値を更新しました。しかし、その後はトランプ氏の政策に対する不透明感・失望感からドル売りユーロ買いの展開に終始、1.07台後半までユーロが買われユーロ巻き戻しの展開で月末を迎えました。目先はドル円同様、トランプ大統領の政策動向次第でどこまでユーロが買い戻されるかが焦点です。

一方、ファンダメンタルズに目を向けると、ECBの金融政策について当面緩和スタンスを維持する方針が確認されたことにより、欧米金利差拡大の思惑からユーロ下落圧力は根強く継続されることは想定できます。ただ当面はトランプ大統領政策に起因する株安・ドル売りの方がユーロのファンダメンタルズや経済指標よりも優勢と思われることからユーロの戻り売り、ユーロが下落した局面での一部利食いが一番ワークしそうです。

当面は1.05~1.08の狭いレンジながらユーロの上値を模索する展開を想定しますが、中長期的にはパリティ(1ユーロ=1ドル)を割れてユーロが下落していく方向に変更はありません。ユーロの戻りがあれば丁寧にユーロの売り持ちを増やして平均持ち値の改善を図ることを推奨します。上値の目処は1.08~1.10です。下値は1.05を割れたら1月安値1.0341が意識されそうです。

一方、英ポンドは月初、メイ英首相「欧州単一市場より移民流入の抑制を優先」の報道からハードBrexitの可能性が再燃、ポンドは1.23台から一時1.1986まで下落、昨年の安値1.1841に近づく勢いでポンドは売られました。その後、メイ首相により「EU単一市場からの離脱」を正式表明したことで材料出尽くしと市場は判断し、ポンドはショートカバーにより一気に1.26台まで買われポンド買い優勢で月末を迎えました。

当面、英ポンドは経済指標よりもBrexitに関する政治家等要人発言に反応しやすい展開が継続することが想定され、トランプ大統領政策のドル売りが重なれば、更なる英ポンドの上値を目指すことも想定されます。ただ、根本的なハードBrexitの方向性には変化がなく、ユーロ同様ポンドの戻りを売って下落した局面で足早に買い戻す取引がワークしそうです。1.24~1.27のコアレンジの中、下値が固そうです。

マーケットはどう動く!?トレーダーの視点

君嶋 慶彦
株式会社FXトレード・フィナンシャル モニタリングユニット マネージャー
2009年、株式会社FXトレード・フィナンシャル入社。現職にて、市場モニタリング、商品企画・市場調査に関する業務を担当。国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe(R))

トランプ米大統領のマイナス面に焦点があたってきたことで2月はレンジ相場を予想

昨年の米大統領選以降、上昇を続けてきたドル円ですが、1月に入ると20日にトランプ米大統領の就任演説を控えていることから一旦調整の動きとなり、117円台半ばから一時112円台半ばまで下落しました。注目された就任演説は経済・財政政策についてはほとんど触れられずに保護主義的な内容となったことで、就任演説後は再度の上昇とはならず、現在は112円台半ば~115円台半ばで方向感の見えづらい動きが続いています。

今後のドル円相場ですが、イスラム教国7か国からの入国を禁止する大統領令などもあり、トランプ氏のマイナス面に焦点があたっているため目先は上値の重たい展開が予想されますが、足元の米経済は堅調であり早ければ3月にも利上げが控えていること、将来的には減税や大規模なインフラ投資が控えていることから下値は限定的と考えています。いずれは経済・財政政策といったトランプ氏のプラス面に再びマーケットの関心が向き、ドル円は大統領選後の高値118.66円を更新すると予想していますが、それまでは112円~116円を中心としたレンジ相場となりそうです。

ユーロドルもドル円と同様、1月はトランプ米大統領の就任演説を控えての調整の動きで始まり、就任演説が保護主義的な内容になったことで方向感のない動きとなっています。こちらも将来的にはドル高でパリティ(1ドル=1ユーロ)を予想しているものの、トランプ米大統領のマイナス面に焦点が当たっている現状から、しばらくは1.05ドル~1.09ドルあたりでのレンジ相場が続くと考えています。

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